本稿は、美少女キャラ(一般的には萌えキャラとして知られる)をめぐる議論の精緻化をめざす。
まず、ジェンダー平等の観点から美少女キャラ広告を批判する議論が2つの点で問題を抱えていることを指摘する。①美少女キャラすべてが性的であるかのように想定する実態と乖離した議論に終始している。②先行研究との接続を欠く傾向があるために、性的な見た目への批判のみにとどまり、女性学が批判してきた他の側面を見落としがちである。これらの問題を克服するため、女性学や運動体による女性広告批判を参照することで、次の3軸からの美少女キャラ広告の分析を提案する。すなわち、①見た目が性的であるか否かの軸、②キャラや物語などに問題があるか否かの軸、③女性を用いることに意味や必然性があるか否かの軸、の3軸である。
次に、3軸からの美少女キャラ広告の分析をとおして、どの観点においても問題を持たない美少女キャラ広告がたしかに存在することを指摘する。そして、美少女キャラはフィクションゆえに特有の問題および可能性も持っていることを考察する。一面的に美少女キャラを否定するのではなく、現実に即した丁寧な議論が求められるのである。