2023 Volume 143 Issue 2 Pages 183-189
Opioid-induced constipation (OIC), an adverse event that occurs due to opioid analgesics, reportedly causes poor quality of life and adherence to opioid analgesics in patients. Therefore, this issue must be addressed appropriately. Naldemedine (NAL), a peripherally-acting μ-opioid receptor antagonist, is currently recommended for treating OIC when other laxatives are ineffective, but there have been no clinical reports of NAL being used prophylactically for OIC. Therefore, we conducted a retrospective survey of hospitalized patients who received NAL as prophylaxis for OIC with strong opioid analgesics to clarify the reality of this situation and to consider points to be taken into account in its clinical implementation. In this study, 61.7% of the subjects had an Eastern Cooperative Oncology Group performance status score of 3 or higher. The rate of addition of new laxatives and increased laxatives during seven days of NAL prophylaxis was 46.8%, and the rate of diarrhea was 6.1%. This study suggests that patients initiated with strong opioid analgesics during hospitalization often presented with poor performance status, and it is important to pay attention to constipation even under NAL prophylaxis. However, the incidence of diarrhea was low, and the safety of NAL prophylaxis was considered to be good.
オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation: OIC)は,オピオイド鎮痛薬開始時の,排便の習慣やパターンの変化で定義され,1)オピオイド鎮痛薬を使用する患者の15–64%に生じるとの報告がある.2–6) OICは患者の生活の質を低下させることや,オピオイド鎮痛薬に対するアドヒアランスを低下させ疼痛管理に悪影響を及ぼすとの報告があり,7)適切に対処を行うことが重要である.
OICに対する第一選択薬としては浸透圧性下剤や大腸刺激性下剤が推奨されている.8,9)またOICに対しては,便秘薬を予防投与することが日常的に行われており,わが国を含めた各種ガイドラインで予防投与が推奨されている.8,9)わが国では現在のところ便秘症の予防として保険適用が認められている薬剤は存在しないが,日本人対象のOIC発現割合を調査した前向き観察研究においても対象者の51%でOICに対する便秘薬の予防投与が行われていたとの報告がある.10)
ナルデメジン(naldemedine: NAL)は2017年よりわが国でも使用可能となった末梢性μオピオイド受容体拮抗薬である.現在,NALは他の下剤を投与しても効果が十分に得られない場合に投与することが推奨されており,8,9)メタアナリシスにおいてもその有効性が示されている.11) NALは複数のランダム化比較試験において,オピオイド鎮痛薬が2週間以上投与され,かつその投与量が安定している患者に対して有効性が示されている.12–14)一方で,NAL開始までのオピオイド鎮痛薬の投与期間が長いこと,オピオイド鎮痛薬の投与開始から8日目以降にNALを開始することが,NAL投与に伴う下痢のリスク因子であるとの報告があり,15–17)オピオイド鎮痛薬開始早期からNALを開始することで,NALの有害事象を軽減できる可能性が示唆されている.このような背景がある中で,オピオイド鎮痛薬投与開始からNAL投与開始までの期間が最も短くなるオピオイド鎮痛薬とNALの同時期の開始,すなわちOICに対するNAL予防投与の詳細な報告は一報のランダム化比較試験のみであり,18)実臨床のデータを示した報告は存在しない.このため実臨床でのOICに対するNAL予防投与の効果,安全性は明らかになっておらず,NAL予防投与下における他の便秘薬の使用状況や有害事象に関する実臨床のデータは臨床現場において有用な情報であると考えられる.
そこで今回,われわれはOICに対するNAL予防投与の実態を明らかにし臨床に実装するうえで考慮していくべき点を検討することを目的とし,その使用実績について後ろ向きに調査を行ったため報告する.
2018年10月1日–2022年2月28日の期間に,神奈川県警友会けいゆう病院にて,緩和ケアチームが介入中に強オピオイド鎮痛薬のOIC予防としてNALが導入された入院患者を対象とした.
