2023 Volume 143 Issue 2 Pages 171-181
In recent years, there has been an urgent need to build a pediatric in-home care system with multiple occupations. This study aims to clarify the role of pharmacists in this system by investigating what visiting nurses’ expectation from them. A self-administered questionnaire survey was conducted, targeting nurses enrolled in 10 home-visit nursing facilities. Responses were received from 51 nurses at six facilities, and the questionnaire collection rate was 42.5%. The primary role of the pharmacists that nurses regarded was the management of prescribed oral medications such as “mixing powders, single-dose packages at each time” and “sorting and summarizing each time medicine packages are taken.” Other roles included providing information based on the drug’s physicochemical properties such as “the tube gets clogged easily when the medicine is administered” and “do not crush the medicine when administering it.” The findings of this study are novel because they revealed that pharmacists need to perform pharmaceutical assessments on the influences of changes in children’s physical condition and the presence or absence of effects of drugs, and share information in real time. They also need to participate in a conference at discharge. For the first time, this study revealed the roles of pharmacists expected by nurses in pediatric in-home care. However, further knowledge or training are required, especially in terms of the relationship between the symptoms in children and the medicine administered, for pharmacists to effectively practice their roles.
近年の新生児医療技術の進歩により低出生体重児等の救命が可能となり,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit: NICU)退院後は,気管切開や人工呼吸器管理,中心静脈栄養や経管栄養など高度な医療を行いながら自宅で生活する小児が増加している.1)厚生労働省ではこれら医療的ケア児の在宅療養を支える仕組みを構築するとして,2013年に小児等在宅医療連携拠点事業を開始し,多職種による在宅医療提供体制の整備を現在も進めている.2)
小児在宅医療に係わる職種は多岐にわたり,医療以外に福祉・教育など幅広い職種間の連携体制の構築が必要である.1)しかし,高齢者の在宅医療と異なり,介護保険の対象ではないため,小児在宅医療ではケアマネージャーのような多機関・多職種と連携しサービス調整を行う職種は存在しなかった.そのため,訪問看護師がいわゆるコーディネーターの役割を担い,医療支援に加え育児支援や家族の援助などでも多職種と連携して幅広い看護ケアを提供することで,本体制構築に中心的な役割を果たすことが期待されてきた.3)特に,慢性的睡眠不足や子供の将来への不安などの様々な身体的・精神的負担を背負う,母親を中心とした保護者へ接する頻度も多く,訪問看護師は医療と生活の両側面から看護の対象として保護者を支えるという役割も担っている.4)
一方,小児在宅医療において薬剤師は,複雑な処方や経管投与の指示等に対して,調剤時に工夫を施し薬剤の経管通過の可否の判断や無菌的な輸液調製を行うこと等で,薬学的な観点からの貢献が可能と考えられる.5)また,処方は多剤併用になる傾向があり,小児用製剤がないことによる適応外使用も多いため,5)起こり得る相互作用や副作用の予測は容易ではないものの,薬剤師が介入し適切なアセスメントを行うことで,このような有害事象の発症を回避し得ることも期待される.しかしながら,小児在宅医療に関与している保険薬局の数は限定的であり,従事する薬剤師の数も少ない.6)さらに,小児在宅医療での看護師による活動に関しては多数報告されているのに対し,薬剤師の業務やその意義や役割を論じた報告はわずかしかない.6–10)全国の薬局に勤務する薬剤師への調査では,薬剤師による小児在宅医療が進まない原因として,患者や他職種の認知度の低さがあること,8)また,推進のためには「薬剤師の役割の理解と実践」が必要であることが報告されている.6)したがって,小児在宅医療の多職種連携体制の一員として,薬剤師がその専門性を発揮するためには,患者や他職種及び薬剤師自らに対し担うべき役割を明確にする必要がある.
本研究では,小児在宅医療に欠くことのできない職種である訪問看護師を対象として,薬剤師にどのような役割を期待しているかについて調査し,薬剤師が身に付けるべき知識やスキル等を具現化することを目的とした.
自記式質問票によるアンケート調査とし,世田谷区内の訪問看護施設10ヵ所に在籍する看護師120名を調査対象とした.10施設の訪問看護施設の責任者宛に調査の目的と概要を明記した調査依頼書と質問票,返信用封筒をセットにした封筒を郵送し,回答協力を依頼した.研究の説明と依頼は文書にて行い,質問票中の「同意する」へのチェック記入と質問票の投函を持って研究同意とした.なお,調査に先立ち,責任者又は管理者に対してあらかじめ送付の許可を得た.
