YAKUGAKU ZASSHI
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Development of a Simple and Sensitive Enzyme-linked Immunosorbent Assay for Sinomenine
Hiroto Kataoka Kanae UraTetsuya Saita
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2023 Volume 143 Issue 2 Pages 153-158

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Summary

Sinomenine (SIN) is a major component contained in extracts of the Chinese medicinal herb Sinomenium acutum. SIN has various pharmacological properties, including cytoprotection, immunosuppression and anti-inflammation effects. Furthermore, recent studies have reported that SIN has anti-tumor and antidepressant effects, which has created a strong need for SIN kinetic studies. This paper reports a simple and sensitive competitive enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) for the pharmacokinetic evaluation of SIN. Anti-SIN serum was obtained by immunizing mice with an antigen conjugated with bovine serum albumin and carboxylic modified SIN using the N-succinimidyl ester method. Enzyme labeling of SIN with horseradish peroxidase was similarly performed using carboxylic modified SIN. Under optimized conditions, this ELISA shows a linear detection range from 40 to 5000 pg/mL, and a limit of detection of 12.1 pg/mL for 50-µL samples. This assay was specific for SIN and showed very slight cross-reactivity with dextromethorphan (0.45%), dimemorfan (0.22%) and codeine (0.01%), but no cross-reactivity with 2-methoxycyclohex-2-enone (<0.001%). Using this ELISA, SIN levels were easily determined in the blood of mice after oral administration of Kampo medicine, Boiogito. The ELISA may be a valuable tool for studies of the biological and pharmacological properties of SIN.

緒言

Sinomenine(SIN)は,オオツヅラフジの根茎を乾燥させた生薬「防已」の主成分であり,抗炎症,抗リウマチ,鎮静,降圧,抗不整脈及び免疫抑制など様々な薬理学的効果を有することが報告されている.13この多くの薬理作用を有するSINを含有する防已は,防已黄耆湯などの多くの医薬品に配合され,様々な用途で汎用されている.しかしながら,これらの防已配合医薬品を服用した後のSINの体内動態については,ほとんど解明されていない.防已服用後のSINの体内動態を解明することは,防已配合医薬品の薬理学的効果及び臨床的評価を行ううえで,重要であると考えられる.また,ヒトの関節リウマチ治療において,SIN単独療法を実施し,有益な効果を示したことが報告されている.1,4,5さらに最近の研究では,SINに抗腫瘍効果6や抗うつ効果7があることが報告され,SINの動態研究の必要性が強く求められている.現在,SINの動態分析はHPLC8やLC/MS9が開発され用いられている.しかしながら,防已配合医薬品服用後のSINの血中及び組織内濃度が非常に低いため,より簡便で高感度な分析法の開発が求められている.これまでわれわれは,多くの薬剤に対して,簡便で高感度な酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay: ELISA)の開発に成功してきた.1012本研究では,SINに対する簡便で高感度なELISAの開発を行ったので報告する.

方法

1. 試薬

SIN hydrochlorideは,Tokyo Chemical Industry Co., Ltd.(Tokyo)より購入した.防已黄耆湯は,Tsumura & Co.(Tokyo)より購入した.N-Hydroxysuccinimide, bovine serum albumin(BSA)及び1-ethyl-3,3-dimethyl-aminopropyl carbodiimide hydrochloride(EDC)は,FUJIFILM Wako Pure Chemical Corp.(Osaka)より購入した.Succinic anhydrideは,Kanto Chemical Co., Inc.(Tokyo)より購入した.Anti-mouse-immunoglobulin G(IgG)(ヤギ由来)は,Bethyl Laboratories, Inc.(Montgomery)より購入した.Horseradish peroxidase(HRP)と3,3′,5,5′-tetramethylbenzidine(TMB)は,Boehriger Ingelheim Pharma GmbH(Ingelheim am Rhein)より購入した.標準ヒト血清(液状ネスコール®)は,Alfresa Pharma Corp.(Osaka)より購入したものを使用した.交差反応試験で用いたcodeine, dextromethorphanとdimemorfanは,それぞれ医薬品であるリン酸コデイン散1%(Nichi-Iko Pharmaceutical Co., Ltd., Toyama),メジコン散10%(Shionogi & Co., Ltd., Osaka)と,アストミン錠10 mg(OrphanPacific, Inc., Tokyo)を用いた.また,2-methoxycyclohex-2-enoneは,BLD Pharmatech Co., Ltd.(Cincinnati)より購入した.ほかのすべての試薬と溶媒は,市販の特級品を使用した.

