山口医学
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総説
ストレスと予防
―女性の社会参加と健康―
岩本 美江子
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2004 年 53 巻 6 号 p. 269-277

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抄録

騒音・振動などの物理的ストレスによる視床下部下垂体副腎系および自律神経系への影響に関する一連の研究の中で, ラットと同様人においてもストレス因子が重なるとその影響は大きくなることを認めた. 働く女性に対するストレスの影響を考える場合も, 他の負荷との複合影響を考慮することが必要である.
男女雇用機会均等法の施行, 労働基準法の改正以来, 働く女性の増加, 勤続年数の長期化とともに就業分野も拡大してきた. しかし仕事と家事・育児・介護の両立, 男性と同様の労働作業に伴った種々の健康問題もあり, 女性の生涯を通じた新たな勤労女性のヘルスケアーが必要になる. これまでの研究の延長として, 女性の労働環境と健康について調査実験研究を行った.
特に農作業従事女性の作業, ストレス負荷について, 筋電図・心電図測定, 疲労調査等からその影響を解析した. 特に低温作業, 屈み作業は作業環境, 作業形態の改善により生体負荷が軽減できること, 重量物運搬作業は特に中高年女性への影響が大きいことなどが分かった. また柑橘類栽培従事女性における疲労調査より, 仕事の優先度や仕事の要求度が高ければ労働負担感は高くなり, サポートが少なければ労働人間関係に対する不満が高くなって労働負担感が増え, 身体的疲労や精神的疲労が高まるという関連を認めた. また看護師の交替勤務による生理学的影響をみると, 休日, 日勤, 夜勤ともに妊婦看護師の自律神経系への影響が強いが, 特に妊婦看護師の夜勤における尿中ノルエピネフリンの増加が認められ, 夜勤により自律神経系の緊張が高まることが考えられる.
各種職場ストレス因子による疾病発生を予防するために, 仕事の要求度―自由裁量性―社会支援 (demand-control-support) モデルの重要性を考察する.

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© 2004 山口大学医学会
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