X線分析の進歩
Online ISSN : 2758-3651
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解説 (依頼)
  • 市川 慎太郎
    2021 年 52 巻 p. 1-14
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    蛍光X線分析法は,土器のルーチン分析に広く用いられている.しかし,土器の胎土分析ではサンプリングが制限されることがあるため,適切な試料調製ができない場合が多い.そこで,高精度な土器の産地同定を実現するために,微少量の土器試料に適した蛍光X線分析用の測定試料を開発した.本稿では,まず,未処理の土器,その土器から調製した粉末ペレットおよびガラスビードの蛍光X線強度の精度を比較した.併せて,土器の非破壊直接分析における蛍光X線の脱出深さを算出し,測定試料調製の重要性を示した.次に,土器の化学組成を模して定量成分を含有する試薬で調製した検量用標準(試薬調合標準)について概説した.最後に,微少量の土器試料用に考案した薄型ルースパウダー,マイクロガラスビードおよび低希釈小型ガラスビードを紹介した.

  • 田渕 雅夫
    2021 年 52 巻 p. 15-23
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    XAFS(X-ray absorption fine structure)法は,試料中の特定元素の周辺局所構造や化学状態を議論でき,適用できる対象の幅が広い重要な計測/解析手法である.近年XAFS法の高度化に関する研究も盛んで,その一つの方向として試料を2次元,3次元で観察する高次元化に関する報告も多い.この時,計測時間とデータ量の増大が問題になる.この問題に対して,得ようとする情報を化学状態に限定し,対象試料のスペクトルを参照試料のスペクトルの線形和に分解する形で解析(linear combination fitting:LCF)できる場合なら,その解析方法を修正した方法(modified LCF:MLCF)を用いることで計測点数を大幅に減らしても解析が可能になる.本稿ではこの修正した解析法の考え方と,それを実際に3次元の状態解析に応用した例を紹介する.

  • 佐藤 朗
    2021 年 52 巻 p. 25-32
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    近年,実用化に向けた開発が著しいミューオンX線分析法について紹介する.高エネルギーのミューオン特性X線を使用する本分析法は,軽元素を含む元素組成の分析のみならず,同位体比,元素の化学状態の情報を完全非破壊で調べることができる新しい分析方法として,考古学や文化財科学,地球惑星科学など,希少試料を扱う分野で注目を集めている.2000年以降のミューオンビーム関連技術および検出器技術の向上に後押しされ,ここ数年のミューオンX線分析法の研究開発にはめざましい進展がある.古代青銅器や小判などの文化財試料の定量分析に成功し,はやぶさ2が持ち帰る地球外試料の初期分析計画も進行中である.さらに,新しい元素マッピング法や,超伝導X線検出器による超高エネルギー分解能システムの適用など,世界4つのミューオン施設を中心に最先端技術を投入した研究開発が進められており,今後数年にもさらなる分析性能の向上が期待される.

  • 林 久史
    2021 年 52 巻 p. 33-48
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    様々な文献を用いて,UVを表す死語「菫外線」の使用時期や言葉の性質,不使用となった理由などを検討し,以下のような結論を得た.「菫外線」は明治末期に日本の科学とともに生まれ,戦前・戦中を通じて学術色の強い言葉として「紫外線」と共存し,当時の国語辞典や百科事典に記載され,上田敏や宮沢賢治,長岡半太郎にも使われた.しかしながら,GHQの下で告示された当用漢字に「菫」が含まれなかったこと,そして,日本語の「紫色」がもともと「菫色」も包含していたことから,戦後,急速に廃(すた)れていった.

装置計測
  • 山下 大輔, 田中 亮平, 河合 潤
    2021 年 52 巻 p. 49-54
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    散乱X線の偏光度測定装置を3Dプリンタにより作製し,偏光素子としてアクリル板および鉛板を用いた際に散乱されるX線の偏光度を測定した.アクリル偏光板を用いたときのX線の偏光度は鉛板を用いた場合に比べ高くなった.アクリルは軽元素で構成されているため,コンプトン散乱強度が大きくなる.このことがアクリル板と鉛板を偏光素子として用いた際の散乱X線の偏光度に影響を与えていることがわかった.

