2018 年 27 巻 4 号 p. 286-295
惑星探査データの解析により,固体惑星・衛星の内部構造とその進化に関する研究が進められている.そこでは地球物理学の古典的な「問題」が重要な役割を果たしているが,地球研究の解法がそのまま使えることは少ない.全球的な海が厚い氷に覆われた氷衛星における潮汐,内部熱進化を無視できないほど長い時間スケールで起こる月惑星地形の粘性緩和,時間とともに厚さの変わる対流性の氷地殻を持った氷天体の熱進化.筆者はこれまでこれらの問題に対して定式化の段階まで遡って取り組み,様々な知見を得ることができた.しかし,どのアプローチにも課題は残されている上,ここで取り上げるのは地球物理学における諸問題のほんの一握りにすぎない.今後も古典的な地球物理学的問題は惑星科学における研究課題を提供し続けるであろう.