薬局薬学
Online ISSN : 2434-3242
Print ISSN : 1884-3077
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総 説
  • 吉田 寿子
    2026 年18 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/03/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,生成AIは医療・薬学分野の研究活動において,思考整理,文章作成,解析コード生成など多面的に活用されつつある.しかし,AIの進展により統計解析の知識が不要になるわけではなく,研究デザインの妥当性や結果解釈の判断力はむしろ重要性を増している.本稿では,低用量アスピリンの一次予防を検討したASPREE試験を題材に,薬局の既存データを用いた観察研究を構想する際に生じる論点を,生成AIとの対話例を交えながら整理した.解析対象集団の定義,曝露の設定,index dateの選択,不死時間バイアスや適応による交絡,アウトカムの観測可能性など,観察研究特有の設計上の課題を中心に論じる.また,生成AIは研究初期段階における論点整理や選択肢の列挙に有用である一方,最終的な判断や前提条件の設定は研究者自身が担うべきであることを強調する.さらに,傾向スコアなどの解析手法についても,AIに「正解」を求めるのではなく,前提や限界を理解するための対話相手として活用する姿勢が重要である.生成AIを適切に用いることで,観察研究の設計と解析における思考過程を可視化し,研究者の主体的判断を支援する可能性を示した.

  • 鹿村 恵明
    2026 年18 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/03/11
    ジャーナル オープンアクセス

    OTC医薬品類似薬の保険給付の見直しや特定要指導医薬品の創設が進む中,薬局薬剤師がセルフメディケーション支援に積極的に関与することが求められている.一方で,保険調剤を主とする薬局がOTC医薬品販売に取り組む際には,仕入れ先の確保,商品選択,在庫管理等の実務上の障壁や制度の複雑さが心理的ハードルとなる.また,大学におけるOTC医薬品教育では,安全面を重視するあまり,トリアージや受診勧奨に重点が置かれると,商品販売の実践に結びつきにくいこともある.本稿では,OTC医薬品販売の歴史的経緯と制度的変遷を概観した上で,薬局での導入障壁を整理し,調剤経験を生かしやすい領域から段階的に商品選択を行うという考え方,ならびにPOP作成や情報提供書作成等を用いた大学教育の工夫について概説した.薬剤師によるセルフメディケーション支援を推進するためには,薬局薬剤師がOTC医薬品販売に真摯に取り組み,国民からの信頼を得ることが必要である.

原 著
  • 髙田 裕生, 武田 香陽子, 高橋 淳
    2026 年18 巻1 号 p. 17-29
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2025/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【目的】都市部とへき地における医療の違いは薬剤師に求められる役割の違いへと関係する可能性もあることから,その違いを検証することを目的とした.【方法】一般市民を対象に,薬剤師に求める役割等のアンケート調査をWeb上で実施し,得られたデータを必要に応じてJMP Pro(version:17.0.0)を使用してχ2検定を行った.【結果】一般市民が「かかりつけ薬剤師」を持つ割合は都市部(21.8%)よりもへき地(34.7%)で有意に高く( p=0.01, χ2検定),特にへき地では「自分や家族の健康状態について知りたい(健康診断を開いてほしい)」といった薬剤師に対して健康支援を期待する傾向が認められた.【結論】以上から,今後は地域医療の実態に応じて薬剤師は健康支援者としての役割も今まで以上に担う必要性が示唆された.

  • 面谷 幸子, 龍野 祥一, 岩浪 亮人, 中原 麻佑, 名德 倫明
    2026 年18 巻1 号 p. 30-40
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2025/11/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本邦では,在宅経管栄養患者の内服薬の投与実態に関する報告はほとんどない.われわれは,在宅経管栄養患者の内服薬投与の実態と課題点,および薬剤師による指導のニーズを明らかにするため,ケアマネジャーおよび訪問看護師を通じたアンケート調査を行った.結果,在宅経管栄養患者の多くが複数の内服薬を服用しており,介護者の4~5割はその投与に負担を感じ,特に,内服薬の準備や投与後のチューブ洗浄等が負担となっていた.また,内服薬の投与タイミングが指示通りでなく,薬袋の記載よりも介護者の判断を優先し決定しているケース等,投与タイミングにおける課題も明らかになった.一方で薬剤師への指導ニーズがあるにもかかわらず,指導を希望する半数が指導されていない実態や,誰に相談すれば良いかわからないというケースもあった.今後,薬剤師が患者や介護者をより一層支援し,多職種連携を強化することが重要であると考えられた.