OICに対するNAL予防投与は,強オピオイド鎮痛薬開始と同時にNAL 0.2 mg 1日1回の投与開始指示があり,強オピオイド鎮痛薬開始翌日の朝食後までにNALが開始された場合と定義した.
本研究における強オピオイド鎮痛薬はがん疼痛管理に関するWHOのガイドライン19)を参考にモルヒネ,オキシコドン,ヒドロモルフォン,フェンタニルとし,トラマドール,コデインは弱オピオイド鎮痛薬と定義した.
2. 除外基準強オピオイド鎮痛薬開始後7日以内に有害事象以外が原因(内服困難等)で強オピオイド鎮痛薬又はNALが中止となった患者,強オピオイド鎮痛薬又はNALの服薬アドヒアランスが不良であった患者,強オピオイド鎮痛薬開始後7日以内に退院した患者とした.
3. 調査項目3-1. 背景因子年齢,性別,がん種,Eastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS),脳転移の有無,強オピオイド鎮痛薬の種類・開始投与量・7日間の平均投与量(投与量は経口モルヒネ換算),弱オピオイド鎮痛薬からの切り替えの有無,レスキューオピオイド鎮痛薬の事前導入の有無,強オピオイド鎮痛薬開始前の便秘の有無,強オピオイド鎮痛薬開始前の定時便秘薬の有無・種類,強オピオイド鎮痛薬開始前の生化学検査値(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase: AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase: ALT),血清クレアチニン(serum creatinine: S-CRE)),経管栄養剤投与の有無,CYP3A4阻害薬・誘導薬投与の有無・種類,強オピオイド鎮痛薬開始1週間前から開始以降の抗がん剤投与の有無・種類とした.
便秘は日本内科学会における便秘の定義を参考に「3日間以上排便なし」又は「診療録,看護記録,薬剤管理指導記録において便秘,排便困難,硬便,摘便との記載あり」を便秘ありと定義した.
CYP関連薬は医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド20)を参考に,阻害薬は阻害率がmoderate以上の医薬品でアゾール系抗真菌薬,マクロライド系抗菌薬,サキナビル,ネファゾドン,ジルチアゼム,ベラパミルとし,誘導薬はリファンピシン,フェニトイン,カルバマゼピン,エファビレンツ,ボセンタン,ピオグリタゾンを対象とした.
3-2. 評価項目量的データの比較はMann–Whitney U-test,質的データの比較はFisher’s exact testを用いた.有意水準はp<0.05として,統計解析にはR(The R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria)のグラフィカルユーザーインターフェースであるEZR version 1.51を用いた.21) EZRはR及びRコマンダーの機能を拡張した統計ソフトであり,自治医科大学付属さいたま医療センター血液科のホームページで無償配布されている.
4. 倫理的配慮本研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施し,当院の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号S2022002).またNALを予防投与するにあたり,処方医師より保険適用外の用法である旨を患者に説明し,口頭で同意を取得した.
対象患者71名のうち24名を除外し,最終解析対象者は47名であった(Fig. 1).対象者の背景をTable 1に示す.
(n=47) | |
---|---|
Age | 73.5 (39–91) |
Gender (male/female) | 31/16 |
ECOG PS (0/1/2/3/4) | 1/9/8/24/5 |
Cancer type | |
Gastric cancer | 4 |
Colorectal cancer | 5 |
Non-small cell lung cancer | 15 |
Breast cancer | 7 |
Others | 16 |
Brain metastasis (yes/no) | 2/45 |
Induction strong opioid analgesics | |
Morphine sulfate extended-release tablet | 5 |
Oxycodone extended-release tablet | 31 |
Fentanyl patch | 7 |
Hydromorphone extended-release tablet | 3 |
Oxycodone injection | 1 |
Induction dose (mg/d) | 15.0 (7.5–60.0) |
Average dose for seven days (mg/d) | 20.4 (10.0–40.7) |
Opioid analgesic changes (yes/no) | 4/43 |
Switching from weak opioid analgesics (yes/no) | 17/30 |
Rescue opioid analgesics pre-induction (yes/no) | 4/43 |
Prior to initiation of strong opioid analgesics | |
Constipation (yes/no) | 24/23 |
Regular laxative (yes/no) | 19/28 |
Magnesium oxide | 13 |
Sennoside | 1 |
Picosulfate | 1 |
Lubiprostone | 1 |
Combination of two or more agents | 3 |
AST (IU/L) | 25 (6–795) |
ALT (IU/L) | 20 (5–765) |
S-CRE (mg/dL) | 0.7 (0.4–8.6) |
Administration of CYP3A4 inhibitors (yes/no) | 1/46 |
Administration of anticancer agent (yes/no) | 5/42 |
Noted by median (minimum–maximum). Dose is oral morphine equivalent. ECOG PS: Eastern Cooperative Oncology Group performance status, NAL: naldemedine, AST: aspartate aminotransferase, ALT: alanine aminotransferase, S-CRE: serum creatinine.