2. 質問票の作成と質問項目質問票は,小児在宅医療に関与している薬剤師の活動報告から,6–10)小児在宅ケアで必要となることが想定される行為について抽出し,保険薬局において小児在宅医療の業務を行っている薬剤師及び看護師経験のある看護教員にスーパーバイズを受け作成した(Fig. 1).質問の内容は,(1)回答者の属性(性別・年齢)と背景(薬剤師の小児在宅への参加の既知,小児在宅の経験の有無),(2)小児在宅サービス提供の中での薬剤師の訪問ケースの有無や薬の管理に関することの程度),(3)A:薬剤師による内服薬の管理についての期待6項目(1. 散剤の混合・服用時点毎の一包化,2. 症状に合わせて調節する薬の別包,3. 薬包への薬品名・用法の印字,4. 薬包への医師の指示の印字,5. 薬包への調剤日の印字,6. 薬包の服用時点毎の仕分けとまとめ),B:薬剤師からの家族や看護師への情報提供についての期待8項目(7. 経管投与の際にチューブに詰まり易い薬の投与方法のアドバイス,8. すりつぶして投与してはいけない薬の情報提供,9. 水と混ぜて放置すると変質する薬の情報提供,10. 経口で服薬する場合,薬の味や服用感に関する情報提供,11. 医療機器や手指に関する消毒方法と製品の紹介,12. 処方薬の副作用に関する情報提供,13. 内服薬の適切な保管方法の工夫・アドバイス,14. 児の体調変化が生じた際,薬の影響を精査し情報提供を行う),C:その他の薬剤師への期待4項目(15. 保護者の悩みの傾聴,16. 注射薬の混合,17. 退院前カンファレンスへの参加(児の在宅移行時),18. 薬局と訪問看護ステーションとの患児の体調変化などの情報共有),(4)D:薬剤師が小児在宅医療に介入する意義6項目(19. 保護者が抱える服薬管理の不安の解消,20. 保護者の負担の軽減,21. 看護師の負担の軽減,22. 家族の生活環境の改善,23. より安全な医療の提供,24. より高度な医療の提供).評価尺度については,A~Cは「5:大変期待する」,「4:少し期待する」,「3:どちらでもない」,「2:あまり期待しない」,「1:全く期待しない」,Dは「5:そう思う」,「4:まあそう思う」,「3:どちらでもない」,「2:あまりそう思わない」,「1:そう思わない」の5段階リッカート尺度を採用し,単一選択形式とした.さらに,A~Cに関して「最も期待する項目」を選択する形式とした.また,(3)A~C以外で「薬剤師に期待すること」,(4)D以外で「薬剤師が介入する意義について」に関する意見を,自由記述欄を設けて収集した.
2021年1月21日~2月21日
4. 解析方法調査結果は百分率(%)で示した.最も期待されている項目の選択では,選択率=選択した人数(選択回数)/選択された総項目数×100とした.また,小児在宅サービス提供の中での薬剤師の訪問ケースの有無に「1:有」と回答したものを「薬剤師の活動を想起できる」群,「2:無,3:わからない」と回答したものを「薬剤師の活動を想起できない」群との2群に分けた.また,小児在宅サービス提供の中での薬の管理に関することの程度に「1:多くある,2:少しある」と回答したものを「薬に関する業務を想起できる」群,「3:あまりない,4:ほとんどない」と回答したものを「薬に関する業務を想起できない」群との2群に分けた.これらの2群間における薬剤師のサービス内容への期待度の差異について,A~Cは「大変期待する」を選択した人数と「少し期待する」,「どちらでもない」,「あまり期待しない」,「全く期待しない」のいずれかを選択した人数とで解析し,同様に,薬剤師の介入の意義について,Dは「そう思う」を選択した人数と「まあそう思う」,「どちらでもない」,「あまりそう思わない」,「そう思わない」のいずれかを選択した人数とで行った.統計解析は,Fisherの正確検定を用い(JMP. Pro15),有意水準は5%とした.薬剤師への期待に関する自由記述の内容は結果の考察に用いた.
5. 倫理的配慮本研究は,帝京大学倫理委員会の承認を得た後に実施した(承認番号:帝倫19-200号).
訪問看護ステーション10施設に調査票を郵送し,計120名の訪問看護師に 配布したところ,6施設の51名から回答があり,回収率は42.5%であった.