2. SIN抗原の作製

SIN(5 mg, 13.6 µmol)を0.3 mLのpyridineに溶解した溶液にsuccinic anhydride(1.36 mg, 13.6 µmol)を添加し,60°Cで一晩反応させた.その後,溶媒を窒素(N2)dryにより除去した.その残留物を95% dioxane(0.3 mL)に溶解し,その溶液中にN-hydroxysuccinimide(3.13 mg, 27.2 µmol)とEDC(26 mg, 0.13 mmol)を添加し室温で2時間反応させた.その反応溶液150 µLを,BSA(10 mg, 0.15 µmol)を溶解した0.1 M phosphate buffer(PB)(pH 7.5)1 mLに添加し,攪拌しながら室温で2時間反応させた.0.01 M PB(pH 7.5)1 Lで4回透析を行いSIN–BSA複合体を得た(Fig. 1).得られたSIN–BSAは使用するまで−20°Cで保存した.さらに,2,4,6-trinitrobenzenesulfonic acid(TNBS)法13を用いて,BSAに結合したSINのモル数を測定した.

Fig. 1. Preparation of the Immunogen for SIN and SIN–HRP Conjugate

3. 抗SIN抗血清の調製

5週齢のBALB/cマウス(雌)に,作製したSIN–BSA複合体を生理食塩水にて500 µg/mLに調製し,その溶液1 mLとFreund’s complete adjuvantの1 mLをともに乳化し,各マウスに400 µL(タンパク質量100 µg)ずつ腹腔内投与した.その後,2週間おきに,初回投与量の半分のタンパク質量で感作を繰り返した.ランダムに選んだマウス2匹の尾静脈から血液を採取し,ELISA dilution test14により抗体力価を確認した.抗体力価がピークとなった4回感作から7日後に,全マウスを安楽死させ,血液を採取した.各マウスから得られた血液は,混合し,1048×g, 4°Cで10分間遠心分離した後,得られた血清を55°Cで30分間非働化を行った.この血清を抗SIN抗血清として用いた.

4. SIN酵素標識体(SIN–HRP)の調製

SIN酵素標識体の調製は抗原の作製方法と同様に行った(Fig. 1).SIN(5 mg, 13.6 µmol)を0.3 mLのpyridineに溶解した溶液にsuccinic anhydride(2.73 mg, 27.3 µmol)を添加し,60°Cで一晩反応させた.その後,溶媒をN2 dryにより除去した.その残留物を95% dioxane(0.3 mL)に溶解し,その溶液中にN-hydroxysuccimide(6.29 mg, 54.6 µmol)とEDC(104 mg, 0.54 mmol)を添加し室温で2時間反応させた.その反応溶液60 µLを,HRP(0.5 mg, 12.5 nmol)を溶解した0.1 M PB 1 mLに添加し,攪拌しながら室温で2時間反応させた.この複合体を10 mM phosphate-buffered saline(pH 7.4)with 0.1% BSA(PBS–BSA 0.1%)で平衡化したPD-10 Desalting Column(Cytiva Tokyo, Japanにより購入)を用いてゲル濾過し,1 mL分画毎に収集し,酵素活性のピーク分画(fr. 4)をSIN酵素標識体(SIN–HRP)として用いた.このSIN–HRPは,冷蔵保存(4°C)で6ヵ月以上,酵素活性を失うことなく安定であった.

