抄録
本論文は,エイズ相談・検査を利用することへの利益性と障がい性認知についての仮説生成的研究である。自由記述文に対して,エイズ相談・検査の利用経験による差異を検証した。はじめに,58名(男性15 名,女性43 名)の青年を対象としたアンケート調査を行い,自由記述文の分類基準を適用し,基準の適切性について検討した(予備調査)。さらに,A 県内全域の保健所等におけるエイズ相談・検査利用者調査を対象としたアンケート調査を行った(本調査)。郵送によって回収された利用者47 名(男性27 名,女性19 名,不明1 名)の自由記述文に対して,エイズ相談・検査の利益性・障がい性認知の各カテゴリーに分類した。最後に,各カテゴリーに分類された人数の差を,利用経験による差異についてχ2 検定によって検討した。結果,未利用者は,利用者よりも,エイズ相談・検査利用の利益性認知として「専門的援助の獲得」を期待しやすいこと,さらにエイズ相談・検査利用の障がい性認知として「自己開示の負担」を懸念しやすい可能性を示した。この結果に基づいて,エイズ相談・検査利用促進のための予防的介入時における教育的メッセージの内容に言及し,今後の研究の方向性について論じた。