日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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13 巻, 1 号
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巻頭言
特別企画●腰痛の病態解明
  • 高橋 弦, 大鳥 精司, 青木 保親, 高橋 和久
    2007 年13 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板の感覚神経に関する基礎研究の成果について解説し,椎間板性腰痛の臨床を考察した.肉眼解剖学的には椎間板に枝を出す末梢神経は洞椎骨神経,灰白交通枝,交感神経幹である.組織学的・免疫組織化学的・電気生理学的に線維輪最外層に侵害受容線維が存在し,椎間板病変が急性痛の原因となることが証明された.感覚線維が由来する後根神経節は,椎間板背側部では当該分節,腹側部ではL2,をそれぞれ中心とし,支配レベルは腹側部で7分節,背側部で9分節に及ぶ.本構造は神経ブロックや手術に際しては考慮すべきである.交感神経性の感覚線維が主に椎間板背側部に分布し,炎症時の痛みに関与する.椎間板を支配する小型神経細胞では,皮膚に比較してNGF感受性細胞の比率が高い.炎症モデルでは,椎間板炎症部位でNGF感受性線維の発芽,後根神経節でNGF感受性細胞内の神経ペプチドの増加が惹起され,椎間板性疼痛の慢性化に関与すると考えられる.
  • 大鳥 精司, 高橋 和久, 守屋 秀繁, 高橋 弦, 木下 知明, 中村 伸一郎
    2007 年13 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    Nordinらは腰痛は20世紀を代表する災厄であり,米国では約500億ドル(2001年のGNPの0.5~0.6%)の出費が行われたと報告した.現在では,椎間板再正の基礎的研究をはじめとして,腰痛の病態・成因・治療にかかわる研究の多くが椎間板に向けられている.従来から,腰痛に対する手術として脊椎固定術などが行われているが,最近米国では人工椎間板手術が盛んである.しかし,初期にその成績の有用性が報告されたものの,成績不良例,曖昧な対象群との比較など,その使用に疑問を投げかける意見も少なくない.本稿では,椎間板性腰痛の臨床というテーマで,われわれが行ってきた,椎間板性腰痛の発症機序,画像評価,ブロック療法,手術成績など文献を踏まえつつ記載したい.
  • 山下 敏彦
    2007 年13 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    椎間関節包やその周囲組織には,痛覚伝達に関与する細径神経線維や侵害受容器が豊富に存在する.椎間関節の炎症により,受容器は長時間にわたり興奮し,機械的閾値が低下する.また,椎間関節の炎症は,神経根に波及し,後根神経節内のサイトカインの発現を増加させるとの報告がある.椎間関節に対する機械的有害刺激や,椎間関節の炎症あるいは椎間板変性に伴い発生する化学的有害刺激は,椎間関節および周囲組織に存在する侵害受容器を興奮させ,急性あるいは慢性腰痛の発生に関与しているものと思われる.また,椎間関節の変性や炎症は,神経根性疼痛の発生にも関与していることが推測される.
  • 田口 敏彦
    2007 年13 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    神経脱落症状がなく,局所症状のみを呈する腰痛のなかでは,椎間関節に起因する腰痛はかなりの頻度で存在する.腰椎椎間関節の解剖や生体力学的な特徴により,腰痛の原因になる病態はさまざまである.しかし,腰椎椎間関節性疼痛の臨床像はおおむね共通するものではあるが,決定的な特徴的所見に欠けることも事実である.最終的には椎間関節ブロックや,腰神経後枝内側枝ブロックにより診断される.治療はブロックによる保存的治療が主体になるが,症例によっては電気焼灼術が著効する場合もある.
