2011 年 20 巻 4 号 p. 271-280
土星系の魅力的な衛星は,タイタンやエンセラダスだけではない.カッシーニ探査機の活躍によって得られたさまざまな知見は,その他大勢の小型衛星も,太陽系科学において極めて興味深い対象であることを示している.小型衛星は,その小さな重力場や弱い熱的変成履歴という意味で小惑星と対比できるだけでなく,その特徴的な形態や表層の状態が,ほかの衛星や周囲の環と複雑な相互作用の結果であることから,土星系における衛星や環の形成や進化の鍵を握っていると考えられる.本稿では,こうした多様性に富む土星系小型衛星の姿と推定される内部構造,さらには進化史について概説するとともに,今後の探査で期待される観測について議論する.