抄録
臨床家としての腰部硬膜外ブロック2万余例の実践的経験から,ブロックをより安全に,有効にそして迅速に施行するための臨床的工夫と,解剖学的観察を行った.患者の体位は,側臥位から伏臥位に変更した.刺入は患側の傍正中で,ヘルニアの1分節尾側から行うことを原則にしている.ブロックの難易度は黄色靱帯の厚みや,後方骨要素の形態と関係が深いので,晒骨101体において,椎孔の正中後面に針金を張って側面X線撮影を行い,①椎孔後面の形態を角型,丸型,中間型,直線型に分類した.②椎弓の相対的厚さを,椎孔後面と関節突起間部後面との距離で表現し,ここをStenosis zone(S-zone・仮称)とした.S-zoneは+,0,-に分類された.③臨床上,側面X線においてL5のS-zoneが最も見やすいため,L5のS-zoneからL4, L3の椎弓や黄色靱帯の厚さの予測が可能であった.また硬膜外ブロックの診断学的価値について考察した.