抄録
当場試作幼豚飼料について昭和39年秋および昭和40年春の2回にわたり, 生後40~60日 (嗜好性調査は生後35~41日) のランドレース, ヨークシャー子豚を使用して嗜好性, 発育, 飼料の利用性および疾病の発生について市販スターターBと比較調査した。
(イ) 嗜好性については, 幼豚飼料がスターターBに比較して著しくすぐれていることが認められた。
(ロ) 発育については調査期間中の増体量において, ランドレース, ヨークシャーともに幼豚飼料区がすぐれていたが, いずれも有意差を認めなかった。
(ハ) 発生した疾病は下痢症のみであったが, 幼豚飼料区はスターターB区に比較して下痢発生頭数が少なく, 罹病期間も短くすぐれた抗下痢性を示した。
(II) 市販スターターAと幼豚飼料の比較
実施の時期および場所は, 昭和40年9月1日より10月24日まで当場種雌豚舎を使用した。
供試飼料は, 市販スターターA (K飼料K. K製) および幼豚飼料 (T飼料K. K配合) を供試した。幼豚飼料の配合は第1表のとおりで, 両飼料の分析値は第9表のとおりである。
供試豚は, 昭和40年秋に分娩されたランドレース子豚35腹279頭, ヨークシャー子豚26腹223頭を使用した。
実施方法は次の通りである。
供試豚はランドレース, ヨークシャー両品種とも分娩順序に従って腹ごとにスターターA給与区と幼豚飼料給与区にわけた。
調査期間は哺乳期間申の生後10日から30日まで, 発育, 飼料摂取量および疾病の発生について調査した。
その他飼料の給与方法は子豚自動給餌器を母豚と同一豚房内に分娩柵をへだてて置き自由給餌とした。体重測定, 飼料摂取量, 疾病発生の調査および治療方法等はIと同様におこなつた。離乳はランドレース生後35日, ヨークシャー生後40日に実施した。
従来, 餌付け用および哺孔期間中の補助飼料として使してきたスターターAと, 当場において生後30~60日に給与するために作製した幼豚飼料の両者をスターターA給与期間 (生後10~30日) に給与して, 発育, 飼料摂取量および下痢の発生について比較調査した。
(イ) 発育において両飼料区間に差が認められなかった。
(ロ) 飼料摂取量は, 幼豚飼料区がやや多かったが有意の差は認められなかった。
(ハ) 下痢発生率は幼豚飼料区が低く有意の差が認められた。
本調査は哺乳期間中におこったので, 飼料の採食量が少なく, 発育は飼料の影響よりむしろ母豚の泌乳量等による影響の方が大きかったと思われる。ただ下痢症の発生防止に関して両飼料区間に差が認められたことは, スターターを補助飼料として使用する場合はそれに種々の添加物を加えることにより疾病予防の手段として用いることが可能なことを示している。
以上の結果より当場作製の幼豚飼料は価格が市販スターターAよりも安く, 下痢症予防に効果があり, 発育, 飼料摂取量において差がないことから幼豚飼料は市販スターターAと十分置き換え得ることが認められた。
なお, 今後もこの幼豚飼料は試験を継続し改良してゆく予定である。