ダストは熱放射や散乱光によって輝く.我々はその輝きを頼りに宇宙における固体物質の形成と進化を探る.観測される光に刻まれたダストの大きさ,内部構造,化学組成といった情報を読み解くにはダストの光学特性の理解が必須である.本稿ではダストの光学特性の物理過程をシンプルに整理し,それらの視点から非球形ダストの光学特性の室内実験・数値計算の結果を読み解くことを目指す.
MMXのミッション目的を達成するためには,火星衛星の形状・重力場・回転に関する精密な情報が必要となる.本稿ではこれら測地学的研究について,現状およびMMXにおける観測・解析戦略を概観する.
2023年4月14日,ギアナ宇宙センターから打上げられた木星氷衛星探査機( JU ICE)にドイツ,日本,スイス,スペイン間の国際協力によって開発されたガニメデレーザ高度計(GAnymede Laser Altimeter; GALA)が搭載されています.GALAは氷衛星の定量的な地形データを世界で初めて取得し,氷衛星の表層テクトニクスや内部海の有無などの研究を大きく進展させることが期待されています.極限的な性能が要求されるGALAの開発では,レーザの発生から送受信,距離情報への換算までの全体を通じた「性能モデルシミュレーション」が特に重要です.このシミュレーションは当初はドイツチームを中心として行われていましたが,日本側からの提案により,日本チームでも独立に行うこととなりました.その主な狙いは,①決定的に重要なシミュレーションのダブルチェック,②日本側でのハードウエア開発における活用,③日本側での科学研究の構想・提案等での活用,です.その結果GALAサイエンス要求は木星近傍の放射線環境においても達成できることを確認できました.本稿ではその概要を解説します[1].
小惑星や彗星といった始原小天体物質中の有機物は,星間分子雲から原始惑星系円盤を経て微惑星に至るまでの初期太陽系における化学進化を記録している.本稿で述べる「固体有機物」は,その見た目は地球上のケロジェンに似た,黒色で酸不溶性の不定形巨大分子を指し(図1),始原的な炭素質コンドライト隕石中の全有機炭素含有量の大部分を占める.さらには,色々な分類のコンドライト隕石,惑星間塵,微隕石にさまざまな組成で存在する.すなわち,固体有機物は惑星系形成の主要かつ普遍な材料であり,その化学組成や同位体組成には初期太陽系の歴史が記録されている.「はやぶさ2」初期分析において,私たちは,小惑星リュウグウ試料中の固体有機物の組成を明らかにし,他の地球外物質のそれらと比較することで,初期太陽系におけるリュウグウ有機物の形成過程を決定した.
探査機はやぶさ2によって地球に持ち帰られた小惑星リュウグウの物質は,1年間にわたって分析が行われた.著者らの砂の物質分析班は初期分析の一つとして砂サイズ(直径約100 μm以下)の物質分析を行った.渡された試料量はわずか0.7 mgであり,初期分析チームだけで考えても配付された試料の0.2%に過ぎなかった.そのような微量の試料を使い,いろいろな困難を伴いながらも一定の成果を挙げることができた.本稿では,微小なリターンサンプルを使って砂の物質分析班が,どのように試行錯誤して初期分析を行っていったかについて紹介したい.
本稿では, 我々が2023年度に実施した「月科学コミュニティの活性化」を目的とした活動に関して報告を行う. 前半は, 月科学コミュニティメーリングリスト(Moon-next)の運用状況および情報共有の場の整備状況について報告する. 後半では, 2024年3月にヤマハマリーナ琵琶湖にて開催した第15回月地殻研究会について紹介する.
◇日本惑星科学会第165回運営委員会議事録
◇日本惑星科学会賛助会員名簿
◇日本惑星科学会主催・共催・協賛・後援の研究会情報
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