  • 村上 栄一
    2007 年13 巻1 号 p. 40-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    仙腸関節由来の痛みの腰痛に占める頻度は約10%で,若年者から高齢者までの男女に発症する.MRI,CTで特異的な画像所見が得られず見逃される例が多い.その自覚疼痛部位は仙腸関節裂隙の外縁部を中心とした腰殿部が多く,鼡径部の痛みも特徴的である.多くの例でdermatomeに一致しない下肢の痺れや痛みを伴う.また圧痛が上後腸骨棘およびその周辺,仙結節靱帯,腸骨筋部で多くみられる.患者自身に疼痛の最も強い部位を1本指でささせるone finger testで上後腸骨棘およびその腸骨側の近傍がこの痛みに特異的な指さし部位である.仙腸関節由来の疼痛の診断は自覚疼痛部位,仙腸関節への疼痛誘発テスト(Newton テスト変法, Gaenslen テスト, Patrick テスト)を参考に仙腸関節ブロックの効果で決定する.治療は骨盤ゴムベルトの装着や仙腸関節ブロックの保存療法が効果的であるが,これらの保存療法に抵抗し,日常生活や就労に著しい障害を伴う例には仙腸関節固定術が有効である.
  • 紺野 慎一
    2007 年13 巻1 号 p. 48-51
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    神経根性腰痛は,腸骨稜よりも頭側の傍正中部に比較的限局した片側性腰痛で,神経根障害による下肢痛を合併しているのが特徴である.神経根性腰痛は単一椎間の神経根ブロックで消失することから,その発生や伝達経路は,ブロックされた神経根に集約されていると考えられる.神経根ブロックにより神経根性腰痛の分析や治療効果が期待できる.
特集●腰痛に対する運動器リハビリテーション
  • 浜西 千秋
    2007 年13 巻1 号 p. 52-57
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰部・下肢症状を有する外来患者49例で,用手的筋力測定装置により座位において躯幹の引き起こし筋力を測定したところ,無症状対照群の平均値,男性116N,女性78Nに対し,男性17例で86N,女性32例で64Nと著明に低下していた.外来で座位で躯幹を後傾させる,あるいは後傾させて両足をあげるなどの極めて簡便な「コルセット筋」訓練を指導し,経過を追って測定したところ,女性15例で51Nから78Nへ,男性9例では平均69Nから95Nへとそれぞれ筋力は増加し,これら24例のうち17例で腰痛や神経症状の改善が認められ,また病態や治療に対する不安感が大きく減少していた.内外腹斜筋,腹横筋,多裂筋など腹腔周囲「コルセット筋」の持続運動や筋力強化は慢性腰痛の予防と治療のみならず,腰椎由来の神経症状の治療や “ぎっくり腰” の予防にも有用であり,また筋力の即時数値評価は患者の訓練に対するコンプライアンスを高めるのに効果的であった.
  • 藤野 圭司
    2007 年13 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    平成18年4月の診療報酬改定でリハビリテーションの枠組みが従来の施設規準,人員配置による分類から,疾患・疾病別による分類へと大きく変更された.1人の患者に対し診断から治療まで,それぞれの分野の専門医のもとで責任を持って行うことになったことで,その治療効果の評価が出しやすくなった反面,責任もより重大となった.腰痛は男女ともにわが国では非常に頻度の高い疾患であり,その原因も器質的,病理学的所見のはっきりしたものから,社会的,精神的要因の強いものまでさまざまである.また患者が治療に対して期待することと,医師が考える治療選択は必ずしも一致しない.リハビリテーションの選択はそれぞれの原因,症状,個人特性,さらには地域特性,家族構成までを考慮する必要がある.
  • 渡辺 俊彦
    2007 年13 巻1 号 p. 63-70
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    最近,腰椎周囲筋の機能解析が進み腰椎支持機構や運動機能との関係が論じられ,各腰痛病態に応じた運動療法を行ううえでの拠り所となる科学的根拠が示されつつある.腰椎の支持性は深部筋である多裂筋の特性に基づく腰椎分節間安定化作用と,腹横筋とこれに連結する胸腰筋膜が形成する輪状構造に依存することが論じられ,それゆえ腰椎支持力増強の意味において,多裂筋と腹横筋の同時収縮を企てる深部筋訓練は腰椎不安定性病態に対して原因治療的意味を有する.当院でもこの原理に基づく深部筋訓練にて腰椎不安定病態に対する良好な治療効果を確認しすでに報告した.一般に腰椎運動療法は腰痛の原因病態に直接的に作用する治療的意義を有し,各病態に応じた治療意義を有する運動種目が適用可能である.実施に際しては,医師は日常の臨床において各病態や病期に対する各運動種目の改善効果や限界の確認把握に努める事が大切で,患者のモチベーチョンを高めるためにこれらを事前に説明すべきである.
