2023 年 72 巻 4 号 p. 171-182
意思疎通困難な状態にある高齢者の日常生活における意思のくみ取りに関する看護文献をレビューし,看護師が高齢者の意思をくみ取る際の手がかりや方法,意思の内容,基盤となる看護観について明らかにした.キーワード検索から,検索基準を満たす論文を絞り込んだ結果,国内論文15編,国外論文1編,計16編の論文が対象となった.国内外の論文とも2000年以降に多くみられ,研究デザイン別に分類すると,事例研究6編(37.5%),質的記述的研究5編(31.25%),介入・準実験的研究5編(31.25%)であった.
Berelsonの内容分析の手法を参考にして,4つの観点から分析した結果,「1.看護師が高齢者の意思をくみ取る際に手がかりとしているもの」では,[顔の動き],[身体の動き],[生体・生活反応],[反応や状態の変化],[生活様式や人となりの情報]の5カテゴリが,「2.高齢者の意思をくみ取るための方法」では,[時間を共有して観察],[意図的な言語的・非言語的コミュニケーション],[身体的刺激],[選択の提示と支援],[家族を含むチームでの協働],[意思の推測],[意思の確認],[意思とケア方法の探索]の8カテゴリが,「3.看護師によってくみ取られる高齢者の意思の内容」では,[感情],[要望],[体調],[他者や状況に対する認識・関心]の4カテゴリが,「4.基盤となっている看護観」では,[高齢者を尊重する思い],[看護師自身の能力を高める],[援助する喜び]の3カテゴリが生成された.