日本養豚研究会誌
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子豚の貧血が肝臓の鉄, 銅, 亜鉛, マンガン含有量におよぼす影響
古郡 浩
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1973 年 10 巻 1 号 p. 5-11

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抄録

子豚の貧血と無機物代謝との関係を明らかにする目的で, 新生期あるいは哺育期の貧血にともなう肝臓の鉄, 銅, 亜鉛, マンガン含有量の消長を検討した。
供試豚として, 11腹86頭の子豚を用い, 母乳のみで30日間育成した。3日齢に, 鉄処置区と無処置区に分け, 鉄処置区にデキストラン鉄 1ml (鉄として100mg) を筋肉内注射した。供試豚を出生時, 1, 3, 10, 20, 30日齢に放血死亡させ, 肝臓の鉄, 銅, 亜鉛, マンガンを原子吸収光度法により測定した。
1. 出生時の肝臓の鉄含有量が約6.4mgに対し, 循環血色素量中の鉄含有量 (計算値) は45mgであった。また出生時から30日齢までの全血色素量の増加から計算した, 子豚の1日あたりの鉄の要求量は, およそ7-10mgであった。したがって, 出生時の肝臓の鉄含有量はせいぜい子豚の1日の鉄要求量を満せるにすぎない。
2. 肝臓の鉄含有量は, 出生時と1日齢に高い値を示したが, 腹間ならびに個体間の変動が大きく, 両日の差異は不明確であった。しかし, 3日齢から急激な減少が認められ, さらに, 無処置区は10日齢以降ひきつづき減少した。これを, 同時に実施した血色素量の減少と対応させると, 両者の間に時間的な“ずれ”が認められた。したがって, 新生期の貧血と代謝機能の発達により赤血球の造成が増加し, 肝臓から流血中への鉄の動員が起るものと考えられる。また, 肝臓を貯蔵場所とする無機物の中でも, 鉄が選択的に動員された。
3. 鉄処置区は, 肝臓の鉄含有量が10日齢に急激に増加し, その後, 次第に減少したが, 血色素量はおゝむね一定に保たれていた。
4. 肝臓の銅含有量に対する新生期の貧血の影響は認められなかったが, 10日齢以降, 肝臓の銅濃度は直線的に減少し, とくに, 30日齢には出生時の3分の1に低下した。これは, 日齢が進むにしたがい, 母乳からの銅の供給が子豚の銅要求量を充分に満せなくなったためと考えられる。
5. 肝臓の亜鉛とマンガン含有量に対する本貧血の影響は認められなかった。

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