  • 青田 洋一, 飯塚 晴彦, 上杉 正彰, 大関 信武, 金子 肝一郎, 齋藤 知行
    2007 年13 巻1 号 p. 71-77
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    長時間の着座における腰痛を緩和する目的で持続受動運動(Continuous passive motion; CPM)装置を開発してきた.今回,腰痛のない男子学生(平均21歳)23人を対象として,椅子の座面とLumbar supportに収縮性エアーバッグを設置し,2つのエアーバッグの収縮運動を連動させた連動型CPMの効果を検証した.エアーバッグの各種設置条件での2時間の連続着座直後の腰痛のvisual analog scale(VAS)スコアを比較検討した.固定式cushionやCPMのない状態でのVASは平均8.2±1.6であり,固定式Lumbar support cushionで5.9±1.9,Lumbar support CPMで5.7±2.3と有意に低下した(p<0.005).連動型CPMでは4.3±2.4と,Lumbar support CPMと比較しても有意に改善した(p<0.05)
  • 池田 章子, 篠原 晶子, 瀬良 敬祐, 矢部 嘉浩
    2007 年13 巻1 号 p. 78-83
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰痛患者に対する有効な運動療法を行うことを目的に,初診時の立位での運動時痛別(前屈時痛群・後屈時痛群・前後屈時痛群・運動時痛なし群)に分類し,2カ月間での臨床症状(VAS・JOAのADLスコア)の変化と,マッケンジー法に基づく運動指導の効果について比較検討した.結果は,前後屈時痛群においてVAS・ADLスコアの改善が有意にみられた.運動療法は,VASの変化においては1カ月後から改善がみられるが,ADLの改善には2カ月間でも変化は少なかった.また,運動指導では伸展運動でVAS・ADLスコアの有意な改善がみられた.今回の結果より,腰痛患者の経過観察は2カ月以上が必要であることが示唆された.
  • 青木 孝文, 今野 俊介, 宮本 雅史, 伊藤 博元
    2007 年13 巻1 号 p. 84-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性腰痛患者に対し簡便な運動療法を指導し,その臨床的効果について検討した.方法は座位で体幹を左右に回旋させるのみの極めて簡単な方法である.ただし,一方向に回転させてからその位置で3秒同一姿勢を保持させ,それを反対側にも行って,これを5~10往復,1日3回行うように指導した.運動実施後1カ月の調査では,腰痛がほとんど消失したり,かなり改善して効果の顕著な症例が全体の70%に及んだ.本法は脊柱周囲の筋群に対するストレッチ効果が高いものと推定されるが,今後筋電図学的検討なども加えながら詳細に検討する予定である.
  • 嶋田 誠一郎, 竹野 建一, 小林 茂, 久保田 雅史, 馬場 久敏
    2007 年13 巻1 号 p. 88-95
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕われわれは運動器リハビリテーションを中核におき,生活習慣病や生活機能病のためのリハビリテーション技術およびプログラムをパーソナルコンピュータ(PC),インターネットを用いることにより広域の医療従事者ならびに対象者に双方向的医療情報を提供するシステムの開発を目指してきたが,その概要について報告する.〔背景〕今後,さらなる増加が予想される生活習慣病や生活機能病に対する対策や,新しいリハの枠組みである運動器・脳血管疾患・心大血管疾患・呼吸器リハビリテーションに対応するためには新しい治療戦略が重要となる.〔概要〕利用者は,インターネットを介してPCで容易に本システムを利用でき,個々の身体状態に応じた有益な情報を得ることが可能である.さらに双方向的医療情報により地域医療ネットワークの構築にも貢献できると考える.〔結論〕本システムの効果については今後検証する必要があるが,われわれは本システムが現代医療の中で有益な戦略の1つとなることを期待している.
