抄録
木星極域では,中性H_2分子およびH_3^+と呼ばれるイオンの回転振動励起による,波長2〜4μmの近赤外オーロラが生じている.木星オーロラ発光の中でほぼ唯一地上観測が可能な近赤外観測により,電離圏電場やジュール加熱による熱圏へのエネルギー注入や,衝突によるプラズマと中性大気の間の運動量輸送の情報を得ることができる.私たちはこれまでNASAのIRTF/CSHELLや,国立天文台のすばる/IRCS等の望遠鏡に取り付けられた高分散分光器を用いて,木星熱圏のプラズマ大気および中性大気の温度分布とオーロラ発光分布の観測を試みてきた。本論文では地上赤外観測で得られた木星オーロラの知見と今後の展望を紹介する.