  • 園田 将太, 中野 ひとみ, 松山 嗣史, 辻 幸一
    2021 年 52 巻 p. 55-62
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    共焦点型蛍光X線分析法は,X線管と検出器の両方にポリキャピラリーレンズを取り付け,互いの焦点を一致させることで,重なり合った共焦点領域における蛍光X線スペクトルを取得する方法である.そのため,試料を走査しながら分析を行うことで3次元的な元素分布像の取得が可能である.しかし,面内に均一な層構造を有する試料では,必ずしも共焦点体積での分析は必要ではなく,広い分析範囲を測定する場合には,長い測定時間を要する課題がある.そこで,本研究では,一次X線を線状に成型し,試料からの蛍光X線も線状に観測する「共焦線型蛍光X線分析法」を新たに提案した.実際に開発した装置では,X線管と検出器の前にダブルスリットを配置することで,一次X線と蛍光X線を線状に成型した.本稿では,共焦線型蛍光X線分析装置のビーム径や空間分解能,検出限界について特性評価を行った.また,層構造を有する試料に対して,本装置の有用性を検討した.

  • 山岸 弘奈, 渡邊 巌, 小島 一男
    2021 年 52 巻 p. 63-68
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    立命館大学SRセンターBL-11において,絶縁性の高い粉末試料(AlF3とLiF)のF K吸収端X線吸収スペクトル(XAS)を測定した.測定手法としては,試料電流を検出する全電子収量(TEY)法と,マイクロチャンネルプレート(MCP)を検出器とした部分電子収量(PEY)法を使用し,両者を同時に用いてスペクトルを得た.PEY測定とするためにMCPの前にメッシュ電極を置き阻止電位を印加した.TEY法によるスペクトルは,試料表面のチャージアップの影響を受け,エネルギーの走査方向やデータの溜め込み時間に依存してスペクトルの形状が変化することを確認した.一方で,PEY法によるとスペクトルはエネルギー走査の向きなどに依存せず形状が変わらないことを見出した.X線の吸収によって試料表面から電子が放出され,試料表面は帯電するが,この帯電電位がXAS測定中一定ではないためTEY法によるとスペクトルが歪む.しかし高エネルギー成分(オージェ電子)のみを検出するPEY法では試料の表面電位に多少の変化があっても電子収量の変化が少ないものと考えられる.絶縁性粉末試料のXAS測定に対し帯電効果の少ないスペクトルを得るのにPEY法は簡便でよい方法である.

  • 谷田 肇, 岡本 芳浩
    2021 年 52 巻 p. 69-80
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    X線CCD検出器を用いたイメージングXAFS法は,比較的高エネルギーに吸収端を持つ重元素に対して透過法が適用されてきた.透過法は試料の光学的な厚みを最適にする必要があるが,透過能の大きい高エネルギーX線を用いる場合は,比較的厚い試料に対して容易に測定できる.ここでは,比較的低エネルギー領域にX線の吸収端を持つ遷移金属元素を対象とし,ガラス材料などの薄くすることが難しい試料中での価数分布を高速スクリーニングすることを目的とした蛍光法の開発を試みた.高感度で位置分解能を持つXAFSスペクトルを得るために,シンチレーターを用いない直接撮像型の検出器とピンホールを用いて,入射エネルギー可変で高輝度のアンジュレータ放射光での実証を行った.

  • Yoshikazu FUJII
    2021 年 52 巻 p. 81-111
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    X-ray scattering spectroscopy is a powerful tool for investigations on rough surface and interface structures of multilayered thin film materials 1-33), and X-ray reflectometry is used for such investigations of various materials in many fields. In many previous studies in X-ray reflectometry, the X-ray reflectivity was calculated based on the Parratt formalism 1), coupled with the use of the theory of Nevot and Croce to include roughness 2). However, the calculated results of the X-ray reflectivity done in this way often showed strange results where the amplitude of the oscillation due to the interference effects would increase for a rougher surface.

