山口医学
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症例報告
脊髄腫瘍摘出術後に著明な胸水貯留が判明した肺癌の1例
福田 志朗三宅 奈苗又吉 宏昭
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2025 年 74 巻 3 号 p. 157-161

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抄録
 脊髄腫瘍摘出術直後の胸部単純X線写真(XP)で著明な胸水貯留が判明した肺癌の1例を経験した.65歳女性,咳嗽や喀痰の症状を自覚し近医で胸部コンピュータ断層撮影(CT)検査を施行したところ,胸椎レベルの脊髄腫瘍を指摘された.その後に右下肢のしびれを自覚し,当院へ紹介され手術が計画された.既往歴として,6年前から気管支喘息と診断され,吸入ステロイドで軽快していたため,しばらく治療を中止していたが,入院の2週間前から咳嗽に対して治療が再開されていた.当院での術前の胸部CT検査で左肺尖部に肺癌を疑わせる結節影が見られたが,呼吸機能検査は正常範囲であったため,脊髄腫瘍手術が優先された.入院後の血液型検査で不規則抗体陽性が判明し,手術は2週間延期された.術中は運動誘発電位モニター検査が予定されていたため,全静脈麻酔(TIVA)による全身麻酔を施行した.麻酔中は経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2)といった呼吸に関する持続モニターでの異常は見られず,問題なく手術は終了した.全身麻酔からの覚醒は速やかであり,気管チューブを抜去した後も呼吸音および胸郭の動きに明らかな異常はなかった.しかし覚醒直後の酸素化は酸素マスク6l/分でSpO2が93~95%であり,予定入室であった集中治療室(ICU)でも92~93%と改善しなかった.術直後のICUにおける胸部正面XPで左肺野全体に明らかな透過性の低下があり,直ちにCT検査を行ったところ著明な左胸水貯留があった.術後に気管支鏡検査および胸腔穿刺を行い,組織生検および胸水採取の結果,肺腺癌と診断された.手術で摘出された腫瘍の病理組織最終診断は髄膜腫であった.本症例のように術前に肺癌を疑う所見を認め,術直後の酸素化不良や胸部XPの異常が見られた場合,肺癌に起因する呼吸不全も念頭に置く必要がある.
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© 2025 山口大学医学会
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