山口医学
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症例報告
大腸内視鏡検査後7日目に発症した汎発性腹膜炎の1例
橋本 憲輝近藤 浩史衛藤 隆一小佐々 博明清水 良一
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2009 年 58 巻 6 号 p. 261-265

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抄録

症例は61歳,女性.2008年12月,当院内科にて検診目的で下部消化管内視鏡検査(colonoscopy,以下CS)が施行された.3日後に軽度の嘔気・下腹部違和感を認めたが,経過観察されていた.7日後,腹痛が増悪したため,同科を再診した.腹部骨盤単純CT検査により穿孔性腹膜炎と診断され,加療目的で当科へ紹介された.当科受診時,腹部にやや膨満があり,全体的に圧痛,反跳痛を認めた.腹部骨盤単純CT検査では腹腔内に遊離ガスが散見され,腹水も認めた.結腸穿孔ならびに急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急開腹術を施行した.手術所見では,直腸RS部近傍のS状結腸に腸間膜経由での穿孔を認め,腸間膜内には多量の便塊,便汁が貯留していた.穿孔部より口側でS状結腸と骨盤腔内左卵巣近傍の壁側腹膜との間で強固な線維性の癒着を認めた.術式は急性汎発性腹膜炎手術,S状結腸切除術,人工肛門造設術(ハルトマン手術)を施行した.術直後から急性呼吸窮迫症候群を発症したが,集中治療により軽快した.術後第52病日に独歩にて自宅退院された.2009年3月当科にて人工肛門閉鎖術を施行した.CS施行後,汎発性腹膜炎の発症が7日目である稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 山口大学医学会
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