2005 年 11 巻 1 号 p. 97-101
腰痛に対する物理療法(温熱療法と牽引療法)の理論と実際について述べた.温熱療法と牽引療法は,ともに効果発現機序の理論を裏づける研究が十分とは言えない.また,それらの有効性に関しても,現時点では「腰痛に対して,温熱療法や牽引療法が有効である」という科学的根拠はないと言わざるを得ない.腰部脊柱起立筋の筋硬度を指標として温熱療法と牽引療法の効果を腹臥位と前屈位で検討した.その結果,施行前の値に比して,牽引後は腹臥位での筋硬度が明らかに減少していた.また,ホットパック後は前屈位での筋硬度が明らかに減少していた.脊柱起立筋の筋硬度の解析は,温熱療法と牽引療法の治療効果発現の機序の解明に役立つ可能性があると思われた.今後,各種物理療法の組織に与える影響や鎮痛効果の作用機序の解明とともに,適切なrandomized controlled trial(RCT)を行って,科学的に物理療法の有効性を証明する必要がある.