抄録
固体惑星の形成と進化の体系的な理解に向けて,地球型惑星の小型端成分である月の初期進化を理解することは重要である.しかし,月のマグマオーシャンからの固化過程やその後の大規模な構造変化の有無については未だに良く分かっていない.その解決の方法として,月の海の玄武岩の組成を調べることは非常に有効である.海の玄武岩の組成と噴出年代との関係からマントルの水平・鉛直方向の組成に関する情報が得られる可能性があり,それによって月マントルの進化モデルを制約できると期待される.そこで我々は,月周回衛星「かぐや」搭載のマルチバンドイメージャによる分光データから算出された溶岩流のチタン含有量と,噴出年代との関係を調べた.本論文では,その成果とそこから考えうる月マントルの進化シナリオについて考察する.