年齢は中央値73.5歳(範囲:39–91),男女比は2 : 1, ECOG PS 3以上の割合は61.7%であった.がん種は非小細胞肺がんが15名で最も多く,乳がんが7名とついで多かった.脳転移は全体で2名であった.導入強オピオイド鎮痛薬はオキシコドン徐放錠が32名と最も多く,モルヒネ換算の開始投与量は中央値15 mg(範囲:7.5–60)であった.また強オピオイド鎮痛薬の7日間の平均投与量(経口モルヒネ換算)の中央値は20.4 mg/日(範囲:10.0–40.7)であり,観察期間中にオピオイド鎮痛薬の変更があった症例は4名であった.弱オピオイド鎮痛薬からの切り替えは17名,レスキューオピオイド鎮痛薬の事前導入ありは4名であった.強オピオイド鎮痛薬及びNAL開始前の排便状況としては,24名が便秘あり,また19名が定時便秘薬を服用しており,内訳としては酸化マグネシウムの1剤を使用している患者が13名と最も多かった.強オピオイド鎮痛薬開始前の生化学検査値はAST, ALT, S-CREがそれぞれ中央値25 IU/L(範囲:6–795),20 IU/L(範囲:5–765),0.7 mg/dL(範囲:0.4–8.6)であった.CYP3A4誘導薬を服用している患者は0名で,CYP3A4阻害薬を服用していた患者は1名おりエリスロマイシンを定時服用していた.また抗がん剤を投与している患者は5名,その内訳はエヌトレクチニブ1名,ビカルタミド+デガレリクス1名,シスプラチン+放射線療法1名,シスプラチン+フルオロウラシル療法1名,リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン併用(rituximab+cyclophosphamide+doxorubicin+vincristine+prednisolone: R-CHOP)療法1名であった.経管栄養剤を使用している患者は0名であった.
2. 便秘薬の追加・増量状況便秘薬追加・増量割合は46.8%(22名)であった.便秘薬の変更点として最も多かったのが,酸化マグネシウムの追加(9件),ついでセンノシドの追加(6件),ほかにはピコスルファート内用液の追加(4件),炭酸水素ナトリウム坐剤の使用(1件),リナクロチドの追加(1件),酸化マグネシウムの増量(1件)があった.また抗がん剤を投与している患者5名のうち便秘薬の追加・増量は1名で観察期間の2日目からR-CHOP療法が開始されていた.
3. 便秘薬追加・増量に影響を与える因子の探索便秘薬追加・増量あり群,なし群で背景因子について比較を行った結果,両群間において,有意な差を生じた背景因子は存在しなかった(Table 2).