投稿論文
  • ―Randomized Controlled Trialによる腰背筋血流への影響―
    酒井 義人, 松山 幸弘, 岡本 晃, 石黒 直樹
    2007 年13 巻1 号 p. 96-103
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    筋弛緩薬として知られるeperisone hydrochloride(EMPP,ミオナール®)の効果につき検討した.6カ月以上持続する男性慢性腰痛症患者74名をランダムに3群すなわち,A群:物理療法のみ行った25例,B群:EMPPを4週間投与した24例,C群:McKenzie法を行った25例に分け,2,4週後にJOA score,Faces Pain Scale-Revised (FPS-R),VAS,SF-36を評価した.また腰椎伸展・屈曲における腰背筋酸素化を,近赤外分光器(NIRS)を用い酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)を評価した.2週後ではすべての評価で差を認めず,4週後の評価では,VASでA群とC群間で有意な差を認めた.NIRSでは,2週後で差を認めず,4週後で腰椎伸展時のOxy-HbがB群で有意に増加した.疼痛に関してはMcKenzie法が効果的でVASでは4週という短期間で有意に改善した.EMPP投与では改善はされるものの有意な疼痛改善には至らなかったが,NIRSでの評価では腰椎伸展におけるOxy-Hbの増加が有意にみられた.慢性腰痛患者の保存治療として運動療法とEMPP投与の併用が望ましいと考える.
  • Takahiro Segawa, Masahiko Kanamori, Taketoshi Yasuda, Shigeharu Nogami ...
    2007 年13 巻1 号 p. 104-107
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    Many small nerve fibers and nociceptors that contribute to pain transmission were found in the lumbar facet joint and adjacent tissues. Acute inflammation of the facet joint induced prolonged excitation of the mechanoreceptors and a decrease in the mechanical thresholds of receptors. A recent report revealed that inflammatory reactions spread to nerve roots and increased the expression of TNF-α in the DRG.Mechanical noxious stimulation and chemical factors produced by inflammation of the facet joint and/or degeneration of the intervertebral disc may excite nociceptors in the facet joint and adjacent tissues and generate acute or chronic low back pain. Inflammation and degeneration of the facet joint may also induce radiculopathy.
  • 豊田 耕一郎
    2007 年13 巻1 号 p. 108-112
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対する硬膜外ブロック(EDB)の治療評価を行った.対象は46例,平均年齢は46歳で治療の内訳はEDB単独で治療終了したもの33例をEDB有効群とし,EDB後根ブロック,手術を行った13例を非有効群として,年齢,罹病期間,EDB回数,EDB終了時VAS,初回・終了時SLR,FFDを比較した.評価法はJOA:自覚+ADL(23点),VAS,RDQ偏差得点,SF-36を使用した.EDB有効群と非有効群の比較でEDB終了時VAS,SLRのみ有意差を認めた.JOA,RDQ偏差得点はブロック前有効群と非有効群で有意差を認めた.EDB有効例の治療前後におけるSF36下肢尺度は全体的健康感を除いては有意の改善を示した.
  • 房野 絹可, 久保 千恵子, 尾崎 勝博, 後藤 啓輔, 田島 直也
    2007 年13 巻1 号 p. 113-120
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,弘潤会野崎東病院および老人保健施設(以下当院)における腰痛の実態をアンケート調査により把握し,予防,改善策を考案することである.はじめに,看護師・介護福祉士・看護助手(118名)を対象に調査を行った結果,75%の職員に何らかの腰痛を認めた.さらに詳細に腰痛の原因を評価,分析するため対象を看護師(72名)にしぼり,第2回調査を行った.なお統計学的手法を用いて要因を検討した結果,有意に腰痛有り群(現在保有者,以下P群)の睡眠時間が短かった.今回の調査から,作業現場である環境面への配慮,勤務体制の見直しの必要性が示唆された.また,看・介護従事者自身が状況を把握し,動作指導が受けられる機会が必要であると思われる.