    Because the X-ray scattering vector in a specular reflectivity measurement is normal to the surface, it provides the density profile solely in the direction perpendicular to surface. On the other hand, diffuse scattering can provide information about the lateral extent of the roughness. In contrast to previous calculations of the X-ray reflectivity, in the present analysis we consider the effect of a decrease in the intensity of penetrated X-rays due to diffuse scattering at a rough surface and rough interface. We show that the strange result has its origin in the limitation of the currently used equation in the value of the reflection coefficient because of a lack of consideration of diffuse scattering.

    The analyzed results of XRR showed that the effective roughness measured by XRR might depend on the angle of incidence. Then we introduced the effective roughness with depending on the incidence angle of X-ray. The new improved XRR formalism derived more accurate surface and interface roughness with depending on the size of coherent X-rays probing area, and derived the roughness correlation function and the lateral correlation length. In this review, an improved XRR formalism, considering the diffuse scattering and the effective roughness, is presented. The calculated reflectivity obtained by the use of this accurate reflectivity equation gives a physically reasonable result, and should enable the structure of buried interfaces to be analyzed more accurately.

  • ~あいちシンクロトロン光センターでの結果を中心に~
    上原 康, 杉山 陽栄, 野本 豊和, 村井 崇章, 陰地 宏, 柴田 佳孝, 仲武 昌史, 池野 成裕, 須田 耕平, 神岡 武文, 太田 ...
    2021 年 52 巻 p. 113-126
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    国内放射光施設の共用促進の一環で,同一試料を測定することにより各施設の特徴を相互認識することを目的としたラウンドロビン実験を行ってきた.50 eVから5,000 eVの軟X線吸収分光実験には5施設が参加し,酸化物を主とする安定物質を試料として吸収スペクトルを取得した.軟X線吸収分光では,エネルギー較正法の標準化が課題の一つであることが改めて認識された.また,多くの測定が電子収量法で実施されることから,試料帯電の抑制についてもノウハウの蓄積が重要である.本報では,AichiSRでの実験結果を紹介し,実験を通じて得られた知見をまとめる.測定スペクトルは,利用者がいつでも参照できるような形式で,各施設での公開を進めている.

  • 村松 康司, 松本 侑也, Eric M. GULLIKSON
    2021 年 52 巻 p. 127-138
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    C K端領域における2次回折光混入率の評価方法として,自立型有機薄膜の透過率測定から混入率を概算する方法を提示した.具体的には,膜厚230 nmのポリアクリル酸膜を調製し,BL-6.3.2/ALSにおいてC K端~O K端領域の軟X線透過率スペクトルを測定した.O K端のピーク強度を指標とし,C K端領域に現れるこの2次回折光ピークの強度から,透過X線における2次回折光の混入率を概算したところ,混入率は約18.5%であった.さらに,BL-6.3.2に設けられたTiフィルターを用いると,混入率は1.7%にまで低減した.光電子分光装置を備えない軟X線分光装置において,本法はC K端領域の2次回折光混入率の評価に有効である.

分析応用
  • 村松 康司, 古川 佳保, 瓦家 正英
    2021 年 52 巻 p. 139-149
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    色素増感太陽電池の酸化チタン(TiO2)における電子の励起・放出に基づく電気伝導性を評価するため,様々な条件で調製したTiO2膜と炭素含有TiO2膜の全電子収量軟X線吸収スペクトル(TEY-XAS)を測定した.CK端,Ti L端,O K端近傍の試料電流を測定し,膜の組成と電気伝導性について検討した.その結果,(1)各吸収端の励起に伴うTiO2の電気伝導はルチル型とアナターゼ型の結晶構造に依存しない,(2)炭素含有TiO2膜ではTi L端の励起において炭素による電子捕捉が示唆される,(3)導電性炭素よりもグラフェンの方がC K端の励起における電気伝導が大きい,ことがわかった.これより,TEY-XASは元素選択的に酸化チタンの電気伝導性を調べる方法として有効であることを示した.