Addition or increase of laxatives (+) (n=22) | Addition or increase of laxatives (−) (n=25) | p | |
---|---|---|---|
Age | 72 (47–88) | 77 (39–91) | 0.67a |
Gender (male/female) | 14/8 | 17/8 | 0.77b |
ECOG PS (0/1/2/3/4) | 1/3/4/12/2 | 0/6/4/12/3 | 0.80b |
Induction dose of strong opioid analgesics (mg/d) | 15 (7.5–30) | 15 (10–60) | 0.70a |
Average dose of strong opioid analgesics (mg/d) | 20.2 (9.4–38.6) | 20.4 (10–40.7) | 0.98a |
Prior to initiation of strong opioid analgesics | |||
AST (IU/L) | 25 (8–795) | 23 (11–269) | 0.58a |
ALT (IU/L) | 21.5 (8–765) | 15 (5–117) | 0.29a |
S-CRE (mg/dL) | 0.6 (0.5–0.9) | 0.8 (0.4–1.0) | 0.26a |
Constipation (yes/no) | 14/8 | 10/15 | 0.15b |
Induction opioid is fentanyl (yes/no) | 2/20 | 5/20 | 0.42b |
Switching from weak opioid analgesics (yes/no) | 8/14 | 9/16 | 1.00b |
Noted by median (minimum–maximum). aMann–Whitney U-test, bFisher’s exact test. Dose is oral morphine equivalent. ECOG PS: Eastern Cooperative Oncology Group performance status, NAL: naldemedine, AST: aspartate aminotransferase, ALT: alanine aminotransferase, S-CRE: serum creatinine.
下痢の発現割合は6.1%(3名)であった.下痢を生じた症例において弱オピオイド鎮痛薬からの切り替えは0名,強オピオイド鎮痛薬開始前に下痢状態の患者はおらず,3名とも酸化マグネシウムを定時服用していた.
下痢を生じた症例の経過について以下に示す.
症例1:52歳女性,左乳がん術後再発(肝転移,骨転移)腹水貯留あり.がん性腹膜炎の影響が疑われる疼痛に対し,オキシコドン徐放錠10 mg 1日2回(1回1錠)及びNALが開始となった.開始後3日目の夜間より下痢症状が出現,酸化マグネシウムが中止,NALは継続となり,5日目には改善傾向となった.
症例2:87歳女性,左腎盂がん(肝転移).肝転移の影響が疑われる疼痛に対し,フェンタニル貼付剤0.5 mg及びNALが開始となった.開始1日目に排便が得られていたため2日目より酸化マグネシウムを服薬したくないと患者本人から希望があり,酸化マグネシウムは一時中止となっていた.同日2日目の夜間より下痢症状が出現し,NALは服薬継続,酸化マグネシウムは中止継続となった.3日目の夕方には症状は改善傾向となり,その後も酸化マグネシウムを自己調節(観察期間中は5日目に1回のみ服薬)し,排便コントロールは良好であった.
症例3:51歳女性,子宮頚がんstageIII B.原発巣に伴う疼痛に対して,オキシコドン徐放錠5 mg 1日2回(1回1錠)及びNALが開始となった.オキシコドン開始後より排便がなかったため,4日目にグリセリン浣腸を使用し排便が得られた.しかしながら残便感を生じていたため,同日夕方にピコスルファート内用液を10滴使用した.その後,同日の夜間から次の日の明け方にかけて下痢が出現したが,5日目の昼には改善傾向となった.
本研究では強オピオイド鎮痛薬の導入時にOICの予防としてNALを投与した後7日間の実態を後ろ向きに調査しその結果を示した.