  • 大鳥 精司, 山下 正臣, 井上 玄, 古志 貴和, 山内 かづ代, 伊藤 俊紀, 鈴木 宗貴, 渡辺 朋子, 守屋 秀繁, 高橋 和久
    2007 年13 巻1 号 p. 121-126
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    側方すべりを伴わない椎間板楔状化を伴う腰部脊柱管狭窄症に椎弓切除術群と固定術を併用した群の比較検討を行った.脊柱管狭窄症に対し連続して行った椎弓切除術群(13例)と,連続する固定術(12例)を対象とした.術式の選択は症状や画像評価によらず,初めの連続する13例は椎弓切除術のみ,後の連続する12例は固定術を選択した.症例はレントゲン単純仰臥位正面像にて1椎間の5°以上の椎間板楔状化がある症例で,側方すべり2 mm以内とした.術前,経過観察時の臨床成績,側方すべり(mm,正面像),左右屈にての可動角度(°,正面像)を評価した.結果,全症例の術後JOAスコアは23.2点と改善したが,固定術群の方が有意に改善していた.その理由として,成績不良例は椎弓切除群に3例認められ,側方すべり距離は術前0から術後2 mmに,左右屈にての椎間可動角度は術前平均12°から術後14.6°となっていた.術前,左右屈にての椎間可動角度が10°以上の症例で,成績不良であった.これら3例に関しては再固定術を追加し,良好な成績を得た.椎間板楔状化を伴う脊柱管狭窄症ではX線正面左右屈像において椎間可動角度が10°以上は成績が悪く,病態に,除圧術後の椎間板楔状化の悪化が神経症状を惹起していることが考えられた.
  • 中村 潤一郎, 三ツ木 直人, 齋藤 知行
    2007 年13 巻1 号 p. 127-129
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    ジクロフェナックNa外皮製剤を用いて,本剤の腰部での組織移行性を調査した.腰部脊柱管狭窄症に対する手術患者10例を対象とした.手術前に腰背部の予定手術部位に2枚貼付し,手術にて皮下脂肪,筋,血漿を採取した.検体は採取後-20℃以下に冷凍保存し,検査機関に郵送し測定を依頼した.ジクロフェナックNa濃度は,脂肪で平均14.5 ng/g,筋8.4 ng/g,血漿1.6 ng/gであった.皮膚に薬物を貼付した場合,強力なバリアである皮膚の角質層を通過すると,受動拡散により筋,脂肪に移行する.この経路は血液循環を介さないため,血中濃度を上昇させず,全身的副作用を軽減させうる.腰部に外皮剤を使用して組織移行性を調査した研究としては初めてのものであるが,脂肪,筋ともに組織内濃度は血中濃度より高濃度であることが判明した.
  • 大関 信武, 青田 洋一, 上杉 昌章, 金子 貫一郎, 齋藤 知行, 三原 久範
    2007 年13 巻1 号 p. 130-135
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間孔内狭窄に対する久野木らが考案した椎弓根内進入椎弓根部分切除術(intrapedicular partial pediculectomy; 以下IPPP)の術後成績を調査した.対象はIPPPを施行した35例中,術後1年以上経過観察し得た27例であり,手術時平均年齢は63.5歳,平均経過観察期間は4年2カ月であった.狭窄型は前後型2例,上下型5例,全周型22例で,罹患高位はL3/4が1例,L4/5が7例,L5/S1が19例であった.L5/S1高位の両側例が2例あり,1例は両側とも前後型,1例は両側とも全周型であった.除圧不足による短期成績の不良が2例にあり,この2例を除いた25例の平均JOA score(15点満点)は,術前6.8(-1~10)点,術後3カ月12.6(9~15)点,術後1年12.2(9~15)点,最終経過観察時11.8(5~15)点と長期にわたり良好な成績が維持された.
  • 三瀧 英樹, 伊藤 友一, 三和 真人, 日下部 明
    2007 年13 巻1 号 p. 136-143
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,屈曲弛緩現象(Flexion Relaxation Phenomenon; 以下FRP)が年代および測定部位に関係なく腰痛評価の一手段として使用できるかを明らかにすることである.対象は,健常若年群12名,慢性腰痛若年群6名および健常高齢群7名,慢性腰痛高齢群7名である.測定は,表面筋電計を用い,測定部位はL2およびL5レベルとした.FRP出現頻度は,年代別では慢性腰痛若年群より健常若年群が有意に高かったが,健常高齢群と慢性腰痛高齢群では差がなかった.また,測定部位ではL5よりL2でFRP出現頻度が高い傾向にあった.若年者はFRP出現の有無で客観的な腰痛評価が可能であり測定部位は上位腰椎が良いと考えられる.高齢者ではFRPの評価だけでは正しい評価ができないと思われる.