2. 調査対象者の背景性別は女性が90.2%(46名),男性は3.9%(2名)であり,年代は50代が最も多く49.0%(25名),ついで40代が21.6%(11名)であった.回答のあったどの訪問看護ステーションにおいても小児の訪問看護業務を行っており,訪問看護師の76.5%(39名)は,薬剤師も小児の在宅に訪問できることを知っていた.また,小児在宅の経験を有する訪問看護師は全体の88.2%(45名)であり,この45名のうち,薬剤師が訪問していると答えたのは51.1%(23名),小児在宅サービス提供の中で薬の管理に関する程度は,「ほとんどない」が最も多く(46.7%(21名)),「多くある」又は「少しある」と答えたのは合わせて37.7%(17名)であった(Table 1).
Number of answers (n) | Ratio (%) | |
---|---|---|
Sex | ||
Male | 2 | 3.9 |
Female | 46 | 90.2 |
Unclear | 3 | 5.9 |
Age | ||
20s | 4 | 7.8 |
30s | 6 | 11.8 |
40s | 11 | 21.6 |
50s | 25 | 49.0 |
60s | 5 | 9.8 |
1. Did you know that pharmacists could participate in pediatric in-home care? | ||
Yes | 39 | 76.5 |
No | 12 | 23.5 |
2. Have you ever experienced pediatric in-home care in home-visit nursing? | ||
Yes | 45 | 88.2 |
No | 5 | 9.8 |
Unclear | 1 | 3.9 |
3. Does the pharmacist participate in your home-visit nursing? | ||
Yes | 23 | 51.1 |
No | 14 | 31.1 |
Unknown | 8 | 17.8 |
4. Do you get involved in managing the patient’s medication during home-visit nursing? | ||
Frequently | 6 | 13.3 |
Sometimes | 11 | 24.4 |
Few times | 6 | 13.3 |
Rare | 21 | 46.7 |
Unclear | 1 | 2.2 |
6項目すべてにおいて「大変期待する」が最も多く,半数以上が選択していた.特に,「症状に合わせて調節する薬の別包」と「薬包への薬品名・用法の印字」においては「大変期待する」が8割を超えていた(それぞれ80.4%,84.3%).このうち最も期待する項目では,「散剤の混合,服用時点毎の一包化」の選択率は28.6%であり,最も高かった[Fig. 2(A) and Table 2].
(A) Management of medicine by pharmacists. (B) Provision of information by pharmacists to family members and nurses. (C) Other hopes for pharmacists. was denoted as the rate of visiting nurses who selected “very hopeful,”
was denoted as the rate of those who selected “slightly hopeful,”
was denoted as those who selected “neither,”
was denoted as the rate selected “not hopeful” and
was denoted as the rate of those who selected “neither hopeful” in each A to C.
Questionnaire Items | Number | Ratio (%) |
---|---|---|
A. Management of medicine by pharmacists | ||
1. Mixing powder, single-dose packages | 24 | 28.6 |
3. Printing of drug name and usage on the medicine package | 20 | 23.8 |
4. Printing doctor’s instructions on the medicine package | 13 | 14.3 |
6. Sorting and collecting at the time of administration of the medicine | 12 | 14.3 |
2. Separate medicine package to adjust according to symptoms | 11 | 13.1 |
5. Printing of dispensing date on the medicine package | 5 | 6 |
B. Provision of information from pharmacists to family members and nurses | ||
14. Appropriate assessment and information provision on the effects of drugs when a child’s physical condition changes | 23 | 21.1 |
7. Advice on drugs that easily clog the tube when administered | 21 | 19.3 |
8. Provision of information on drugs that should not be mashed and administered | 18 | 16.5 |
12. Provision of information on the side effects of drugs | 15 | 13.8 |
9. Provision of information on drugs that change in quality when mixed with water and left unattended | 10 | 9.2 |
10. Provision of information on the taste and feeling of drugs when consumed orally | 9 | 8.3 |
13. Advice on proper storage methods of oral drugs | 7 | 6.4 |
11. Introduction of medical equipment and disinfection methods for fingers and products that require disinfecting | 6 | 5.5 |
C. Other hopes for pharmacists | ||
18. Sharing of information on children between pharmacies and home-visit nursing stations (when the physical condition changes, etc.) | 36 | 50.0 |
16. Mixing injection solutions | 17 | 23.6 |
15. Listening to parents’ worries | 12 | 16.7 |
17. Participating in pre-discharge conference (at the time of transition to pediatric in-home care) # | 7 | 9.7 |
Rate (%)=Number of times selected/ Total number of times selected in each of A to D ×100. #No response from nurses: 1
8項目すべてにおいて「大変期待する」が最も多く選択された.「すりつぶして投与してはいけない薬の情報提供」と「水と混ぜて放置すると変質する薬の情報提供」は,「大変期待する」及び「少し期待する」に回答した割合が合計で100%となった.「医療機器や手指に関する消毒方法と製品の紹介」は「あまり期待しない」が選択されていた(4名,7.8%).このうち最も期待する項目では,「児の体調変化が生じた際,薬の影響を精査し情報提供を行う」の選択率は21.1%であり,最も高かった.次に「経管投与時にチューブに詰まり易い薬の投与方法のアドバイス」が高く,選択率19.3%であった[Fig. 2(B) and Table 2].