本研究ではNAL予防投与下において対象症例の46.8%で便秘薬の新規追加・増量が認められた.すなわちこれらの症例は強オピオイド鎮痛薬導入後に便秘が悪化した,又は新たに便秘が発現した可能性を示唆している.NAL予防投与の先行研究(MAGNET study)において,NAL及びオピオイド鎮痛薬開始2週間でのOIC発現割合は33%との報告があり,この研究ではOICの診断にRome IV Criteria1)が採用されている.18)一方,本研究のOICの評価方法はOICの発現割合を示すものではなく,比較することは困難であるが,オピオイド鎮痛薬導入後に便秘が発現又は悪化した割合としては高い傾向を示している.この一因として本研究では入院中に強オピオイド鎮痛薬にて疼痛管理を行った患者を対象としておりperformance status(PS)3以上が61.7%,また年齢は中央値73.5歳であったのに対し,MAGNET studyではPS 0–2が87%,年齢は平均値52歳で,オピオイド鎮痛薬として弱オピオイドが50%含まれていた.活動度の低下や高齢は便秘症のリスク因子とされ,22)また弱オピオイドの一種であるトラマドールはNALがより効果的に作用を発現する因子の一つとして報告されており,23)これらの背景因子の差によって結果に差が生じたことが考えられる.また実臨床でのNAL投与についての後ろ向き調査研究では対象入院患者の43.6%がPS 3以上であったとの報告がある.24)これは入院中にオピオイド鎮痛薬で治療が行われている患者はPSが高い割合が多いという本研究の結果と同様の傾向を示しており,このような患者群は活動性の低下が示唆されることから潜在的に便秘を生じ易い集団であると考えられる.
また本研究では強オピオイド鎮痛薬導入時にNALを予防投与することで6.1%(3名)で下痢が発現したことを示した.NALを便秘時に投与開始した複数の報告において,下痢の発現割合は17.8–31.0%と報告されており,15–17)本研究では発現割合が低い傾向がみられた.この結果の差は,本研究でのNAL投与開始時期が他の先行研究より早いことが要因として考えられる.またMAGNET studyにおける下痢の発現割合は8.1%であり本研究と同程度の結果であった.18) NAL誘発性の下痢は,オピオイド鎮痛薬投与患者において腸管μオピオイド受容体がNALにて拮抗されることでオピオイド鎮痛薬の退薬症状のひとつである下痢が発現すると考えられている.17)したがってこの機序を考慮すると,オピオイドナイーブの患者へのNAL予防投与では下痢は生じないものと考えられる.一方,本研究において下痢を生じた3名では弱オピオイド鎮痛薬からの切り替え症例は0名であり,全例がオピオイドナイーブの患者であった.3例のうち1例(症例3)の下痢は大腸刺激性下剤の影響が疑われるが,他2例はNALとの因果関係が否定できないと考えられる.NAL予防投与における下痢の要因のひとつとして内因性オピオイドの影響が考えられる.疼痛ストレスが生じた際に分泌される内因性オピオイドは,腸管のオピオイド受容体を介し消化管機能を低下させるとの報告がある.25)本研究の対象者は強オピオイド鎮痛薬が導入されているため疼痛ストレスが生じていたことが想定され,内因性オピオイドの影響を受けていた可能性が考えられる.これらを踏まえるとNALと内因性オピオイドが拮抗することでオピオイドの退薬兆候を来し下痢の直接的な誘発要因となった可能性や併用していた酸化マグネシウムの効果を相対的に高め下痢の要因となった可能性が考えられる.一方,本研究において下痢を発現した3例は,下痢症状は一過性でNALは継続可能であり,典型的なNAL誘発性下痢の経過や特徴を理解しておくことで対処可能であると考えられた.
本研究にはいくつか限界点がある.一つ目として単施設の研究であるため症例数が限られていることや,後ろ向き調査であるため便秘薬が追加,あるいは増量されておらず便秘症状を有する場合を評価できていないことが挙げられる.二つ目として本研究では観察期間中の併用薬についての調査が限定的であり,抗コリン薬,消化管運動亢進薬などの影響が考慮できていない点が挙げられる.
本研究を通して,強オピオイド鎮痛薬が導入される入院患者はPS不良例が多く,NAL予防投与下においても開始早期から便秘症状について注意してモニタリングすることが重要と考えられた.またオピオイドナイーブの患者にNAL予防投与を行う際にも有害事象として下痢が発現する可能性があり,他の便秘薬を併用する場合は特に注意が必要と考えられた.一方で下痢の発現割合自体は低く,NALによる治療は継続可能であったことからNAL予防投与の安全性は良好と考えられた.
本研究は記述研究であり既存治療との比較により有効性や安全性について述べることはできないため,今後は更に詳細な研究を行っていく必要があると考えられる.
開示すべき利益相反はない.