  • ―九州・沖縄地区アンケート調査の結果―
    佐藤 公昭, 永田 見生, 朴 珍守, 山田 圭, 横須賀 公章, 吉田 龍弘
    2007 年13 巻1 号 p. 144-149
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    2004年7月~2005年8月までの期間,九州・沖縄地区の218施設の病院・診療所の受診者4,750名に腰下肢症状に関するアンケート調査を行い,50歳以上80歳未満の腰部脊柱管狭窄症(LCS)329例と,末梢動脈疾患(PAD)64例の自覚症状について検討した.LCSはPADより痛みやしびれを自覚していることが多く,腰殿部の症状や,姿勢による症状の変化(前屈で軽減,後屈で増強)を認めることが多いが,自覚症状は類似しており,特異的な所見は指摘できなかった.また,LCSの多くは加齢に伴う退行性変化を基盤として発症するが,70歳未満と70歳以上の2群の自覚症状に大きな相違はなかった.両疾患は合併例も存在するため,PADの存在を確認するためには下肢の脈拍を触診し,疑いがあればABIを実施する必要がある.診断にあたっては問診・理学所見・画像および検査所見の総合的な判断を要す.
  • 荒 毅, 飯塚 伯, 高岸 憲二
    2007 年13 巻1 号 p. 150-154
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    脊椎再建・固定術に際し自家腸骨を採取し術後6カ月以上経過した77例を対象として採骨部痛を調査検討した.採取部位や方法にて後方腸骨(後方群),前方腸骨全層骨(全層骨群),前方腸骨半層骨(半層骨群)の3群に分類し,全層骨群と半層骨群で疼痛発生率について統計学的検討を行った.全症例中16例(20.8%)に術後の疼痛を認め,後方群の20例中5例(25%),全層骨群の33例中9例(27%),半層骨群の24例中2例(8%)に術後疼痛を認めた.統計学的有意差は認められなかったが,半層骨群では全層骨群に比し疼痛を訴える症例は少ない傾向であった.
  • 萩原 義信
    2007 年13 巻1 号 p. 155-160
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    間欠跛行を主訴とした患者における慢性動脈閉塞症(P)と腰部脊柱管狭窄症(S)を鑑別するために有用な検査を検討したので報告する.対象は間欠跛行を主訴に受診した136例.ankle brachial pressure index(ABPI)を測定し,グループ分類.その後足背動脈触知,立位負荷試験,姿勢因子を検討.足背動脈触知不可能P群11例,S群23例.sensitivity 61.1%,specifisity 80.5%.立位負荷試験陰性P群7例,S群25例.sensitivity 38.9%,specifisity 78.8%.姿勢因子陰性P群16例,S群49例.sensitivity 88.9%,specifisity 58.5%.今回検討した,PとSを鑑別する方法であるが,sensitivity,specifisityが満足できるほど高値となるものはなく,ABPI測定にかわりうるものはなかった.
  • 橘 俊哉, 森山 徳秀, 山中 一浩, 荒川 晃, 岡田 文明, 草野 芳生, 吉矢 晋一
    2007 年13 巻1 号 p. 161-164
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア手術症例における罹病期間,すなわち発症から手術までの期間と手術成績との関係を検討した.さらに罹病期間と術中に確認した脱出形態についても検討した.対象は過去5年間当科で手術を行い1年以上経過観察できた32例である.下肢痛の罹病期間と術前,術後のJOAスコアは関連がなかった.罹病期間が長い例で有意に後縦靱帯を穿破していないcontainedが多かった.また後縦靱帯を穿破したnoncontainedの方が罹病期間は短い傾向にあり,術前のJOAスコアもnoncontainedの方が有意に低く症状は強かった.術後1年でのJOAスコアは両群とも変わりなく改善した.罹病期間と手術成績は関係がなかったが,noncontainedは重い臨床症状を伴い早期に手術される傾向があり,containedの臨床症状は軽いが,改善しない場合長期の経過で手術が行われる傾向にあった.
