山口医学
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原著
ラットくも膜下出血モデルにおける脳血管攣縮のメカニズム-コレステロールによる制御機構-
吉野 弘子
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2014 年 63 巻 2 号 p. 123-131

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抄録
背景:これまで,sphingosylphosphorylcholine-Rho-kinase系が引き起こす血管攣縮がコレステロールによって制御されることが報告されている.コレステロールは細胞膜上に存在するラフトやカベオラと呼ばれる膜ドメイン構造に存在し,細胞内情報伝達に関与している.本研究では,くも膜下出血モデル(SAH model)が引き起こす脳血管攣縮におけるコレステロールおよびラフト・カベオラの関与を検討した.方法:SDラットを正常群(餌:F1飼料),高コレステロール食群(餌:F1飼料+1%コレステロール+1%コール酸),β-サイクロデキストリン(CD)群(高コレステロール食に5%β-CD(コレステロール除去剤)を添加)に分けた.各群でSAH modelを作成し,cranial window法を用いて脳底動脈径を測定した.ガスクロマトグラフ法を用いて各群の内頚動脈の総コレステロール濃度を測定した.Flotillin-1(ラフトに特異的に発現している蛋白質)とCaveolin-1(カベオラに特異的に発現している蛋白質)を認識する抗体を用いたwestern blottingにて各群の内頚動脈におけるラフトとカベオラの形成を確認した.結果:高コレステロール食群では正常群と比較して内頚動脈内における総コレステロール濃度が有意に高く,SAH modelが引き起こす脳血管攣縮の著明な増強が認められた.β-CD群では,高コレステロール食による内頚動脈内のコレステロールレベルの上昇と脳血管攣縮の増強が抑制された.高コレステロール食群では血管平滑筋におけるFlotillin-1とCaveolin-1の蛋白質レベルが有意に上昇し,β-CD群ではそれらが抑制された.考察:SAHで再現される脳血管攣縮は血管平滑筋内の総コレステロール濃度の上昇やラフト・カベオラの形成に伴い増強される可能性が示唆された.
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© 2014 山口大学医学会
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