5. ELISA

Microtiter platesのwellに10 mM tris hydrochloride(Tris–HCl)buffer(pH 8.5)で溶解したanti-mouse-IgG(2 µg/mL)を100 µLを加え37°Cにて60分間静置した.そのwellに1% skim milkを含む10 mM PBSで5000倍希釈した抗SIN抗血清を100 µL加え37°C, 30分反応させた.PBS–BSA 0.1%を用いて3回洗浄した後,wellにPBS–BSA 0.1%で1 : 1000に希釈したSIN–HRP標識体を50 µLとSIN標品を添加したヒト血清検体を50 µLを加え,4°Cで一晩競合反応させた.PBS–BSA 0.1%を用いて十分に洗浄した後,抗体に結合した酵素標識体の活性を測定するため,3% dimethyl sulfoxide, 0.01% H2O2を含む0.1 M酢酸ナトリウムbuffer(pH 5.5)に発色基質である0.42 mM TMBを溶解した溶液を,各wellに150 µL添加し,室温で30分間発色させた.その後1 M H2SO4を50 µL加え反応を停止させ,Multiskan™FC ELISA reader(Thermo Fisher Scientific, Inc., Tokyo)を用いて,450 nmにおける吸光度を測定した.また,防已黄耆湯中に含まれるSIN量は,防已黄耆湯1 mgを1 mLのメタノールで溶解し,PBS–BSA 0.1%で1000倍に希釈調製したものを本ELISAによって測定し,SIN量を算出した.

6. SIN類似化合物の交差反応性試験

SINの類似化合物の交差反応性は,SINの反応を100%として,SINの類似化合物であるdextromethorphan, dimemorfan, codeine及び2-methoxycyclohex-2-enoneの交差反応性を,SIN–HRPの酵素活性を50%阻害する各濃度(IC50値)により,以下の式より交差反応性(%)を算出した.

  

7. 動物実験の解析

7週齢のICRマウス[雄,体重:30–35 g,(Japan SLC, Inc., Hamamatsu)]を用いた.実験動物は,湿度と光を調節した室内(温度21±1°C,湿度55±10%,12 h;明,12 h;暗)で飼育し,自由に食料と飲み水を摂取させた.各3匹のマウスに生理食塩水で溶解させた防已黄耆湯(250 mg/kg)及びSIN(391.25 µg/kg)を経口で投与した.なお,防已黄耆湯の投与量は,臨床投与量の約5倍量を使用した.また,SINの投与量は,防已黄耆湯中に含まれるSIN量をELISAで測定し,投与した防已黄耆湯に含まれるSIN含有量と同じ投与量にした.投与後15, 30, 60, 90, 120, 480 min毎に尾静脈から採血し,得られた血液検体をPBS–BSA 0.1%で80倍希釈したものを本ELISAで測定した.薬物動態のパラメーターは,モーメント解析法に基づいた薬物動態解析プログラムMOMENT(Excel)15を用いて算出した.なお動物実験を行うにあたり,崇城大学動物実験倫理委員会の許可を得て,崇城大学動物実験倫理委員会規則を遵守し行った(大学認可番号:2021-L-006).

結果

1. BSAに結合したSINの結合数

TNBS法13を用いて,BSAに結合したSINのモル数を測定した結果,BSA 1 molに対して,SINが約15 mol結合していた.

2. ELISA

本ELISAの測定原理は,microtiter platesを用いる第2抗体固相法を用いた.ELISAにおける検量線,定量下限,検出下限,精度は,標準ヒト血清中のSIN濃度を,U.S. Food and Drug Administration(FDA)のガイドラインの基準16に準拠し測定することにより得た.Figure 2に示すように,検量線の測定範囲はヒト血清中SIN濃度8–25000 pg/mLを示し,40–5000 pg/mLの範囲で直線性(相関係数:R2=0.9947)が得られた.このSIN濃度40–5000 pg/mLの範囲において,SIN標品を添加したヒト血清検体(40, 200, 1000, 5000 pg/mLの4検体)を5回測定した際の変動係数(coefficient of variation: C.V.)と回収率は,日内変動において,それぞれ4.5–7.8%, 97.1–102.4%,日差変動において,それぞれ4.8–8.2%, 97.0–101.7%であり,精度,真度ともに良好であった(Table 1).また,検出下限は,平均バックグラウンドの平均値から3 standard deviation(S.D.)を引いた値で12.1 pg/mLと決定された.定量下限はバックグラウンドの平均値から10 S.D.を引いた値で32.9 pg/mLと決定された.また,防已黄耆湯1 mg/mL中のSINをELISAで測定した結果,1.57 µg/mgであった.