  • 林 典雄, 吉田 徹, 見松 健太郎
    2007 年13 巻1 号 p. 165-170
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    馬尾性間欠跛行を主訴に運動療法を実施した23例を対象とし,その効果について検討した.初診時実測した歩行距離に対し,硬膜管面積とわれわれが考案した腰椎後弯可動性テスト(PLF test)において,有意な正の相関を認めた.また22例に腸腰筋と大腿筋膜張筋に拘縮を認めた.われわれが行った,股関節ならびに腰椎の拘縮改善を目的とする運動療法は,21例(91.3%)に有効であり,初診時平均102.1 mの歩行距離が,1カ月後で8例(38.0%),2カ月後で15例(71.4%)で1 km以上の連続歩行が可能となった.その他の6例も,平均640 mの歩行が可能であった.股関節の拘縮の改善は,歩行時の骨盤前傾トルクの軽減ならびに腰椎過前弯の減少に寄与すると考えられた.また,腰椎後弯域の改善による動的pumping effectの促進は,硬膜外静脈叢の還流改善に作用し,歩行改善を得たと考察した.拘縮要素が存在する間欠跛行例では,2カ月程度を目処に運動療法を試みる価値があると考えた.
  • 穴吹 弘毅
    2007 年13 巻1 号 p. 171-174
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    2006年2月から行った経椎弓根的椎体形成術15例17椎体の結果を報告する.罹患高位はT11:1椎体,T12:5椎体,L1:6椎体,L2:3椎体,L3:1椎体,L4:1椎体であった.男性4例,女性11例で平均年齢は70歳(65~90歳)であった.過去の治療の有無にかかわらず腰痛発症後1カ月以上経過した例を対象とした.発症後手術までの期間は平均3.5カ月(1.5~8カ月)であった.全例MRIとレントゲンにて診断した.術後経過観察期間は1~6カ月である.手術時間は平均35分(23~44分)で出血量は少量であった.注入セメント量は平均4.2 cc(約3~7 cc)であった.術中・術後の合併症は全くなかった.経椎弓根的椎体形成術は,術直後からADLの著しい改善が認められ,小侵襲であり,椎体圧迫骨折後偽関節例の難治性腰背部痛の軽減に非常に有用な方法であった.
  • 下村 隆敏, 土井田 稔, 西田 康太郎, 前野 耕一郎
    2007 年13 巻1 号 p. 175-179
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対する低侵襲手術として後方進入内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED)が普及しているが,MEDの持つ有効性を評価する尺度については十分に検討されていない.この研究の目的はその尺度としてVisual Analog Scale (VAS)を使用し,LDHの主症状である腰下肢痛および下肢しびれ感を術後早期より前向きに調査することである.調査対象は2004年7月~2006年7月までにMEDを施行したLDHの20例(男性10例,女性10例)とした.年齢は17~56歳で平均34.1歳であった.腰痛のVAS評価は術前5.8±1.2から術後3日目には2.1±2.0へと有意な改善を認めた.下肢痛のVAS評価は術翌日に7.0±1.5から0.2±0.3へと著明な改善を示した.下肢のしびれ感は術後早期において明らかな改善を認めなかった.以上よりVAS評価はMEDの持つ有効性を評価する尺度として有用であると考えられた.
  • 田中 直, 末綱 太, 望月 光邦, 田中 利弘, 齋藤 啓, 田中 滋之
    2007 年13 巻1 号 p. 180-185
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    馬尾腫瘍に特徴的な症状・所見およびその手術的治療による症状の改善効果について検討した.対象は,馬尾腫瘍18例(男性9例,女性9例).組織型はneurinomaが最も多く,発生高位は,第4~第5腰椎レベルが最も多かった.初発症状の出現から診断までの期間は,平均25.2カ月であった.馬尾腫瘍に特徴的な症状は,根性疼痛が50%にみられたことと疼痛の出現に変動があることであった.67%で疼痛の出現に変動があり,そのうち75%で体動による増強がみられた.内訳は立位・歩行動作が67%,咳・くしゃみが33%であった.特徴的な神経学的所見はなかった.手術成績は良好で,術後に加療を要するほどではないが,しびれの訴えが多かった.馬尾腫瘍の治療においてはしびれの残存が課題である.馬尾腫瘍を早期に診断し,不可逆的な神経症状を残す前に治療することが重要である.