5. その他の薬剤師への期待4項目中「薬局と訪問看護ステーションとの患児の体調変化などの情報共有」と「注射薬の混合」において,「大変期待する」が最も多く選択されていた(それぞれ68.6%,54.0%).「保護者の悩みの傾聴」及び「退院前カンファレンスへの参加(児の在宅移行時)」では「少し期待する」が最も多かった(それぞれ46.0%,42.0%).このうち最も期待する項目では,「薬局と訪問看護ステーションとの患児の体調変化などの情報共有」の選択率は50.0%であり,最も高かった[Fig. 2(C) and Table 2].
6. 薬剤師が小児在宅医療に介入する意義6項目すべてにおいて「そう思う」を選択した割合が高かった.特に,「より安全な医療の提供につながる」が最も高く(88.2%),次に「保護者が抱える服薬管理の不安の解消につながる」が高かった(76.5%)(Fig. 3).
was denoted as the rate of visiting nurses who selected “agree,”
was denoted as the rate of those who selected “slightly agree,”
was denoted those who selected “neither,”
was denoted as the rate of those who selected “disagree” and
was denoted as those who selected “strongly disagree.”
薬剤師の活動を想起できる群では,「散剤の混合,服用時点毎の一包化」,「薬包の服用時点毎の仕分けとまとめ」,「退院前カンファレンスへの参加(児の在宅移行時)」において,「大変期待する」を有意に多く選択した(それぞれp=0.047, 0.047, 0.031).同様に,「保護者の負担の軽減」において,「そう思う」を有意に多く選択した(p=0.047).それ以外の項目では,薬剤師の活動を想起できる群・想起できない群の,期待度や薬剤師の介入の意義について有意な差はなかった(Table 3).
Nurses who selected “Very hopeful” n(%)b | Nurses who did not select “Very hopeful” n(%)b | p-Value | |
---|---|---|---|
A. Management of medicine by pharmacists | |||
1. Mixing powder, single-dose packages | 20 (60.6) | 3 (25.0) | 0.047a |
2. Separate medicine package to adjust according to symptoms | 21 (58.3) | 2 (22.2) | 0.07 |
3. Printing of drug name and usage on medicine package | 20 (54.0) | 3 (37.5) | 0.46 |
4. Printing doctor’s instructions on the medicine package | 15 (53.6) | 8 (47.0) | 0.76 |
5. Printing of dispensing date on the medicine package | 14 (58.3) | 9 (42.9) | 0.38 |
6. Sorting and collecting at the time of administration of the medicine | 20 (60.6) | 3 (25.0) | 0.047a |
B. Provision of information by pharmacists to family members and nurses | |||
7. Advice on drugs that easily clog the tube when administered | 21 (55.2) | 2 (28.6) | 0.24 |
8. Provision of information on drugs that should not be mashed and administered | 21 (56.8) | 2 (25.0) | 0.13 |
9. Provision of information on drugs that change in quality when mixed with water and left unattended | 22 (56.4) | 1 (16.7) | 0.10 |
10. Provision of information on the taste and feeling of drugs when consumed orally | 18 (62.0) | 5 (41.7) | 0.51 |
11. Introduction of medical equipment and disinfection methods for fingers and products that require disinfecting | 14 (63.6) | 9 (39.1) | 0.14 |
12. Provision of information on the side effects of drugs | 19 (73.1) | 4 (44.4) | 0.72 |
13. Advice on proper storage methods of oral drugs | 19 (55.9) | 4 (36.4) | 0.31 |
14. Appropriate assessment and information provision on the effects of drugs when a child’s physical condition changes | 21 (55.3) | 2 (28.6) | 0.24 |
C. Other hopes for pharmacists | |||
15. Listening to parents’ worries | 12 (70.6) | 11 (39.3) | 0.07 |
16. Mixing injection solutions | 15 (62.5) | 8 (38.1) | 0.14 |
17. Participating in pre-discharge conference (at the time of transition to pediatric in-home care)# | 13 (72.2) | 9 (34.6) | 0.031a |
18. Sharing of Information on children between pharmacies and home-visit nursing stations (at changes in physical condition, etc.) | 18 (56.3) | 5 (38.5) | 0.34 |
Nurses who selected “Agree” n(%)c | Nurses who did not select “Agree” n(%)c | p-Value | |
D. Effect of the pharmacist’s intervention in pediatric in-home care | |||
