山口医学
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COVID-19の影響下でオンラインを利用した公衆衛生看護学実習の成果と課題
磯村 聰子守田 孝恵斎藤 美矢子村上 祐里香
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2022 年 71 巻 1 号 p. 5-14

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抄録

 COVID-19の影響下でオンラインを利用した公衆衛生看護学実習の成果および課題を明らかにすることを研究目的とし,2018年~2020年に公衆衛生看護学実習を履修したA大学4年次の学生を対象に無記名自記式調査を実施した.調査項目は,保健師就職希望等の基本属性,保健師活動への印象,公衆衛生看護学実習に対する学習意欲,学習目標項目で構成した.3週間の実習をオンラインで実施もしくは臨地実習1週間,オンライン実習を2週間実施した2020年とそれ以前の実習を比較した.オンライン実習では教員が,公衆衛生看護活動の実際を実践的に解説して教授した.有効回答217において,公衆衛生看護学実習に対する学習意欲9項目中「公衆衛生看護学実習で保健師から十分関わってもらえた」という主観は,2020年は2018年・2019年に比較して有意に低かった.2020年の学習到達得点上位には,学習目標「1.公衆衛生看護活動のプロセス」「2.保健所と市町村の役割と機能」の項目が複数含まれた.オンライン実習や課題学習などにおいて,地域の概況の把握,地域診断を含めた公衆衛生看護活動を展開図に記述させること,保健所と市町村の役割機能を学ぶことは一定の成果が示唆された.しかし,2018年,2019年は,53項目中94.3%の項目で学習到達度が8割以上であったのに比較して,2020年は32.1%にとどまった.また学習到達度が6割未満であったのは2018年,2019年は0項目であったが2020年は15.1%あった.2020年に学習到達度が低かった,家庭訪問,保健事業及び保健活動,健康相談・健康教育,地域組織・グループ育成の技術については,卒後に公衆衛生看護実践力として獲得していけるよう支援する必要がある.この実践力の向上のために,看護基礎教育と卒後教育の有機的な連携のもと,保健師新任期教育の体制のあり方を確立していくことが今後の課題である.

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© 2022 山口大学医学会
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