抄録
本研究報告は、日本の現代婚礼において一般的に用いられている白無垢の帯結びに注目し、江戸時代から現代に至る流れを整理することを目的とする。江戸時代の武家女性装束および町人女性装束に関する図像資料を整理し、帯の扱われ方を比較した。その結果、武家装束において帯は衣服を固定する機能的要素として位置づけられ、視覚的要素として強調されていなかった。一方、町人文化の成熟とともに、文庫帯結びに代表される造形的な帯結びが発達し、帯は後ろ姿を構成する重要な意匠要素として展開していったことが確認された。
これは、現代白無垢に見られる帯結びでは、文庫結びが「武家」の流れとして定型化しているが、その表象は歴史的女性装束とは必ずしも一致しないことを示す。本稿ではこれら異なる系譜をふまえつつ、図像資料の検討に加え、帯結びに関する実践的な試行を行い、現代白無垢における帯結びの理解の検討を試みる。