山口医学
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原著
山口県内の行政機関および医療機関における乳児の安全な睡眠環境の啓発に関する実態調査
姫宮 彩子竹谷 歩美中川 碧酒井 大樹二宮 理紗重本 亜純髙瀬 泉
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キーワード: SUID, 睡眠環境, 窒息, SIDS, 予防
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2023 年 72 巻 4 号 p. 159-170

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抄録

 睡眠に関連する乳幼児の予期せぬ死亡(Sudden Unexpected Infant Death:SUID)において,不慮の窒息や乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:SIDS)の予防のため,適切な睡眠環境の啓発が行われてきたが,これらは国内外で依然として発生している.今回,山口県内の子ども支援関連の行政機関(以下,行政)の19施設,妊婦健診を行う産婦人科の43施設および小児科の80施設を対象に,乳児の安全な睡眠環境の啓発の現状について自記式質問紙調査を行った.調査内容は,乳児の安全な睡眠環境に関する啓発の有無・手段・内容・関わる職種,市川らが先行文献にて示した“乳児期の睡眠環境の理想像”の見聞の有無等である.調査の結果,行政の12施設,産婦人科の24施設,小児科の49施設から回答を得,このうち啓発は行政のすべて,産婦人科の54.0%,小児科の59.2%で行われていた.手段では,ポスターの掲示やチラシ等の設置・配布,口頭での説明が多かった.内容は,SIDSが多く,睡眠環境の詳細については機関や手段により実施に差がみられた.行政では保健師,産婦人科では助産師,小児科では医師や看護師が主に関わっていた.“乳児期の睡眠環境の理想像”の見聞について,あると回答したのは,行政の58.3%,産婦人科の29.2%,小児科の36.7%にとどまった.本研究では,啓発が実施されていない医療機関が少なくないこと,その背景として,SUIDが積極的に啓発すべき問題と認識されていない可能性,SUIDの概念や安全な睡眠環境が十分周知されていない可能性が示唆された.SUIDの予防対策や啓発には,子どもに関わる機関全体が協同することが必要と考える.このために,法医学分野も積極的に関与し,死亡事故の現状や安全な睡眠環境の周知,啓発の実践例の共有に努めていきたい.

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© 2023 山口大学医学会
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