抄録
欧州宇宙機関(ESA)は木星探査機JUICEの開発を進めている.JUICE衛星に搭載される予定の科学観測器の一つに非熱的中性粒子観測器PEP/JNA(Plasma Environment Package/Jovian Neutrals Analyzer)がある.木星磁気圏において非熱的中性粒子の成因の一つは,Ganymedeなどの天体表面へのプラズマ粒子の降り込みによって起こる後方散乱及びスパッタリング現象である.生成した非熱的中性粒子は電磁場の影響を受けずに弾道飛行する.このため,希薄な大気しかもたず,氷衛星表面と木星磁気圏プラズマ粒子が直接衝突する環境における非熱的中性粒子観測は,氷衛星表面に投影したプラズマ構造の空間変化の情報をもたらす.これに対しプラズマ直接観測では,詳細なプラズマパラメータが得られるものの,原理的に時間・空間変化の分離が困難である.非熱的中性粒子観測はプラズマ観測に対して相補的な役割を持つものであり,両観測を通して木星/氷衛星磁気圏の理解を進めてゆきたい.