19. Do you think it will help alleviate the parents’ anxiety regrading medication management? | 19 (54.3) | 4 (40.0) | 0.49 |
20. Do you think that it will reduce the parents’ burden? | 20 (60.6) | 3 (25.0) | 0.047a |
21. Do you think that it will reduce the nurses’ burden? | 19 (57.6) | 4 (33.3) | 0.11 |
22. Do you think that it will make a family’s living environment better? | 18 (58.1) | 5 (35.7) | 0.21 |
23. Do you think that it will ensure the provision of providing safer medical care? | 21 (52.5) | 2 (40.0) | 0.67 |
24. Do you think that it will ensure the provision of higher quality medical care? | 16 (50.0) | 7 (53.8) | 1.00 |
aFisher’s exact test: p<0.05. #No response from nurses: 1. n: Number of nurses who experienced home-visit medical care by pharmacists in the group of nurses who selected “Very hopeful” or in the group of nurses who did not select “Very hopeful” at each A to C. Number of nurses who experienced home-visit medical care by pharmacists in the group of nurses who selected “Agree” or in the group of nurses who did not select “Agree” at D. b%=Number of nurses who experienced home-visit medical care by pharmacists/number of nurses who selected “Very hopeful”×100 or did not select “Very hopeful”×100. c%=Number of nurses who experienced home-visit medical care by pharmacists/number of nurses who selected “Agree”×100 or did not select “Agree”×100.
薬に関する業務を想起できる群では,「薬包の服用時点毎の仕分けとまとめ」,「退院前カンファレンスへの参加(児の在宅移行時)」,「薬局と訪問看護ステーションとの患児の体調変化などの情報共有」において,「大変期待する」を有意に多く選択した(それぞれp=0.031, 0.010, 0.0496).それ以外の項目では,薬に関する業務を想起できる群・想起できない群において,期待度に有意な差はなかった(Table 4).
Nurses who selected “Very hopeful ” n(%)b | Nurses who did not select “Very hopeful” n(%)b | p-Value | |
---|---|---|---|
A. Management of medicine by pharmacists | |||
1. Mixing powder, single-dose packages | 15 (46.9) | 2 (16.7) | 0.09 |
2. Separate medicine package to adjust according to symptoms | 15 (42.9) | 2 (22.2) | 0.45 |
3. Printing of drug name and usage on medicine package | 15 (41.7) | 2 (25.0) | 0.45 |
4. Printing doctor’s instructions on the medicine package | 12 (42.9) | 5 (31.3) | 0.53 |
5. Printing of dispensing date on the medicine package | 10 (43.5) | 7 (33.3) | 0.55 |
6. Sorting and collecting at the time of administration of the medicine | 16 (48.5) | 1 (9.1) | 0.031a |
B. Provision of information by pharmacists to family members and nurses | |||
7. Advice on drugs that easily clog the tube when administered | 14 (38.9) | 3 (37.5) | 1.00 |
8. Provision of information on drugs that should not be mashed and administered | 15 (40.5) | 2 (28.6) | 0.69 |
9. Provision of information on drugs that change in quality when mixed with water and left unattended | 15 (39.5) | 2 (33.3) | 1.00 |
10. Provision of information on the taste and feeling of drugs when consumed orally | 14 (43.8) | 3 (25.0) | 0.32 |
11. Introduction of medical equipment and disinfection methods for fingers and products that require disinfecting | 9 (42.9) | 8 (34.8) | 0.76 |
12. Provision of information on the side effects of drugs | 14 (40.0) | 3 (33.3) | 1.00 |
13. Advice on proper storage methods of oral drugs | 13 (39.4) | 4 (36.4) | 1.00 |
14. Appropriate assessment and information provision on the effects of drugs when a child’s physical condition changes | 16 (43.2) | 1 (14.3) | 0.22 |
