山野研究紀要
Online ISSN : 2433-6424
Print ISSN : 0919-6323
Julius Caeasrの劇的アイロニイ
近内 トク子
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キーワード: 共和政, 王政, 陰謀, 暗殺, 復讐
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2000 年 8 巻 p. 11-24

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抄録

演劇の最も味わい深い醍醐味は,アイロニイの掘り下げにあると言っても過言ではない。Shakespeareの場合,殆んどの重要登場人物にその工夫がされている。Shakespeareが四大悲劇の創作へ向う直前に描いたJulius Caesarもその例外ではない。Shakespeareの皮肉な視点は,登場人物を通して,人生の皮肉な巡り合わせや,限りなく自分に皮肉な表現を自ら気付かずに吐くことを可能にしている。これによって,観客や読者は深い感銘を受けるのである。Shakespeareは習作期の歴史劇以来,ずっと運命の激変に見舞れる王侯貴族や庶民を描き続けてきた。そして,出会った資料の中から,歴史や運命の皮肉に遭遇した人物達を好んで描いてきた。Shakespeareの作品は,その言葉の力や人物描写の冴えもさることながら,すでにその初期作品から,皮肉な視点を描き込んでいる。このことが作品を面白くし,一筋縄では解釈できない演劇の醍醐味を与えてくれる源泉になっている。

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© 2000 学校法人山野学苑 山野美容芸術短期大学
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