リアルオプションと戦略
Online ISSN : 2189-6585
ISSN-L : 2189-6585
特集号: リアルオプションと戦略
9 巻, 2_Monographs 号
研究叢書 第1号
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モノグラフ
  • 宮原 孝夫
    2017 年 9 巻 2_Monographs 号 p. 1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    プロジェクトの価値評価の問題は、現代ファイナンス理論あるいは現代のコーポレート・ファイナンス理論において最重要な研究課題であろう。この問題は、不確実性を内包しているキャッシュフローの価値をどのように評価するのが適切かという問題に帰着する。 上の研究課題は、「不確実性を伴っている資産過程の価値を適切に評価する」という数理ファイナンス理論の主要な研究課題と共通性のある研究課題である。したがって、数理ファイナンス理論の研究成果をプロジェクトの価値評価の問題に適用しようと試みることは自然な発想であろう。ただし、数理ファイナンス理論を適用しようとする場合にはその理論の前提条件を十分に注意しなくてはならない。 効率的な市場の存在を前提として議論してよい問題ならば、数理ファイナンスの標準的な理論(Black-Scholes の理論、無裁定理論、など)が適用可能である。しかしながらこの前提条件が満たされていないと考えられる場合が多く存在している。特にプロジェクトの価値評価の場合にはこの前提条件が満たされていないだけでなく、そのプロジェクト独自の特性やプロジェクトの推進母体(企業等)に固有の前提条件を考慮しなければならないのが一般的であろう。 従ってプロジェクトの価値評価の場合には、金融オプションを主たる対象として発展してきた数理ファイナンス理論の標準的な理論(裁定理論)の無原則的な適用は慎むべきであり、市場の効率性や流動性が必ずしも前提とできない場合に柔軟に対応できる理論を構築することが必要である。こうして我々は次のような研究課題に到達する。 [研究課題]:裁定理論(「無裁定条件」を前提とした理論)に依存しない価値評価法(特にプロジェクト価値の評価法)を確立すること。 この課題に対して有効性を期待できる既存の理論としては、効用関数に基づいた理論およびリスク尺度の理論がある。これらの理論を検討する中で、筆者は論文 Miyahara, Y., ``Risk-Sensitive Value Measure Method for Projects Evaluation,'' Journal of Real Options and Strategy, Vol.3, No.2, pp.185-204 (2010), において 《プロジェクト価値の評価のためにもっとも適切とみなせる価値評価法は、リスク鋭感的価値尺度とリアルオプション・アプローチを組み合わせた「リスク鋭感的価値尺度法(Risk-Sensitive Value Measure Method)」である》 という結論を導いた。 本[研究ノート]の目的は、上に揚げた[研究課題]に対する回答としての「リスク鋭感的価値尺度法」の概要説明およびこの評価法の特徴および有効性を明確にすることである。その上でさらに、この評価法の応用可能な分野および適用法について解説する。 本[研究ノート]の構成は以下のとおりである。 第2章においてプロジェクト評価理論の現状と問題点を検討し、我々の研究すべき課題を提起する。それ以下の章でこの課題に対する我々の解答としての評価法「リスク鋭感的価値尺度法」を提示し、その解説を行う。第3章、4章、5章において、その理論的な枠組みを提示し、この評価法の妥当性を論証する。第6章において、この評価法の静学的な問題への適用法を解説する。第7章においては価値尺度の動学化を行い、第8章で動学的リスク鋭感的価値尺度とリアルオプション・アプローチとを組み合わせたプロジェクトの評価法(「リスク鋭感的価値尺度法」)を構築する。それ以下の章(第9-11章)では関連する問題について検討を加える。
表紙・発行機関
  • 2017 年 9 巻 2_Monographs 号 p. Cover_1_ja-Cover_1_jp
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    プロジェクトの価値評価の問題は、現代ファイナンス理論あるいは現代のコーポレート・ファイナンス理論において最重要な研究課題であろう。この問題は、不確実性を内包しているキャッシュフローの価値をどのように評価するのが適切かという問題に帰着する。 上の研究課題は、「不確実性を伴っている資産過程の価値を適切に評価する」という数理ファイナンス理論の主要な研究課題と共通性のある研究課題である。したがって、数理ファイナンス理論の研究成果をプロジェクトの価値評価の問題に適用しようと試みることは自然な発想であろう。ただし、数理ファイナンス理論を適用しようとする場合にはその理論の前提条件を十分に注意しなくてはならない。 効率的な市場の存在を前提として議論してよい問題ならば、数理ファイナンスの標準的な理論(Black-Scholes の理論、無裁定理論、など)が適用可能である。しかしながらこの前提条件が満たされていないと考えられる場合が多く存在している。特にプロジェクトの価値評価の場合にはこの前提条件が満たされていないだけでなく、そのプロジェクト独自の特性やプロジェクトの推進母体(企業等)に固有の前提条件を考慮しなければならないのが一般的であろう。 従ってプロジェクトの価値評価の場合には、金融オプションを主たる対象として発展してきた数理ファイナンス理論の標準的な理論(裁定理論)の無原則的な適用は慎むべきであり、市場の効率性や流動性が必ずしも前提とできない場合に柔軟に対応できる理論を構築することが必要である。こうして我々は次のような研究課題に到達する。
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