2009 年 15 巻 1 号 p. 99-107
腰痛とそれに関連する疾患群は社会的にもいまだ重要な位置を占める.その原因の一つとして,椎間板の変性に由来するものが考えられているが,病態など不明の部分も多い.分子生物学的アプローチによる椎間板再生の研究は,当初増殖因子と呼ばれる蛋白質を用いた報告から始まり,これらをコードする遺伝子を直接細胞内に運び,細胞自身に蛋白を持続的に産生させようという遺伝子治療,さらには幹細胞などを用いた細胞療法への広がりをみせている.遺伝子治療の分野では,ウイルスベクターを用いない方法が応用され,RNA干渉と呼ばれる方法を用いて椎間板の変性を促進する因子を抑制することによって変性過程を遅らせるといった,より安全かつ予防的・長期的な観点からの治療が中心になろうとしている.