C. Other hopes for pharmacists | |||
15. Listening to parents’ worries | 9 (52.9) | 8 (29.6) | 0.20 |
16. Mixing injection solutions | 11 (45.8) | 6 (30.0) | 0.36 |
17. Participating in pre-discharge conference (at the time of transition to pediatric in-home care)# | 11 (61.1) | 5 (20.0) | 0.01a |
18. Sharing of Information on children between pharmacies and home-visit nursing stations (at changes in physical condition, etc.) | 15 (48.4) | 2 (15.4) | 0.0496a |
Nurses who selected “Agree”n(%)c | Nurses who did not select “Agree”n(%)c | p-Value | |
D. Effect of the pharmacist’s intervention in pediatric in-home care | |||
19. Do you think it will help alleviate the parents’ anxiety regrading medication management? | 15 (42.9) | 2 (22.2) | 0.45 |
20. Do you think that it will reduce the parents’ burden? | 14 (43.8) | 3 (25.0) | 0.32 |
21. Do you think that it will reduce the nurses’ burden? | 14 (45.2) | 3 (23.1) | 0.20 |
22. Do you think that it will make a family’s living environment better? | 13 (41.9) | 4 (33.3) | 0.74 |
23. Do you think that it will ensure the provision of providing safer medical care? | 16 (41.0) | 1 (20.0) | 0.63 |
24. Do you think that it will ensure the provision of higher quality medical care? | 13 (41.9) | 4 (33.3) | 0.74 |
aFisher’s exact test: p<0.05. #No response from nurses: 1. n: Number of nurses involved in managing the patient’s medication in the group of nurses who selected “Very hopeful” or in the group of nurses who did not select “Very hopeful” at each A to C. Number of nurses involved in managing the patient’s medication in the group of nurses who selected “Agree” or in the group of nurses who did not select “Agree” at D. b%=Number of nurses involved in managing the patient’s medication/number of nurses who selected “Very hopeful”×100 or did not select “Very hopeful”×100. c%=Number of nurses involved in managing the patient’s medication/number of nurses who selected “Agree”×100 or did not select “Agree”×100.
世田谷区内の訪問看護ステーションに在籍する訪問看護師に対して調査した結果,回答を得たすべての施設で小児の訪問看護を実施しており,約9割の訪問看護師が小児在宅の経験を有していた.また,約8割の訪問看護師は,薬剤師が小児の在宅に訪問できることを認知しており,小児在宅の経験を有する訪問看護師の約半数が薬剤師の訪問ケースも経験的に認知していた.世田谷区は全国平均と比べ在宅で医療的ケアを受けながら暮らしている子どもの割合が高い.11)全国的にみると,在宅療養している準・超重症児のうち訪問看護を利用している小児は18%ほど,さらに,小児患者を受け入れている訪問看護ステーションは少ないとの報告12)もあることから,本研究の調査対象者の所属を世田谷区という地域を限定にしたことで,小児の訪問看護の経験が多い対象者が選別されたと考えられる.さらに,薬剤師の小児在宅医療における活動報告もこの地域の保険薬局からのものの割合が高く,5–7,9,10)訪問看護師が薬剤師の活動に触れる機会も他地域と比較して多いのではないかと予想され,本研究の結果が薬剤師との実際の連携の経験に基づく知見に近いものになり得ると考えられた.
2. 小児在宅医療における薬剤師に期待される役割2-1. 内服薬の調剤上の工夫小児の薬物療法は処方薬の種類が多く用量調節も多様であることから,薬剤師は専門職として服薬上の問題を解決するための調剤上の様々な工夫を行っており,本研究では,それらを内服薬の薬学的管理として6項目提示し調査した.その結果,すべての項目で「大変期待する」を選択した割合が高かった.それぞれの項目を薬剤師が行うメリットとして,「散剤の混合,服用時点毎の一包化」は,賦形剤の総量を減らすことができ,チューブ閉塞のリスクを軽減することができる,「症状に合わせて調節する薬の別包」では,体調によっては注入を控える薬剤を判別し別包とする,「薬包への薬品名・用法の印字」及び「薬包への医師の指示の印字」は,常時服薬管理を行っていない家族や訪問看護師が与薬を行うことになった場合でも適切に対処できる,「薬包への調剤日の印字」は処方変更の混乱を避けることができる,「薬包の服用時点毎の仕分けとまとめ」では,服用時点が異なる処方薬の仕分けは労力を要するが,薬剤師が行うことで,保護者の仕分けの負担を軽減し,さらに訪問看護師は投薬時に安心して注入できる,などが考えられた.自由記述では,「内服用カレンダー,薬箱がより分かり易く,取り出し易い形状工夫を提案」や「小児の場合用量が微量な調節が必要なので留意」してほしいなど,より具体的な要望も抽出された.これらは,薬剤師にとって業務の負担が増えるものの,薬の専門知識や熟練した技術を要して実施するものである.したがって,訪問看護師は,保護者や家族の服薬管理に係わる問題意識を日常的に抱えており,その解決を薬剤師の専門性を活かした調剤上の工夫に期待しているのではないかと考えられた.