  • 安田 賢二, 中村 泰朗, 郡司 清志, 大浦 華代子, 島添 隆雄, 本田 雅志, 近藤 純平, 下川 友香理
    2026 年18 巻1 号 p. 41-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2025/12/26
    ジャーナル オープンアクセス

    保険薬局での患者情報の把握には,かかりつけ薬剤師制度が有効であり,医療機関への報告にはトレーシングレポート(TR)が活用される.特に,がん薬物療法の患者では副作用の早期対処のためにTRの活用頻度が高い.本研究では,福岡市のそうごう薬局13薬局にて2021年11月–12月の期間に提出されたTRの患者情報をかかりつけ薬剤師群(かかりつけ群)と非かかりつけ薬剤師群(非かかりつけ群)で比較した.がん薬物療法以外の内容に関するTRでは,かかりつけ群は症状・状態変化や吸入薬以外の服薬指導内容を多く報告していた.一方,非かかりつけ群は吸入薬の服薬指導内容や入院前服薬情報を多く報告していた.がん薬物療法に関するTRの96%がかかりつけ群によるもので,症状・状態変化や吸入薬以外の服薬指導内容に加えて生活指導内容が提供されていた.かかりつけ薬剤師は薬物療法に有用な質の高い情報を収集していることが示唆された.

  • 山根 孝太, 尾上 洋, 戸丸 猛, 青木 尚, 東坂 秀作, 山崎 睦夫
    2026 年18 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/02/11
    ジャーナル オープンアクセス

    医薬品の入庫・在庫管理・薬剤取り揃え機能を有する医薬品自動入庫払出装置(以下,自動装置)の導入による対物業務効率化と安全性向上を検討するため,自動装置導入前後各1年間の患者待ち時間およびヒヤリ・ハット発生率を比較した.患者待ち時間はレセプトコンピュータアクセスから会計処理終了までの時間とし,外用薬のみや一包化を伴う処方,2時間以上のデータを解析対象から除外した.ヒヤリ・ハット発生率の比較は全処方箋データを対象とした.自動装置導入前後の患者待ち時間(秒)はそれぞれ858±1025,601±921(mean±SD)で,導入後に平均で4分17秒短縮した(P<0.001, Welch’s t-test).ヒヤリ・ハット発生率(%)はそれぞれ1.53,0.83で,導入後に0.70ポイント減少した(P<0.001, Chi-square test).自動装置の導入で対物業務が効率化し,安全性が向上した.

  • 今西 孝至, 加藤 友唯, 石﨑 宏人, 阿部 恭宜
    2026 年18 巻1 号 p. 57-64
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/02/04
    ジャーナル オープンアクセス

    厚生労働省は薬剤師による対人業務を充実させるため「かかりつけ薬剤師・薬局」を推進している.本研究では,かかりつけ薬剤師指導料算定の有無を主要指標とし,高知県におけるかかりつけ薬剤師業務の実施状況を調査した.薬局薬剤師107名から有効回答が得られ,かかりつけ薬剤師は60名(56.1%),非かかりつけ薬剤師は47名(43.9%)であった.かかりつけ薬剤師業務17項目のうち,⑨副作用や服薬状況を処方医にフィードバック,⑪開局時間外に相談に応じる,⑫夜間・休日を含めた緊急時の開局時間外の調剤,⑬検査結果に基づく薬学的確認・説明,⑰必要に応じて患者宅を訪問し服薬管理・説明を行う,の5項目の実施度が,非かかりつけ薬剤師群と比較してかかりつけ薬剤師群で有意に高かった.以上より,かかりつけ薬剤師は非かかりつけ薬剤師に比べ,「夜間を含む緊急時の対応」や「患者の状態把握に重点を置いた対人業務」に関するサービスを提供する頻度が高いことが示唆された.

