山口医学
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原著
ペリネイタル・ロスを経験した父親へのケアの実態とペリネイタル・ロスを経験した父親へのケアに対する助産師の学習ニーズ
河本 恵理田中 満由美
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2018 年 67 巻 2 号 p. 91-102

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抄録

本研究の目的は,ペリネイタル・ロスを経験した父親へのケアの実態及びペリネイタル・ロスを経験した父親へのケアに対する助産師の学習ニーズを明らかにすることである.中国地方及び九州地方の総合病院の産科に勤務し,ペリネイタル・ロスのケア経験がある助産師318名に無記名自記式質問紙調査を実施し,郵送法で回収した.分析対象は197名であった.ペリネイタル・ロスを経験した父親へのケア29項目において,実施頻度及び実施自立度が3割未満であった項目は「カウンセラーを紹介する」「遺伝相談に関する情報を提供する」「退院後に相談できる窓口を紹介する」「退院後,継続的に関わる」「セルフ・ヘルプグループを紹介する」の5項目であった.また,「父親の悲嘆プロセスを説明する」は実施率6割未満,自立してできる助産師も5割にとどまっていた.妻を支えるためのケアについては高い実施率であったが,いつも実施しているのは2割であり,恒常的なケアとして実践されている割合は低かった.9割の助産師が父親へのケアに困難感を抱いていたが,ほとんどの助産師が父親へのケアが必要であると認識していた.また,助産師の96%が父親へのケアに対する学習を希望しており,父親の悲嘆プロセスや父親が望むケア等ペリネイタル・ロスを経験した父親の理解につながる知識の他に,具体的な関わり方等ケア技術に関する学習ニーズがあった.以上のことから,助産師に対して,父親の悲嘆のプロセスや父親のケア・ニーズについて教育する必要性が示唆された.また,妻を支えるためのケアを実践できるような支援が必要であると示唆された.さらに,父親への関わり方等ケア技術向上に向けた支援が必要であると示唆された.ペリネイタル・ロスを経験した父親へのケアに対する助産師への教育の充実が望まれる.

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© 2018 山口大学医学会
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