Fig. 2. Standard Curve of SIN in Human Serum

The standard curve shows the percentage of bound enzyme activity for various doses of SIN (B) as a ratio of enzyme activity bound by SIN–HRP alone (B0). Error bar represents standard deviation with n=5.

Table 1. Precision and Accuracy Tests of ELISA for SIN in Human Serum
Added (pg/mL)Estimated (pg/mL)C.V. (%)Recovery (%)
Within-day variability (n=5)4038.9±3.07.897.1
200199.8±11.45.799.9
10001003.3±45.54.5100.3
50005120.0±238.34.7102.4
Between-day variability (n=5)4040.6±3.38.2101.7
200194.1±9.44.897.0
10001001.9±49.34.9100.2
50004977.7±341.46.999.6

3. SIN類似化合物の交差反応性試験

抗SIN抗体の特異性は,類似物4種を用いる交差反応試験により検討し,50%阻害率により示した.交差反応性は,ELISAにより,SIN及び各類似化合物の50%抑制濃度(IC50)より交差反応性(%)を算出した.

抗SIN抗体は,dextromethorphanに対して0.45%, dimemorfanに対して0.22%, codeineに対して0.01%の交差反応性を示した.さらに,2-methoxycyclohex-2-enoneに対しては,0.001%以下と全く交差反応性を示さなかった(Table 2).

Table 2. Cross-reactivity of Anti-SIN Antiserum
Compound’s name and structureCross-reactivity (%)
SIN100.0
Dextromethorphan0.45
Dimemorfan0.22
Codeine0.01
2-Methoxycyclohex-2-enone<0.001

4. マウスにおける防已黄耆湯及びSINの単回投与実験

SINの動態研究におけるELISAの有用性を実証するために,防已黄耆湯250 mg/kg又はSIN 391.25 µg/kgをマウスに経口投与し,その血中SIN量を経時的に本ELISAで測定した.防已黄耆湯投与後のSINの最高血中濃度到達時間(time to plasma concentration: Tmax)は30 min,最高血中濃度(maximum plasma concentration: Cmax)は63.0 ng/mL, SIN投与後のTmaxは30 min, Cmaxは56.4 ng/mLであった(Fig. 3).

Fig. 3. Blood Concentration–time Profiles of SIN after a Single Oral Administration of SIN or Boiogito to Mice

Three mice weighing 30–35 g were orally administered SIN (391.25 µg/kg) or Boiogito (250 mg/kg). At each time point, blood samples were collected and the concentrations of SIN were measured by the developed ELISA method. Error bar represents standard deviation with n=3.

考察

SINの体内動態研究に応用可能な簡便で高感度なELISAの開発に成功した.われわれの知る限り,SINに対するELISAの報告はなく,本論文がSINに対するELISA開発の初めての報告となる.

