抄録
無水銀の紫外線光源として注目される紫外発光ダイオード(UV-LED)を水産養殖の水処理に応用する可能性を検討するため、水産業において重要な処理対象である病原細菌の腸炎ビブリオVibrio parahaemolyticusを人工海水またはリン酸緩衝液に分散し、発光ピーク波長265、280、300 nmのUV-LED照射による不活化効果を培養法で評価した。その結果、紫外線量あたりの不活化率を示す不活化速度定数kの値は、265、280、300 nmのUV-LEDの順に、人工海水中で0.38、0.24、0.02 cm2/mJ、リン酸緩衝液中で0.40、0.28、0.02 cm2/mJとなり、いずれの溶液でも265 nmのUV-LEDが最も高い不活化効率を示した。一方、3log不活化に要する消費電力量を試算したところ、265、280、300 nmのUV-LED の順に、人工海水中で0.92、0.42、4.15 kW/m3、リン酸緩衝液中で0.80、0.41、4.71 kW/m3となり、いずれの溶液でも280 nmのUV-LEDの電力効率が最も高かった。本研究により、UV-LEDの水産養殖への応用に関する基礎的知見が得られた。