抄録
「朦朧体における「写生性」と「写意性」を探る」は、日本画の表現の一つである朦朧体に注目し、「写生性」と「写意性」を明らかにするものである。第1節では、朦朧体の意味について主要な辞書類などを用いて現在の朦朧体をめぐる学説などを明らかにする。第2 節では、朦朧体における「写生性」と「写意性」を分析概念として使用するため、本論文における定義を確定する。第3節では、前節で定義した写生性と写意性という分析概念を用いて、朦朧体の表現が取り入れられている代表的作品として菱田春草の「放鶴」と横山大観の「曳舟」を分析する。本論文は、作品への分析を通して日本画において曖昧とされてきた部分を明らかにする試みである。