  • 秋岡 幸司, 高部 秀樹, 土井 教史, 吉岡 達史, 今西 由紀子, 松山 嗣史, 辻 幸一
    2021 年 52 巻 p. 151-160
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    CO2ガス腐食環境において,腐食により溶出した溶液側に着目し,腐食が生じている鋼材表面近傍から溶液を連続的に採取し,全反射蛍光X線分析法を用いて,腐食挙動の把握を行った.微少容量液滴を用い,溶出したFeイオンに由来する蛍光X線(XRF)信号を検出し,保護皮膜形成を示唆する浸漬時間と温度の依存性を確認した.また,腐食および皮膜生成の反応環境に影響を与えないように,溶液の採取体積の微細化が重要であることを知見した.以上により,溶液中の分析における空間分解能が向上し,溶出元素であるFeイオンの拡散過程を観測したと推定した.本分析法は,固―液界面近傍の詳細な分析に有望な手段であり,固―液界面反応の解析などに応用が期待される分析法であると考える.

  • 和達 大樹, Yujun ZHANG, 瀬戸山 寛之, 堀田 育志, 根元 亮一
    2021 年 52 巻 p. 161-166
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究では,シリコン基板上に成長させたペロブスカイト型のバナジウム酸化物La1−xSrxVO3の薄膜に対するXAFS(X線吸収微細構造)測定を電圧印加下のオペランドで行った.これらの物質はバンド絶縁体ではなく電子同士のクーロン反発によるモット絶縁体となっている.V-K端のXAFS測定と電流電圧特性の測定を同時に行った.バナジウム酸化物とシリコンの界面にエネルギー障壁があることを活かし,電圧印加に伴うバナジウムの価数変化が起こることが期待された.しかし,0-60 Vの印加によりV-K端のXAFSスペクトルの変化はほとんど観測されなかった.この結果は,電極の大きさに対しVの価数変化の領域が小さい,あるいはキャリア数変化が下部界面の2 nm程度にとどまり,全体のVの価数を変えるほど大きくない可能性を示している.

  • 松井 久仁雄, 松野 信也, 沼子 千弥
    2021 年 52 巻 p. 167-177
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    建築材料ひとつである軽量気泡コンクリート(ALC)の主要構成成分として重要なトバモライト,および建設土木材料の硬化成分として重要な低結晶性ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)の微構造の解明を,X線吸収微細構造(XAFS),特にXANESスペクトルの測定から検討した.その結果,α-quartzおよびフィロケイ酸塩鉱物の測定から,SiO4結合様式に伴い主ピークの吸収エネルギーが変化すること,およびそれがXPSにおけるSi 1s結合エネルギーとほぼ直線関係があることが示された.α-quartzおよび天然トバモライトの測定では,α-quartz,1.1 nmトバモライト,1.4 nmトバモライトの順で吸収エネルギーの低下が認められ,SiO4四面体の結合様式がQ4,Q3-Q2混在,Q2と変化することと対応していた.さらに,主ピークの幅はこの順で広がることが観察され,構造規則性(結晶性)と対応していると考えられた.低結晶性ケイ酸カルシウム水和物としてのC-S-Hの測定では,Ca/Si比の増加に伴い,主ピークの吸収エネルギーが低下すること,およびピーク幅が増大することが同時に示された.これは,Ca/Si比の増加に伴いSiO4四面体の重合度の低下により説明された.

  • 親泊 宗一郎, 大屋 道則, 阿部 善也, 中井 泉
    2021 年 52 巻 p. 179-198
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究では放射光粉末X線回折(SR-XRD)および高エネルギー放射光蛍光X線分析(HE-SR-XRF)により埼玉県出土縄文土器を分析し,日本全国土砂データベース(JRS-DB)を利用することで,土器の産地推定の可能性を検証した.まず,SR-XRDにより土器中の重鉱物の半定量分析を行い,HE-SR-XRFにより重元素の定量分析を行った.次に,得られた重鉱物・重元素組成をもとに主成分分析を行い埼玉県域8つの遺跡から出土した土器を分類した.その後,5つの遺跡について遺跡近隣のJRS-DB構築試料と土器の重鉱物・重元素組成を比較し在地品と搬入品の識別を試みた.その結果,JRS-DBが土器の産地推定に有用であることを実証できた.

