抄録
ジクロフェナックNa外皮製剤を用いて,本剤の腰部での組織移行性を調査した.腰部脊柱管狭窄症に対する手術患者10例を対象とした.手術前に腰背部の予定手術部位に2枚貼付し,手術にて皮下脂肪,筋,血漿を採取した.検体は採取後-20℃以下に冷凍保存し,検査機関に郵送し測定を依頼した.ジクロフェナックNa濃度は,脂肪で平均14.5 ng/g,筋8.4 ng/g,血漿1.6 ng/gであった.皮膚に薬物を貼付した場合,強力なバリアである皮膚の角質層を通過すると,受動拡散により筋,脂肪に移行する.この経路は血液循環を介さないため,血中濃度を上昇させず,全身的副作用を軽減させうる.腰部に外皮剤を使用して組織移行性を調査した研究としては初めてのものであるが,脂肪,筋ともに組織内濃度は血中濃度より高濃度であることが判明した.