山口医学
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原著
高感度DNAメチル化解析技術を用いたリキッドバイオプシーによる肝細胞癌スクリーニング:メチル化SSTとメチル化SEPT9の診断性能比較
山﨑 綾乃末廣 寛星田 朋美佐伯 一成山内(厚東) 由里佳松本 俊彦高見 太郎坂井田 功山﨑 隆弘
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2021 年 70 巻 3 号 p. 89-98

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抄録

【研究背景】肝細胞癌の腫瘍マーカーalpha-fetoprotein(AFP)は早期肝細胞癌に対する検査感度が低いため,新たな検査の開発が必要である.この問題を解決する方法としてリキッドバイオプシーが挙げられる.我々はメチル化Septin9(SEPT9)をターゲットとするリキッドバイオプシーとAFP検査が早期肝細胞癌の診断に有用であることを報告している.一方,Somatostatin(SST)の高度メチル化が肝細胞癌組織で認められており,肝細胞癌のバイオマーカーと考えられている.上述のSEPT9と同様,メチル化SSTをターゲットとするリキッドバイオプシーとAFPの併用検査が早期肝細胞癌の診断に有用と考えられるが,この点については未だ検証されていない.そこで,本研究ではメチル化SSTとAFP併用検査による肝細胞癌診断性能を検証した.また,メチル化SEPT9とAFPの併用検査との肝細胞診断性能比較を行った.

【方法・材料】健常者群25人,肝細胞癌を合併していない慢性肝疾患群15人,肝細胞癌群38人(うち早期肝細胞癌19人)を対象とした.被検者の血清からDNAを抽出後,3種類のメチル化感受性制限酵素を用いてDNAを処理し,Droplet digital PCRによりメチル化SEPT9及びメチル化SSTのコピー数を測定した.

【結果】非肝細胞癌群(健常者群+慢性肝疾患群)と肝細胞癌群の2群でReceiver operating characteristic曲線解析を行いArea under the curve(AUC)値を比較したところ,メチル化SEPT9単独検査とAFP単独検査ではAUCはいずれも0.73であり,メチル化SST単独検査での0.59よりも高かった.早期肝細胞癌群についても同様で,メチル化SEPT9単独とAFP単独のAUCはいずれも0.70であり,メチル化SSTでの0.61よりも高かった.メチル化SEPT9とAFPの併用検査とメチル化SSTとAFPの併用検査については,陰性的中率は両者でほぼ同等であったが(全ステージ肝細胞癌75.0% vs. 72.2%,早期肝細胞癌82.5% vs. 83.9%),陽性的中率はメチル化SEPT9とAFP併用検査の方が優れていた(全ステージ肝細胞癌79.4% vs. 66.7%,早期肝細胞癌63.2% vs. 50.0%).

【結論】肝細胞癌スクリーニングにおいて,AFPとの併用バイオマーカーとしてはメチル化SSTよりメチル化SEPT9の方が有用である可能性が高かった.

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