  • 菅野 晴夫, 村上 栄一, 奥野 洋史, 田中 靖久
    2007 年13 巻1 号 p. 186-191
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    疼痛を誘発する場合と誘発しない場合の2通りの方法で腰痛の領域を同定し,その違いを検討した.疼痛領域の同定手順は,誘発しない同定では疼痛を自覚しない立位中間位で,誘発する同定では腰痛を誘発した姿勢で,疼痛領域の輪郭を患者に示指で示させ,その再現性を確認後,輪郭を皮膚に記入した.疼痛を誘発する同定と誘発しない同定で,再現性の有無,領域の面積,領域の正確性,領域の分布および部位数を比較検討した.その結果,誘発する同定の方が高い再現性があり,得られる領域の面積が有意に小さく,より正確な領域を示した.また誘発の有無によって領域の分布が異なる例が多く,誘発する方が領域の部位数が有意に少なく,領域がより限局していた.したがって,疼痛を誘発することで腰痛の領域をより正確に同定できる可能性が高いと考えられる.
  • ―症状と抑うつおよび健康関連QOLの関係―
    松平 浩, 岸本 淳司, 原 慶宏, 森井 太郎, 星 和人, 中村 耕三
    2007 年13 巻1 号 p. 192-196
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症患者253例(男142例,平均年齢71歳)に対し,その症状と抑うつおよび健康関連QOLの関係を探索的に調査した.抑うつ傾向(GDS-15得点6点以上)は32%の患者にみられ,健康関連QOL(SF-36)は身体的健康度だけでなく,精神的健康度の下位尺度点数も低下していた.そして,下肢痛・しびれの程度が強いと歩行能力が低下し,身体的QOLが低下する一方,下肢症状が強く歩行能力が低下すると抑うつ的になり精神的QOLも低下するというパス解析モデルに関し,その適合性が良好であった(適合度指標:GFI=0.945).つまり,腰部脊柱管狭窄症の身体症状は,身体的QOLばかりでなく,抑うつを介して精神的QOLにも影響を及ぼしていることが示唆された.本研究の結果から,腰部脊柱管狭窄症患者に対しては,症状に対する治療とともに抑うつのスクリーニングおよび精神面のケアやサポートも必要であると思われた.
  • 村上 栄一, 菅野 晴夫, 相澤 俊峰, 奥野 洋史, 野口 京子
    2007 年13 巻1 号 p. 197-203
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    仙腸関節ブロックや骨盤ベルトなどの保存療法の効果が持続せず,日常生活や就労に著しい障害のある仙腸関節性疼痛例に対して仙腸関節前方固定術を行った.男6例,女9例の15例で,年齢は平均49歳(30~86歳),罹病期間は平均3.9年(1~7年),術後経過期間は平均2.3年(6カ月~5年)であった.片側前方固定術を14例に,両側固定術(骨盤輪固定術)を1例に施行した.これらの症例について,関節癒合をCTで,また臨床症状をJOAスコア,VASによる疼痛の変化,Roland-Morris disability questionnaire(RDQ)で評価した.関節癒合は15例全例で得られていた.JOAスコアが術前平均5.6点(4~9点)から術後平均18点(7~24点)に,VASが84(70~93)から40(10~75)に,RDQ得点が21.1(17~23)から6.9(1~14)に改善した.仙腸関節前方固定術の成績は良好であり,保存療法に抵抗する症例には有効な治療法と考えられる.
  • Masabumi Miyamoto, Ryu Tsunoda, Yoshikazu Gembun, Shunsuke Konno, Akir ...
    2007 年13 巻1 号 p. 204-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
運動器リハビリテーション委員会報告
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