  • Atsushi Ishimura, Shiori Obuchi, Yutaka Shimizu, Kaori Hashimoto, Naoh ...
    2026 年18 巻1 号 p. 65-71
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2025/10/29
    ジャーナル オープンアクセス

    This study aimed to compare the physicochemical properties and patient preferences for brand-name and generic heparinoid ointments, which have recently seen increased usage due to Japan’s selective healthcare reimbursement policy. Physicians were surveyed regarding patient preferences between brand and generic formulations and their rheological properties, such as viscosity and elasticity, were evaluated using rotational rheometry. Over 50% of the patients consulted physicians regarding formulation preferences, mainly due to usability. Rheological testing showed that while all products exhibited shear-thinning and gel-like behavior, the brand-name formulation had higher viscosity, broader linear viscoelastic range, and greater structural stability than the generics. Notably, the absence of white beeswax may contribute to its different rheological profile. These findings suggest that minor differences in excipients can affect patient-perceived comfort, influencing adherence and therapeutic satisfaction. Although generic formulations are approved based on pharmaceutical equivalence, their usability may vary, highlighting the importance of including sensory attributes in clinical decision-making. Pharmacists and healthcare providers should proactively communicate formulation-specific characteristics to patients to support informed choices. This patient-centered approach can improve treatment continuity and outcomes. Future studies should quantitatively link rheological properties to patient preferences to guide the development of optimized topical therapies.

  • Shingo Nemoto
    2026 年18 巻1 号 p. 72-80
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/02/13
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    Amenamevir inhibitor indicated for herpes zoster, has practical advantages in routine care. However, neuropsychiatric safety in real-world settings remains incompletely characterized. To examine whether amenamevir is associated with disproportionate reporting of noninfectious encephalopathy/delirium in a national spontaneous reporting system, a retrospective pharmacovigilance study of adult reports in the Japanese Adverse Drug Event Report database was conducted. Signals were evaluated using the Standard MedDRA Query for noninfectious encephalopathy/delirium analyzed hierarchically as broad (higher sensitivity) and narrow (higher specificity). Disproportionality metrics included reporting odds ratio (ROR), proportional reporting ratio, and empirical Bayes geometric mean with pre-specified thresholds. Among 695,635 adult reports, 358 involved amenamevir. For the broad definition, amenamevir was associated with disproportionate reporting for brain-related adverse events. For the narrow definition, signals were attenuated (ROR 2.15; 95% confidence interval, CI: 1.02–4.55) and lower bound of the 95% CI of empirical Bayes geometric mean (EB05) did not exceed 2. This design disentangles heterogeneity at the preferred term level, indicating that wider signals were largely attributable to mixed phenotypes, whereas specificity and sample size materially modulated apparent signal strength. In the Japanese Adverse Drug Event Report database, amenamevir demonstrated a definition-dependent association—robust under the broad phenotype and attenuated under the narrow phenotype—a pattern that is consistent with the trade-off between sensitivity and specificity in signal detection. Because spontaneous-report analyses are inherently hypothesis-generating rather than causal, the current findings support the importance of clinical vigilance for neuropsychiatric events and highlight the need for further research to verify the observed relationships.

ノート
  • 島貫 英二, 本間 利通, 佐藤 美弥子, 髙橋 あゆみ, 中村 郁代, 伊藤 由香里, 長沼 未加
    2026 年18 巻1 号 p. 81-88
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/02/04
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,薬剤師の職業コミットメントが対人業務に与える影響を明らかにすることである.クオール株式会社の新卒入社4年目の薬剤師77名を対象に,情緒・存続・規範の3要素で構成される職業コミットメント尺度のアンケート調査と,保険請求額に基づく対人業務実績を用いて分析した.重回帰分析の結果,情緒的コミットメントは対人業務実績に有意な正の影響を示しており,職業に対して感情的なつながりが強いと回答した薬剤師ほど,対人業務に対して積極的に従事することが示唆された.一方で,規範的コミットメントは有意な負の影響を示し,職業に対する義務感が強いと対人業務への関与が抑制される可能性が示された.存続的コミットメントは有意な影響はなかった.これらは,対人業務推進には職業コミットメントの多面的性質に留意し,内発的動機を高める施策が必要であることを示唆した.対象の一般化や対人業務測定の精緻化が今後の課題である.

