日本惑星科学会誌遊星人
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ソーラー電力セイル探査機によるトロヤ群小惑星探査および宇宙赤外線背景放射観測(特集「月惑星探査の来たる10年:第二段階のまとめ」)
中村 良介松浦 周二船瀬 龍矢野 創森 治津田 雄一吉田 二美高遠 徳尚小久保 英一郎
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2012 年 21 巻 3 号 p. 253-259

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抄録

原始太陽系円盤を構成していた初期物質を探るためには,惑星形成時の熱変成の影響を免れた小惑星・彗星・惑星間塵といった小天体の研究が不可欠である.なかでも木星のラグランジュ点付近に存在するトロヤ群小惑星は,小惑星と彗星の間をつなぐ天体であり,原始太陽系円盤の物質分布や微惑星の成長・移動プロセスを調べる上で重要なターゲットである.本稿では,日本が世界に先駆けて実証したソーラー電力セイル技術を用いたトロヤ群小惑星探査ミッションを提案する.この探査は(1)トロヤ群小惑星の詳細な物質組成や熱史・衝突史を調べることで,その起源と進化を明らかにする, (2)惑星間塵の空間分布を測定することで,彗星・小惑星からの生成率や軌道進化に関する理解を深め,その結果を他の惑星系に応用する, (3)惑星間塵の影響の少ない小惑星帯以遠からの宇宙赤外線背景放射観測によって,宇宙初期に形成された第一世代の星を調べる,という科学目標をあわせ持つ,惑星科学・天文学・宇宙工学の融合ミッションである.

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© 2012 日本惑星科学会
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