抄録
腰痛症に対する装具療法の実態を明らかにすることを目的に,整形外科専門医へのアンケート調査,装具の効果に関する文献調査,装具の性能評価を行った.アンケート調査では回答者のうちおよそ80%が腰部固定帯・腰痛帯が有効であると回答し,腹腔外圧上昇(支持)と運動制限(固定)が疼痛軽減効果の機序であると考えていた.装具の呼称・定義に関する一致した見解は無かった.文献調査の結果,体幹装具の背筋活動に及ぼす効果が実証されていた.しかし,装具の効果に関する科学的根拠の高い論文は少なかった.軟性装具,腰部固定帯,腰サポーター(腰痛帯)の性能評価では,装具装着により30%~50%の可動域制限が生じ,腹腔外圧の上昇が見られたが装具の種類による大きな違いは無かった.軟性装具装着時の歩行効率指数は,他に比べて歩行効率が悪い傾向が見られた.装具の「固定性・運動制限」に固執せず,「歩行効率」という新しい視点からの分類・開発の必要性について言及した.