Figure 1に示すように,SINは分子中に1個の水酸基を有する.そこで,このヒドロキシ基に無水コハク酸を反応させカルボキシ基を導入した.このカルボキシ基をN-ヒドロキシサクシイミド法17により,活性エステルに導いた後,キャリアータンパク質であるBSAと結合させることで,SIN–BSA複合体(SIN抗原)を作製した.得られたSIN抗原をマウスに免疫することにより,抗SIN抗体を得た.ランダムに選んだマウス2匹の血液を採取し,ELISA dilution test14により,それぞれの抗体力価を確認した.それぞれ同等な抗体力価であり,1×106倍希釈してもSIN–BSAに対して高い結合活性を示した.マウス2匹から得られた血液の抗体力価が同等であったことから,全マウスから得られた血液は,抗体力価の比較は行わず混合し,抗SIN抗血清とした.われわれはこれまで,多くの低分子薬物に対する特異抗体の作製に成功してきた.1820これらの経験から,SINの分子サイズ(分子量:329.39)から判断して,SINのエピトープは,1価であろうと予測された.1価のエピトープしかなければ,ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体と,ほぼ同等な抗体力価や特異性が得られると考え,抗血清そのものを使用した.また,酵素標識体であるSIN–HRP複合体も,抗原と同様の方法で作製した.

得られた抗SIN抗体とSIN–HRPを用いて,SINのELISAの最適条件を確立した.本ELISAでは,ヒト血清SIN濃度の検出下限が12.1 pg/mL,定量下限が32.9 pg/mLであり,非常に高感度であった.ヒトの関節リウマチ治療において,SINカプセル(60 mg)を反復投与し,そのCminが249.8±61.3 ng/mLであったと報告されている.9したがって,本ELISAは,SINの動態研究に十分に応用可能な感度であることが示唆された.また,既に開発されているLC/MS9のSIN定量法では,ヒト血漿SIN濃度の定量下限が500 pg/mLであり,本ELISAの方が約15倍高感度であった.

抗SIN抗体の特異性を検討した結果,非常に構造が類似したdextromethorphanに対する交差反応性は,0.45%であった.さらに,2-methoxycyclohex-2-enoneには,全く交差反応性は示さなかった.これらの結果は,抗SIN抗体は,少なくともSINのmethoxycyclohexenone部位からその先のd-体モルヒナン骨格の一部までを認識していることを示唆した.また,l-体のモルヒナン骨格を有するdimemorfanに対しては,dextromethorphanよりも交差反応性が減少したことから,抗SIN抗体は,SINのモルヒナン骨格の光学異性体(d-体とl-体)の違いも認識していることが示唆された.さらに,l-体のモルヒナン骨格と4,5-エポキシ環を有するcodeineには,dimemorfanよりも更に交差反応性が減少した.したがって,抗SIN抗体は,SINの特徴的な構造を認識しており,SINに対して十分に特異的であることが示唆された.SINのヒト代謝物については,Yaoらが,SINの代謝産物は,主にヒドロキシル化及びデメチル誘導体が疑わしいと報告している.21さらに,Liらは,ヒト代謝物としてSIN-N-Oxideを同定し,SINの代謝には種差があると推測している.22今後,これらの代謝産物との交差反応性を確認する必要があると思われる.

防已黄耆湯は,肥満や多汗症,むくみ,関節痛に汎用されている医薬品である.SINを含有する防已黄耆湯を服用した後のSINの動態については,ほとんど報告されていない.そこで,開発したELISAがSINの動態研究に応用可能であるかを評価するために,防已黄耆湯及びSINをマウスに経口投与し,経時的にSIN血中濃度を本ELISAで測定した.両投与ともSINは二相性の消失を示し,ほぼ同様な血中濃度推移を示した.この結果は,SINは単独投与においても防已黄耆湯として投与されても同様に吸収されることを示している.また,この消失パターンは,これまでのSIN研究における動態と類似していた.2326このことから,本ELISAはSINの動態研究に応用可能であることが示唆された.またLiuらは,SINを30–300 mg/kgをマウスに経口投与し,慢性予測不能軽度ストレス(chronic unpredictable mild stress: CUMS)誘発性抑うつ様行動を有意に緩和することを報告している.7したがって,本ELISAは,SINのマウスにおけるうつ病研究にも応用可能であることが示唆された.

今回開発したSINに対するELISAは,簡便で高感度であることから,SINの薬物動態研究などを進めるうえで,非常に貴重なツールとなることが期待される.

利益相反

開示すべき利益相反はない.

REFERENCES
 
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