2-2. 薬剤の物性を考慮した投薬方法についての情報提供薬剤師から家族や訪問看護師への情報提供を期待する内容として提示した8項目すべての項目で「大変期待する」が最も多く選択された.特に,「すりつぶして投与してはいけない薬の情報提供」,「水と混ぜて放置すると変質する薬の情報提供」,「経管投与時にチューブに詰まり易い薬の投与方法のアドバイス」といった薬剤の物性を考慮した投与方法に関する情報提供の期待が高かった.小児在宅医療では7割以上の患児が経管栄養を必要としており,13)服薬はチューブやカテーテルを介して行っていること,また,家族が薬に関して困っていることとして,投薬時の経管チューブへのつまりであることが報告されている.7)また,自由記述にも「薬に関してはやはり専門職が携わって頂くと,私たち看護師が悩んだときにも相談し易く,ありがたい.家族も安心」,「薬剤師の方の視点から保護者の方へ情報やアドバイスが加わることがいい方向につながる」とあるように,訪問看護師にとって,薬剤師は訪問看護師自身や家族への薬に関する相談や情報提供者としての期待が高いことが明らかとなった.なかでも,訪問看護師はチューブやカテーテルを介した投薬時のトラブル等の課題を家族からの相談を含めて訪問看護師自身が日常的に抱えており,その解決を薬剤師の専門性を活かした情報提供に期待しているものと考えられた.
2-3. 患児の体調変化に対する薬学的アセスメントの情報提供薬剤師から家族や訪問看護師への情報提供を期待する内容のうち最も期待する項目として「児の体調変化が生じた際,薬の影響を精査し情報提供を行う」ことが最も多く選択された.訪問看護師は,定期的な小児在宅訪問の際に,患児の体調の変化について看護師の立場からのアセスメントを行い,異常の早期発見に努めており,看護の専門性では対応できないケアについては必要に応じて医師やその他の職種に働きかけながら多職種連携の中心的な役割を担い対応している実態がある.14)また,家族が訪問看護ステーションを利用する目的として病状悪化時の病状の判断についての相談が挙げられており,看護師のアセスメントに対する家族からの期待も高いといった報告15)がある.自由記述にも「個々の患児に応じた薬の効果評価を期待している」や「定期的に訪問していると,児の症状で薬の影響ではと思った時,母や家族が気軽に相談できる」とあるように,訪問看護師は,患児の体調変化に対する薬学的な観点からのアセスメントの必要性を家族からの相談を含めて訪問看護師自身が認識しており,その解決を薬剤師の専門性を活かした情報提供に期待しているものと考えられた.
3. 小児在宅医療における薬剤師の介入意義3-1. 安全な医療の実現小児在宅医療に薬剤師が介入する意義として,最も多かったのは「より安全な医療の提供につながる」であった.本研究結果では,小児在宅医療における薬剤師に期待される役割の一つとして,「すりつぶして投与してはいけない薬の情報提供」,「水と混ぜて放置すると変質する薬の情報提供」といった薬剤の物性を考慮した投与方法に関する情報提供が明らかになった.また,「経管投与時にチューブに詰まり易い薬の投与方法のアドバイス」といったチューブやカテーテルを介した投薬時のトラブル回避に対する期待も高いことが明らかとなった.また,自由記述には「残薬調整や医療安全情報(薬剤に関する部分)等で連絡をとりあい,医師・医療機関とも連携が深められるとよいと思う」といった期待も寄せられた.以上のことから,薬剤師の介入によって,より安全な医療の提供につながるとの認識をもっているものと考えられた.
3-2. 保護者の不安の解消と負担の軽減小児在宅医療に薬剤師が介入する意義として次に多かったのは,「保護者が抱える服薬管理の不安の解消につながる」であった.自由記述にも「薬剤に関することで容易に質問できる薬剤師が在宅で連携をとれると,不安や心配が減ると思います」という期待が寄せられている.また,薬剤師の活動を想起できる訪問看護師では,小児在宅医療に薬剤師が介入することにより「保護者の負担の軽減につながる」と考えていることが明らかとなった.自由記述にも「ご家族は療育に加え,家事,兄弟の育児,(お仕事など),眠る時間を削って療育に臨まれる方が多くおられます.療育負担の軽減,安心して在宅療育を行うためには薬剤師さんの力が大切と思います」という期待も寄せられている.医療的ケア児の在宅生活では,様々な問題を相談する相手もいない状況で,十分な睡眠もとれず,保護者の献身的な努力によって成り立っていることが大きな問題となっている.16)そのなかで,薬剤師が訪問し,保護者の薬に関する不安や心配,悩みを傾聴し,相談に応じることで不安の解消や負担の軽減につながるとの認識をもっているものと考えられた.
