抄録
中国語の疑問詞には、疑問用法と非疑問用法がある。言語によるコミュニケーションにおいて、疑問用法を相手に対する「情報提供の要請」と捉えれば、非疑問用法とは、その反対で「情報提供を要請しない」と考えられる。このような非疑問用法のうち、本稿はとりわけ否定の用法に焦点を当て、疑問詞”什么”(「なに」)による否定を考察した。多数の使用例から”什么”が否定する対象を分類し、”什么”が否定の働きをするためにはどのような前提が必要であるかを明らかにした。そして”什么”による否定が意味論的否定ではなく、語用論的否定として位置づける根拠を示した。