日本の再生医療は,過去10年に渡り,臨床研究や商業化の動きが活発化し,大きな成長を遂げてきた.今後さらに成長するには,市場の形成や再生医療等製品の低コスト化・品質の安定化が求められる.そして,それらを達成するには細胞を製造する人材の育成や製造技術基盤の確立が必要である.そこで本稿では,再生医療等製品の製造工程を概説し,製造工程のうち上流工程にあたる細胞の拡大培養技術に焦点をあて,代表的な培養技術(平面培養法,攪拌型バイオリアクター,固定床バイオリアクター)の特徴を紹介する.また,研究開発の段階において,複数の拡大培養技術の中から一つを選択し,開発方針を決定することは重要な課題である.そこで,各培養技術を一連の製造工程に当てはめ,シミュレーションを行い,製造原価を算出した.導いた結果をもとに,細胞が製品となる製造に適した上流工程について考察した.