論文ID: ra.2022-3000
アドヒアランス不良の問題は,超高齢社会の日本にとどまらず,世界共通の社会・経済的問題となっている.薬局薬剤師においては,対物業務から対人業務の充実を要請され,その中でアドヒアランス支援も重要な実務的課題となっている.筆者はこれまで,特にアドヒアランスの影響要因に関する実証研究を行ってきた.本稿では,まずアドヒアランスが着目されるようになった背景を概説する.次に,アドヒアランス研究の大まかなレビューとして,1)アドヒアランスの評価・測定,2)アドヒアランスの影響要因,3)アドヒアランスの改善施策・介入方法の3つの内容について国内外の研究成果を紹介する.最後に筆者が行ってきた研究の結果と,その理論的貢献や実務的示唆について紹介する.その中には,経験則を支持する結果だけでなく,仮設とは相反する結果が得られたものもある.本稿の内容が,アドヒアランス支援のための研究の着想や,担当する患者の服薬支援業務の一助となることを期待したい.