日本腰痛学会雑誌
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[特別企画]『腰痛研究のエビデンス・評価と臨床的展望』
介護従事者の職業性腰痛の実態調査
─Roland-Morris Disability Questionnaire日本語版を用いて─
伊藤 友一
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キーワード: 介護士, 職業性腰痛, QOL
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2009 年 15 巻 1 号 p. 39-44

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抄録

これまでアンケート調査および腰痛検診にて介護士における腰痛の実態調査を行い,日常生活動作(ADL)に支障をきたすほどの器質的疾患を有する腰痛はなかったこと,一部の介護作業姿勢が腰椎に影響を及ぼしていることを報告した.今回,同じ施設でRoland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)日本語版を用いて腰痛の調査を行った.対象は,男性319人,女性575人,年齢は19歳から60歳であった.回答が得られたのは,892人(99.8%)であった.RDQ 0点が598人(全体の67.0%),1~2点が149人(16.7%),3~4点が70人(7.8%),5点以上が75人(7.3%)であった.質問の項目別にみると,腰痛を和らげるために,何回も姿勢を変えるが162人,腰痛のため家の仕事をするときは力仕事をしないようにしているが103人,ほとんどいつも腰が痛いが94人,腰痛のため,いつもより横になって休むことが多いが74人,腰痛のためいつもよりゆっくり階段を上るが74人,腰痛のため寝返りが打ちにくいが73人,腰痛のため靴下やストッキングをはくとき苦労するが68人と多かった.これに対し,腰痛のため,服を着るのを誰かに手伝ってもらうが2人,腰痛のためあまり食欲がないが4人,腰痛のため1日大半を座って過ごすが5人,腰痛のため,大半の間,ベッド(布団)の中にいるが6人,腰痛のため,いつもより人に対していらいらしたり腹が立ったりするが7人と少なかった.2次検診を希望したのが42人(4.7%)であった.調査の結果,QOLにかなりの支障をきたすほどの腰痛を有する者は少ないことがわかった.

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© 2009 日本腰痛学会
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