山口医学
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ミニ・レビューー中村賞受賞者-
猫ひっかき病抗体陰性患者からのBartonella henselae DNAの検出
柳原 正志
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2020 年 69 巻 1 号 p. 5-11

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抄録

猫ひっかき病(Cat-scratch disease, CSD)はBartonella henselaeによって引き起こされる人獣共通感染症である.B. henselaeは患者からの分離培養が極めて困難であるため,現在のCSDの検査診断は間接蛍光抗体(Indirect fluorescent antibody, IFA)法による抗B. henselae抗体価測定(血清学的検査)が標準法である.リンパ節や膿などが得られる場合にはPCR検査(B. henselae DNAの検出)も行われる.患者末梢血からB. henselae DNAを検出した報告が散見されており,リンパ節生検が適応とならない場合や血清学的検査結果が曖昧な場合には末梢血PCR検査が有用と考えられる.しかし,血清学的検査と末梢血PCR検査の併用の有用性に関する報告はない.そこで,我々はB. henselae DNAを高感度に検出するreal-time PCR法を開発し,CSD疑い患者80名(小児73例,成人7例)を対象に,非侵襲的なCSD検査診断における血清学的検査(IFA法)と末梢血PCR検査の併用の有用性を検討した.その結果,17例(21.3%)がIFA法陽性,11例(13.8%)が末梢血PCR検査陽性となり,両者が陽性となったのは6例であった.末梢血PCR検査は単独では感度が十分ではなかったものの,IFA法陰性の7.9%(5/63)の末梢血からB. henselae DNAを検出した.このため,IFA法と末梢血PCR検査の併用によってCSD診断率はIFA法単独の21.3%(17/80)から27.5%(22/80)に向上した.IFA法陰性末梢血PCR検査陽性の5例中4例は発熱とリンパ節腫脹を伴う定型例で,1例はリンパ節腫脹を伴わない不明熱(非定型例)であった.末梢血PCR検査が陽性となる時期は未だ不明であるが,菌血症や菌の分解産物の血中への流入の可能性があるため,発症後の日数に関係なく,積極的に末梢血PCR検査を実施すべきである.以上より,CSD抗体陰性患者の末梢血からB. henselae DNAを検出できることが示された.非侵襲的なCSDの検査診断の新たな標準法として,「血清学的検査と末梢血PCR検査の併用」が推奨される.

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