山口医学
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ミニ・レビューー小西賞受賞者-
体組成評価は進行肝細胞癌治療における予後予測の新規バイオマーカーとなる
佐伯 一成
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2021 年 70 巻 4 号 p. 157-164

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抄録

 近年,進行肝細胞癌(進行肝癌)に対する治療法の開発により多くの選択肢が登場し,予後向上のためには逐次的に多数の治療薬を使用していくことが推奨されている.しかしながら,各治療法に対する有効なバイオマーカーは存在せず,予後・効果予測が可能なバイオマーカーが望まれる.そのような背景から,我々は体組成に注目し予後予測バイオマーカーの可能性を検討した.体組成は肝癌の治療前CTにより後ろ向きに評価可能なことから,追加検査の必要がなく簡便に評価が可能である.我々は,分子標的薬ソラフェニブ治療を行った進行肝癌を対象に,体組成(骨格筋面積と内臓脂肪面積)を測定し,予後予測因子を解析した.その結果,非骨格筋萎縮と内臓脂肪蓄積が独立した予後良好因子であることを見出した.一方,ソラフェニブと同様に進行肝癌治療の一つである肝動注化学療法(HAIC)では体組成は予後との関連は認めず,体組成評価により進行肝癌治療でのソラフェニブとHAICとの治療の棲み分けが可能となると考えた.さらに,多施設共同研究において骨格筋量がソラフェニブ治療増悪後の予後延長に重要な役割を担っていることを明らかにした.以上より,骨格筋量は肝癌に対する逐次治療の遂行における重要な因子のひとつと考える.

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© 2021 山口大学医学会
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