山口医学
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症例報告
G-CSF産生食道癌肉腫の1手術例
末田 侑香原田 栄二郎河内 隆将藤田 顕弘竹本 圭宏濱野 公一
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2025 年 74 巻 3 号 p. 151-156

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抄録
 顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)産生食道癌肉腫の1切除例を経験したので報告する.患者は59歳女性で嚥下障害を主訴に近医を受診し,食道腫瘍を指摘されて当科紹介となった.紹介前から感染所見の乏しいCRP高値と発熱を認め,血中G-CSF値は52.2pg/mlと上昇しG-CSF産生食道癌が疑われた.生検で扁平上皮癌,cStageⅡの診断となったが,異化亢進状態での術前化学療法(NAC)はリスクが高いと判断し,診断的治療として食道亜全摘術(2領域郭清)および胸骨後経路での胃管再建を先行した.術後病理診断では腫瘤部分に肉腫成分,腫瘤に連続した上皮下に中分化な扁平上皮癌成分を認め,抗G-CSF抗体免疫染色陽性でありG-CSF産生食道癌肉腫の診断に至った.術後は白血球数,CRP,血中G-CSF値は低下傾向で,出血,乳糜胸の合併症を認めたが術後52日目に自宅退院となった.術後補助療法の施行なく術後7年3ヵ月経過するが無再発生存中である.食道癌肉腫は本症例のように内視鏡生検で扁平上皮癌と診断されることが多いが,本症例で仮に術前から癌肉腫の可能性を念頭に置いていたとしても,当時のNACレジメンであるfluorouracil+cisplatin(FP)療法はほとんど有効性の報告がなく手術先行が望ましい状況であったと考える.現在は食道癌のNACとしてDocetaxel+cisplatin+ fluorouracil(DCF)療法が適応となり当時とは有効性が異なる可能性があるが,経過からG-CSF産生腫瘍も疑う場合,NACには骨髄抑制等高いリスクが伴うため,G-CSF産生の食道癌肉腫へのNACの施行は慎重に考慮すべきと思われる.またG-CSF産生食道癌肉腫は一般に予後不良とされているが本症例では補助療法無しで術後長期生存を得られている.分化度の高いG-CSF産生食道癌肉腫は必ずしも予後不良でない可能性があり,分化度と予後の相関性を明らかにするためにも,さらなる症例集積が望まれる.
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