4. 小児在宅医療体制における薬剤師への課題本研究の結果,薬剤師の活動や薬に関する業務を想起できる訪問看護師からの,薬剤師の「退院前カンファレンスへの参加(児の在宅移行時)」への期待が有意に高かった.在宅移行期の家族には,病院とは異なる環境で医療的ケアを行う生活に対して不安や心配が存続し,特に,在宅移行直後の患児の体調変化についての不安が大きいことが報告されている.17)退院前カンファレンスにおいて,看護師は収集した情報から新たな職種の介入の必要性を判断する役割を担っているとの報告もある.14)薬剤師の活動や薬に関する業務を想起できた結果,本研究でも示されているような薬剤師の役割として期待されている調剤の工夫,薬剤の物性を考慮した投薬方法,患児の体調変化に対する薬学的アセスメントといった薬剤師による在宅移行期の介入の必要性を判断したからであると思われる.
また,薬に関する業務を想起できる訪問看護師からの「薬局と訪問看護ステーションとの患児の体調変化などの情報共有」への期待が高いことが明らかとなった.自由記述にも「利用者様にどのような説明をされたか,気付いたことなど情報共有(理解できないとか,気分変調をきたし易い,誤飲し易いなど)ができる」ことへの期待も寄せられている.このように,訪問看護師は,薬剤師が薬局や訪問で患児や家族に行った薬に関する説明内容や,薬局や訪問で得た患児の体調変化や服薬行動・服薬管理に係わる様々な情報と薬学的アセスメントについてのリアルタイムでの共有を求めていた.小児在宅医療における継続支援の観点からの薬剤師との連携を期待していると考えられた.
なお,薬剤師への期待に関する自由記述として14例(その他期待すること:5例,薬剤師の介入の意義:9例)の回答があり,少数事例の質的データとして考察に示した.その内容と本考察内容の対応の適切性に関しては,今後症例数を増やすことで検証していく必要がある.
小児在宅医療における薬剤師の役割に関する研究として,家族からの薬に関する要望の調査,8)薬剤師による小児在宅の実践報告,7,9,10)薬剤師の介入を進めるための薬剤師自らに対する調査6)などがこれまで報告されている.しかしながら,訪問看護師を対象として調査し,薬剤師の役割について考察したのは,本研究が初めてといえる.本結果からは,「散剤の混合,服用時点毎の一包化」や「薬包の服用時点毎の仕分けとまとめ」などの処方された内服薬の調剤の工夫や「すりつぶして投与してはいけない薬」,「水と混ぜて放置すると変質する薬」,「経管投与時にチューブに詰まり易い薬」などのチューブやカテーテルを介した投薬時のトラブル回避,薬剤の物性や安全性を考慮した「薬に関する医療安全情報」の提供,「保護者が抱える服薬管理の不安の解消」や負担の軽減が薬剤師に期待されることとして抽出された.また,退院前の在宅移行期から,その後の小児在宅医療を継続支援する職種間連携チームの一員としての参画も期待された.さらに,「児の体調変化が生じた際,薬の影響を精査し情報提供を行う」といった薬学的アセスメントを行った際,リアルタイムでの情報共有が期待されていた.このような患児の体調変化時の薬学的観点からのアセスメントに関する要望はこれまで報告がなく,新規の知見と考えている.
小児在宅医療の対象となる患児は,重症な希少疾患を抱えており,今後は医療的ケア児の増加も見込まれている.薬剤師が患児の体調変化時に薬学的観点からアセスメントができるようになるためには,現れた症候(体調の変化)と薬との関連を推論する思考過程(臨床推論)のトレーニングが必要と考えられる.しかし,現状は,セルフメディケーションの観点からOTC医薬品販売時の受診勧奨を判断できるようなスキルの習得を目指した卒後教育が注目されているものの,18)それ以外の領域では十分な教育が行われているとは言えない.薬剤師に対するアンケート調査においても,小児在宅医療への薬剤師の介入促進に必要なものは,学ぶ環境としての「小児在宅医療に関する勉強会・講演会」であるとのように,6)今後は,積極的に薬剤師向けの研修プログラムを導入する必要があり,特に,体調変化に対するアセスメント能力の向上を目指した研修体制の構築が課題と考える.
本研究を実施するにあたり,調査にご協力いただいた世田谷区の訪問看護ステーションの看護師の皆様に深く御礼申し上げます.
開示すべき利益相反はない.