山口医学
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症例報告
当院で経験した十二指腸静脈瘤破裂の4症例
佐々木 嶺松田 崇史相部 祐希中島 崇雄白築 祥吾岩本 拓也石川 剛寺井 崇二坂井田 功
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2015 年 64 巻 2 号 p. 145-152

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抄録

十二指腸静脈瘤(Duodenal varices:DV)は,その豊富な血流のために一旦出血を来すと止血処置が困難で致死的状況となることがある.その治療方法や適応に関しては未だ一定の見解が得られていない.今回,我々はDV破裂の4症例を経験したので,当院のDV破裂に対する治療のフローチャートと文献的考察を加えて報告する.【症例1】C型肝硬変,胃癌術後の80歳代男性.黒色便精査後に十二指腸輸入脚深部のDV破裂の診断に至った.同病変に対して,シングルバルーン内視鏡を用いて67% N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による内視鏡的硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy with Cyanoacrylate:CA-EIS)を施行し止血を得た.【症例2】原発性胆汁性肝硬変の40歳代女性.貧血と黒色便精査のため上部消化管内視鏡検査を施行した.十二指腸水平脚に結節状のDVを認め,同部位より湧出性出血が認められたためCA-EISを施行し止血を得た.【症例3】B型肝硬変の50歳代男性.下血精査のため施行した腹部血管造影下CTと上部消化管内視鏡検査でDV破裂と診断した.内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic variceal ligation:EVL)で緊急止血を行い,根治目的でバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(Balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)を施行した.【症例4】アルコール性肝硬変の60歳代男性.黒色便精査の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に連珠状DVが認められた.CA-EIS後も滲出性出血が続き,EVLやアルゴンプラズマ凝固を追加し止血に至った.【結語】我々が経験した十二指腸静脈瘤破裂の4症例を報告した.食道胃静脈瘤の治療普及に伴って,今後十二指腸静脈瘤をはじめとした異所性静脈瘤が増加してくることが予想され,症例の蓄積と治療指針の確立が必要と考えられる.

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© 2015 山口大学医学会
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