Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
個人の“Voice”と”Exit”が賃上げに与える影響
―賃金に対する制度・風土・感度が乏しい中で―
中村 天江
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キーワード: 賃金, 発言, 離職, Exit Voice, 理論, 転職
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2020 年 32 巻 p. 1-32

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抄録
長い人生を送るのにお金は必要不可欠だが、日本の平均賃金は 30 年近く増えていない。高度経済成長期に形成された終身雇用・年功賃金・企業別労働組合で特徴づけられる日本的雇用のもとでは、賃金について個人が企業と交渉する必要はないが、いまや労働組合の組織率は低下し、転職する個人が増えている。個人で賃上げを働きかける必然性が高まっているが、職場で賃上げを要望したことがある個人は 25%に留まっている。 Hirshman の“Exit Voice”理論にもとづき、賃上げを要望した後、(A)企業を辞めているか、(B)転職によって賃金が増えているか、(C)同一企業内で賃金が増えているか、を分析した。その結果、日本では“Voice and Exit”が起きていることが確認された。好条件での転職が困難な 50 代においても、賃上げを求めることで転職後に年収が増加する一方、内部労働市場では待遇に経路依存性が存在することが示唆された。就労所得の増加に向けて、個人は“Voice”と“Exit”を使いこなすことが期待される。
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© 2020 株式会社リクルート リクルートワークス研究所
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