症例・事例報告
  • 石井 充章, 前野 哲博, 蓮見 和也
    2026 年18 巻1 号 p. 89-94
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2025/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    筑波大学では,地域に貢献できる薬剤師を育成することを目指し,薬剤師向け臨床推論教育プログラムを開発している.そのプログラムでは,薬剤師が医師の臨床推論プロセスへの理解を通じて,適切な患者対応スキルを学ぶことができる.今回,嘔吐を主訴に来局した患者に対し,消化管出血を疑い受診勧奨を行った事例を経験した.事例は80歳代の男性.高血圧,膝関節症,網膜静脈塞栓症,不眠症の治療中であった.来局前日に嘔吐し,薬剤に由来するものではないかと相談を受けた.薬剤師は,臨床推論教育プログラムで学んだ症状の聞き取りチェックリストを用いて症状経過および随伴症状を確認し,黒色便を聴取した.薬剤師が,併用薬による消化管出血を考慮し受診勧奨したところ,患者は消化性潰瘍と診断された.本事例を通じ,薬局薬剤師が臨床推論に基づいた情報収集プロセスを実践することで,患者対応の質向上に寄与することが示唆される.

  • 前瀬 鞠, 近藤 慎吾, 林 直子, 岩田 紘樹, 小林 典子, 岡本 侑子, 榎木 裕紀, 漆畑 俊哉, 山浦 克典
    2026 年18 巻1 号 p. 95-102
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/02/26
    ジャーナル オープンアクセス

    進行した心不全患者の多くは,利尿薬,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)を併用している.ここに歯科でNSAIDsが処方されるとトリプルワーミーとなり,急性腎障害のリスクが増大する.本報告では,保険薬局に来局した心不全患者に対し,トリプルワーミー回避に関する歯科への情報提供と相互の算定取得を初めて行った新規連携モデルの1例を報告する.症例は心不全の既往がある80歳代男性で,利尿薬とRAS阻害薬を併用するなか,歯科処方のロキソプロフェンを他薬局で受け取り,トリプルワーミーとなっていた.本連携では,新たに服薬情報照会依頼書を活用し,服薬情報や患者の経過を情報提供した.さらに,NSAIDsの代替薬としてCOX-2阻害作用をほとんど有さないアセトアミノフェンを提案し,後日処方変更されたことを確認した.心不全患者では,利尿薬とRAS阻害薬が併用された段階で歯薬連携を行い,歯科のNSAIDs処方に伴うトリプルワーミーを回避することが望ましい.

  • 白井 大士, 小本 健博
    2026 年18 巻1 号 p. 103-113
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
    [早期公開] 公開日: 2026/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

    2021年にマイナンバーカードを用いた資格確認および医療情報閲覧が開始され,マイナンバーカードを用いた資格確認・医療情報閲覧への移行期にある.しかしながら,医療の実臨床において,マイナンバーカードを用いた資格確認・医療情報閲覧を有効活用した事例報告は限定的である.今回,マイナンバーカードを用いた医療情報閲覧により,向精神薬の多重受診・重複投薬を確認した.ゾルピデム酒石酸塩については,少なくとも2年半以上にわたり,毎月約30カ所の医療機関と薬局にて,処方および調剤がされていた.関係各所に報告を行い,1カ所の医療機関での治療に集約され,保険診療に則った適正な薬物治療体制へ移行することができた.今後,マイナンバーカードの電子証明書を活用した本人認証および同意を軸とした医療DXの推進により,同様の事例が予測され,その対応に貢献できると考えられることから,ここに報告する.

feedback
Top