有機合成化学協会誌
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高立体選択的な窒素官能基の導入法の開発
田村 修
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1996 年 54 巻 10 号 p. 836-845

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抄録

アミノ酸, アルカロイド等を例に挙げるまでもなく, 医薬品を含めた生理活性物質の多くはその分子内に窒素原子を有し, その大多数は光学活性体である。したがって, 含窒素骨格の立体選択的構築法の開発と, その生理活性物質合成への応用は有機合成化学に大きなインパクトを与えるばかりでなく医薬品の工業化にもっながる有機合成化学上重要な分野である。さて, 有用な物質の含窒素骨格を効率よく合成するためには新しい反応や合成手法の開発が重要であろう。さらに, 新しい反応を開発するためには原子や反応活性種の特性を生かすことが必要となる。本稿では, 酸素とケイ素の親和性を活かした付加反応, エステル交換を用いるニトロンの分子内環化付加反応, エノラートとクロロニトロソ化合物とのアルドール型反応を用いるN-ヒドロキシアミノ化反応, N-ビニルカルバマートとモノフルオロカルベノイドとのフルオロシクロプロパン化反応を紹介する。また, Pummerer反応を用いるカルバペネム合成の初期段階にも携わってきたが, その後の発展を含めた研究成果が北, 柴田により総説としてまとめられているので参照されたい。

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