山口医学
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原著
ペリネイタル・ロスを経験した父親の適応プロセスとケア・ニーズ
河本 恵理田中 満由美
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2018 年 67 巻 2 号 p. 79-90

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抄録

本研究の目的はペリネイタル・ロスを経験した父親の適応プロセスとケア・ニーズを明らかにすることである.妻が死産を経験した父親12名に半構成的面接を実施した.適応プロセスの分析は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いた.また,父親のケア・ニーズ分析に関しては,意味内容の類似性に従ってカテゴリー分類した.調査期間は2015年6月12日から2016年11月14日であった.ペリネイタル・ロスを経験した父親の適応プロセスについてM-GTAを用いて分析した結果,6つのカテゴリーと38概念が抽出された.児の死に直面した父親は,《予期せぬ児の死への衝撃》や《妻との心理的距離》を感じていた.自分なりに《我が子を失った悲しみの整理》をつけながら《手探りで妻を支える役割の遂行》をしていた.また,父親役割の遂行を通して《児の父親としての意識の芽生え》がみられていた.父親自身の気持ちの整理がつき,妻の精神的安定を実感したことで,《新たな家族の形の構築》を図り,日常生活に適応していた.また,ペリネイタル・ロスを経験した父親のケア・ニーズには,《父親自身の悲しみへのケア》《父親であることを実感できるケア》《妻を支えるためのケア》《妊娠・出産についての情報提供》のニーズがあった.ペリネイタル・ロスを経験した父親に対して,看護職は父親の悲嘆のプロセスを理解し,父親に対して共感的に寄り添う姿勢や感情の表出ができるように関わることが必要であると示唆された.また,父親が夫として妻を支える役割を果たすことができるよう,母親の悲嘆のプロセスや妻を支援する方法について伝える必要性が示唆された.さらに,父親に対して,希望を引き出しながら児との面会を支援するなど児の存在や父親であることを実感できるような関わりが必要であると示唆された.

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© 2018 山口大学医学会
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