2020 年 69 巻 1 号 p. 25-38
本研究の目的は,市町村保健師が地域の健康課題を発見する実践技術と関連要因を明らかにすることである.A県内19市町村の統括保健師らに行った半構造化面接の逐語録から抽出した実践技術内容と行政施策化能力評価尺度を質問項目として用いて,2017年7~9月にA県内19市町村の常勤保健師398名に質問紙調査を行った.得られたデータについて因子分析を行い,行政施策化能力評価尺度との関連をPearson相関係数で確認し,重回帰分析,階層的重回帰分析で関連要因を確認した.その結果,実践技術は,【地域で解決すべき健康課題を意識して住民の生活背景に焦点を合わせる】,【データや生活状況から健康課題を束ねる】,【地域の健康課題を解決することに責任を持つ】,【健康課題を住民や関係者と共有する関係を構築する】の4因子30項目で構成された.
【地域で解決すべき健康課題を意識して住民の生活背景に焦点を合わせる】は,地域で解決すべき健康課題を意識して,住民に着目し注意深くアセスメントする技術であり,経験年数や役職,職場内教育との関連がみられ,経験や教育の積み重ねにより習得されることが示唆された.【データや住民の生活状況から健康課題を束ねる】は,分類・要約・比較・推論の分析過程を踏まえた地域診断や個の課題の共通点を束ねる視点であり,経験年数,役職や行政施策化能力との関連も認められ,施策化に繋がる技術であった.【地域の健康課題を解決することに責任を持つ】は,看護実践の倫理規準に一致する技術であり,唯一経験年数との関連がみられず,公衆衛生看護倫理について教育する重要性も示唆された.【健康課題を住民や関係者と共有する関係を構築する】は,課題解決も視野に入れた継続的な関係性を構築する技術であり,経験年数,役職との関連がみられた.4つの実践技術は,全て行政施策化能力評価尺度との関連が認められ,実践技術が地域診断サイクルに影響することが示唆された.