1998 年 32 巻 p. 1-14
"言語芸術"としての文学作品における小説と"映像芸術"の映画やテレビの関係性をめぐって、<ことば>で表現されているものを映像化していく際に生起する問題、特に、同じ原作素材を扱った場合に見られる、それぞれの長所・短所をイメージの観点から考えて、その相違点を単に表現メディアの違いということで片付けないために、両者の中間項的なメディアである、コミックの存在を考慮に入れることで、新たな視点からの考察を行なっている。サブカルチャーとして批判の対象になり、正当な評価を受けることがなく、さらに、擁護者でも、作家や作品に対して、無意識の神聖視や神格化があり、コミックの持つ雰囲気やイメートジを感覚的に論じるので、印象批評や鑑賞文的なものが多く、存在意義を的確に捉える<ことば>や文体、方法意識が、まだ十分に確立されていないので、本稿において、メディアとしてのコミックに内在されている、"言語芸術"的側面と"映像芸術"的側面、それぞれの特性に客観的な限を向けて、一般的には、作者のイメージ表現や読者の感覚的な刺激の限界、想像力の衰退と考えられる問題の生産的な再検討と、今後のコミック論展開のための基礎固めを試みた。