  • 吉井 裕, 高田 由美, 高村 晃大, 上床 哲明, 酒井 康弘
    2021 年 52 巻 p. 199-206
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    東京電力福島第一原子力発電所の廃炉において発生すると考えられる様々な種類の廃棄物は,その汚染レベルに応じて廃棄方法が決定される.様々な放射性物質や核燃料物質のうち,ウランは半減期が非常に長く,放射線計測による検出が難しい場合がある.そこで,本研究では廃棄物表面のウラン汚染レベルを迅速にスクリーニングする方法として,蛍光X線分析法に基づく手法を提案する.硝酸ウラニル溶液を滴下したろ紙をポリプロピレン製片側粘着テープとマイラ膜で密封し,これをコンクリート固化物,ポリエチレンブロック,ガラス板に重ねたものを,これらの物質の表面がウランに汚染されたもののモデルとした.このモデルの蛍光X線分析を行った結果,ウラン添加量とU Lα線の信号強度の相関はどのモデルでもほぼ同じ傾きの直線となった.ただし,コンクリートはウランを含んでいるので,縦軸切片が有意な値を持った.

  • 石掛 雄大, 市川 慎太郎, 栗崎 敏
    2021 年 52 巻 p. 207-215
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    北部九州は,製鉄開始期(6世紀後半~7世紀前半)に存在したとみられる遺跡が多い地域である.福岡大学が所在する油山山麓周辺でも,同様の時期を示す可能性がある製鉄関連遺跡が多数見つかっている.しかし,この地域の鉄製遺物は調査が不十分であり,始発原料の入手先が明らかにされていない.遺跡がある油山山麓は,砂鉄が豊富に含まれていることが多い花崗岩帯で構成されている.したがって,油山山麓の砂鉄が鉄製遺物の始発原料として使用された可能性がある.本研究では,始発原料の候補として油山山麓の河川砂から砂鉄を採取し,蛍光X線分析(XRF)およびX線回折分析(XRD)で測定した.各地点の砂鉄を比較して,特徴的な成分を明らかにした.さらに,採取地点の地質を把握するために河川砂をXRFおよびXRDで測定した.

  • 小野田 麻由, 大澤 澄人, 磯 瑛司, 中田 靖, 駒谷 慎太郎
    2021 年 52 巻 p. 217-227
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    岩石や鉱物などの地質学試料中には,様々な有機物が含まれており,水素(H),炭素(C),窒素(N),酸素(O)などの元素が存在している.土壌中の有機物は植物や微生物由来であると考えられているが,これらの試料中の有機物の存在を仮定し,定量分析することは,試料がどのような環境で形成されたか試料の由来を知るうえで重要な手がかりとなる.しかしながら,エネルギー分散型蛍光X線分析装置ではこれらの軽元素を測ることが難しい.本研究では,試料中有機物の化合物組成を調べることのできるラマン分光法と組み合わせて,試料を破壊することなくFundamental Parameter Method(FPM)できる分析手法を検討した.ラマン分光法で調べたH,C,N,Oの情報をFPMの計算過程に入れることで,試料のマトリックスに有機物が含まれていても高精度で定量分析できることがわかった.

  • 上羽 徹, 河合 潤
    2021 年 52 巻 p. 229-242
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    和歌山地方裁判所が2017年3月27日に公表した和歌山カレーヒ素事件の再審請求棄却決定書の問題点を指摘した.2017年4月から2017年12月までに河合が大阪高裁へ提出した意見書(21)~(32)の12通の要約である.

  • 斉藤 修裕, 井上 昂哉, 小野 美帆, 保倉 明子
    2021 年 52 巻 p. 243-256
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    三次元偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて,カカオ製品の原料となるカカオニブおよびカカオマスに含まれる微量元素の定量分析を行った.3つの2次ターゲット材(Ti,Ge,Mo)を用いて,300秒ずつ測定して12元素(P,S,K,Ca,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Br,Rb,Sr)が検出された.認証標準物質の測定から算出した最小検出下限は,サブppmレベルとなった.検量線法により,カカオニブおよびカカオマスの8元素(Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Br,Rb,Sr)の定量を行った.得られたカカオマスの元素濃度を用いて多変量解析を行ったところ,アフリカ,中南米,ベトナム,インドネシアのように地域のグループ化をすることができた.

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