2013 年 44 巻 p. 217-229
我々はこれまでに,熊本県および茨城県から出土したガラスビーズについてポータブル蛍光X線分析装置を用いた非破壊分析を行い,化学組成の特徴から起源について探ってきた.本稿では新たに佐賀県鳥栖市の7箇所の遺跡から出土したガラスについて分析し,前回の熊本県,茨城県のガラスとの比較を行った.まず全資料を主成分組成に基づいて分類したところ,アルミソーダ石灰ガラス(Na2O-Al2O3-CaO-SiO2系),ソーダ石灰ガラス(Na2O-CaO-SiO2系),カリガラス(K2O-SiO2系),鉛ガラス(PbO-SiO2系),鉛バリウムガラス(PbO-BaO-SiO2系)の5つのタイプの存在が確認された.これらのガラスは微量重元素組成においても熊本県,茨城県と同様の傾向が見られ,前回の結果と合わせて,日本各地に化学組成的特徴を同じくするガラスが存在し,同様の起源を持つガラスが搬入されていたことが裏付けられた.